また、高齢者では若い頃にくらべて眠りが浅くなり、早寝早起きになるようです。
仮に好きなだけ寝てもいいと言われたとしても、「眠れない」「寝てるのに疲れがとれない」という睡眠に関する問題は起きてくるものです。
睡眠不足が蓄積されて心身の不調を来してしまう状態のことを睡眠負債といいますが、反対の睡眠貯蓄はできるものなのでしょうか。
今回は睡眠についての素朴な疑問を深堀してみたいと思います。
なぜ人間が毎日眠るのかと言うと、睡眠中に心と体の修復や記憶の整理をするためです。
例えば、眠っている間に人間の身体は成長ホルモンを分泌し疲れをとり、傷んだ部分を修復します。
また、日中に見たことや学習したことを睡眠中に脳に定着させたり、整理したりするのです。
そのため、睡眠時間が不足すると修復や記憶などの整理が十分できなくなり、疲れが残ったり、記憶が曖昧になったり、学習効果が低くなったりします。
睡眠は必要ですが、だからといって、本来なら毎日行うべき心身の修理や整理を、前もってまとめて済ませたり、こなしきれなかったものを、後でまとめて、すべて完璧に終わらせるわけではありません。
なぜなら、人間には時計遺伝子の働きによって体内では24時間の概日リズムが刻まれており、長時間眠れるわけではないからです。
アメリカで1964年のクリスマス休暇に17歳の男子高校生が断眠記録を達成しました。
時間は264時間12分。
起きているようにみえて意識は寝ていた時間もあったかもしれませんが、いずれにせよ、この男子高校生は11日間起きたままだったというわけです。
さらに驚くことには、この男子高校生は断眠記録のチャレンジ終了後、14時間40分寝ただけで体の状態が回復したそうです。
この話からも、人間は体内に長時間寝ることのできないシステムを持っており、睡眠の貯蓄や一括返済も現実的に難しいと考えられています。
とはいえ、1日の睡眠時間を短期間延ばすことは可能なようです。
ある実験で平均7.5時間の睡眠時間の人10名を1日14時間ベッドに入るようにしたところ、全員が平均13時間前後寝たそうです。
しかし、実験期間中にこの10人は睡眠時間は徐々に短くなり、3週間後には8.5時間になったのだとか。 おそらくこの10人に必要な睡眠時間が8.5時間だったのだと思われます。
さほど気にしていなかった睡眠不足でも、長く続けば借金のように大きな負担となります。
慢性的な睡眠不足は日中の眠気や意欲低下・記憶力減退など精神機能の低下を引き起こすだけではなく、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすことが知られています。
週末になると日頃の睡眠負債を返済するために「寝溜め」をする人も多いでしょうが、実際にはあくまで不足している分を補填しているだけで、単に一時的に睡眠時間を増やしただけでは睡眠負債を返済するのは極めて難しいのです。
理想の睡眠時間を週末だけ確保して、平日の寝不足を解消しているつもりになるのではなく、睡眠は貯蓄や預金ができないものとして、毎日少しずつ返済、調整していくことを心がけましょう。
まとめ
睡眠不足だと感じている人は、毎日少しずつ睡眠時間を増やしていくなどして、調整をする必要があります。
とにかく、一気に睡眠返済をしようとせずに、時間をかけてコツコツと返済していくのが理想的だということははっきりしているので、自分に必要な睡眠時間を、毎日とり続けることが大切です。
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