高齢化とともに日本の認知症の患者数は増えつづけ、厚生労働省の発表によれば、2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。
誰にとっても身近なものになる一方で、周囲の人は不可解な言動に悩み、介護者による虐待事件につながってしまう場合も少なくありません。
介護者が認知症の人が見ている世界を想像することで、お互いの心理的負担が軽減されると言われています。
今回は川畑智氏書著 『マンガでわかる!認知症の人が見ている世界』より、ケアする人が見ている世界と認知症の人が見ている世界の違いをご紹介します。




「見当識障害」の確認を


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「見当識障害」とは、人・時間・場所がどこかを認識しづらくなることをいい、アルツハイマー型認知症の方は「もの忘れ」に続いて、「見当識障害」も起こしやすいといわれています。


どんな方でも、昼寝をして目覚めたときなどに、今が昼か夜か、また、どこで寝ていたのかとっさに判断がつかなかいと言う経験をされたことがあると思います。
アルツハイマー型認知症の方は記憶が障害されているので、混乱や不安はさらに大きなものになります。

レビー小体型認知症の方は「もの忘れ」よりもむしろ「見当識障害」の方が目立つことがあります。


初期の認知機能の状態が悪い時に、特にこの混乱を起こしがちです。
しかし、状態がよい時ははっきりされていますし、ご本人が見当識が弱っていることを自覚されている場合もあります。






認知症の人が見ている世界


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日頃私たちはあたりまえのように、自分が今どこにいるのか、今日は何年何月何日なのかを認識しています。
スマートフォンには、位置情報を認識する「GPS機能」や時計の機能が備わっていますが、私たちの脳にも同じような機能が備わっているからです。


しかし、認知症になると、その機能が低下して時に自分がどこにいるのかわからなくなってしまうのです。
それは、今の実年齢を忘れて、自分を若いと思い込み、昔の世界に戻っていることが考えられます。

現在の自分が若いと勘違いして、周囲の人や状況をその頃にあわせて解釈しようとすることがあります。

総じて、現役でバリバリ仕事をしていた頃や、子育てに追われていた頃など、ご本人が一番輝いていた時代に戻ることが多いようです。


昔のことを今のように話されますので、「昔の思い出のなかに生きている」ようにも見えます。


ご本人は、子どもはまだ小学生だと思っているため、中年になった息子や娘が顔を出しても誰かわからなかったり、夫や妻と間違えることもおこりがちです。
朝・昼・晩の区別がつかなくなって、夜中に出かけようとすることもあります。
季節感にも乏しくなり、季節にあった服装が自分では選べなくなります。
「ここは自分の家ではない」と言い、昔住んでいた家や実家に帰ろうとすることもあります。


わたしの母の場合、子育てをしていた時期よりもさらに昔、祖父母と同居していた独身の頃に世界が戻っていたので、ここは私の家ではない、実家に帰らなくてはならないと繰り返し言っていました。
しかも夜遅く、思い立ったときに出ていこうとするので、引き留めるために「もう電車がないから」「明日車で送るから」等々、納得してもらうのが大変だったことを思い出します。






いつ、誰、どこ が分からなくなる怖さ

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男性の場合は、働き盛りだった30~40代に戻るケースが多いようですが、これは、自分の認知症による不安を解消するために、自分のことをはっきり覚えている時代や、体力的に元気で精神的にも充実していた古きよき時期に戻るのではないかと推測されています。


例えば、ご本人がバス通勤していた現役時代に戻ってしまっている場合、デイサービスの送迎バスを通勤のバスだと信じてしまいます。
実際には介護ドライバーがバスの乗り降りを介助しようとしているのですが、ご本人の世界では、いきなり通勤バスの運転手に話しかけられた状態なのです。
ご本人には、通勤バスの運転手に「さあ、バスから降りましょうね」と手を差し出されているように見えるので、違和感と不安を感じて混乱してしまうのです。


こうしたケースでは、優しく「ここはデイサービスですよ」と説明すれば正しく認識してくれる可能性もありますが、大切なのは、安心できるように笑顔で声をかけ、ご本人の状態をよく見て話を聞くことです。

そうすると、ご本人が「どこにいるのか」「いつの時代にいるのか」を想像することができるでしょう。


今ご本人がいる世界に寄り添い、認知症の世界と現実の世界のギャップができるだけ少なくなるように接していくことが大切です。






まとめ

みなさんも、時々目が覚めたときに自分がどこにいるのかがわからなくなり、混乱することはあると思いますが、しばらくすると自分がどこにいるのかはっきりと認識できるはずです。
しかし認知症の症状としてみられる、自分がどこにいるのかわからなくなってしまう現象は、自分を実年齢よりも若いと思い込み、その時代へタイムスリップしていることが原因なので、なかなか現実を認識することができないのです。
母も認知症が進むと不安から口数が少なくなり、表情も乏しくなりましたが、頭の中で元気で充実していた古きよき時期に戻っているときに、その時代の事を興味深く聞いたり話したりすると明るい表情が戻ってくることがありました。
高齢の認知症患者たちの「ここはどこ?」に対するベストな受け答えは、ご本人の話によく耳を傾けて、今どの時代に戻っているのかを推測しながら、現実はこうなんですよと修正しつつ寄り添うことなのだと思います。

『マンガでわかる!認知症の人が見ている世界 』

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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