しかし、職員が利用者と親しくなるにつれ、言葉づかいがフランクになることもあります。
それ自体が一概に悪いこととは言えませんが、問題なのは「私がお世話をしてやっているんだ」という思い込みが生まれ、「タメ口」はもちろん「上から目線」の職員があらわれることです。
施設を利用する高齢者は介護職員の言葉で気分を害すことはあるのか、そして「良い施設の選び方」とは。
今回は、介護施設職員の言葉づかいに注目してみました。
将来、ご家族を介護するうえで参考になれば幸いです。
都内の介護サービス事業者連絡会が、介護職員を対象に高齢者虐待防止法に関する研修会を行い、参加者むけのアンケートを実施した内容です。
「気を抜くと友達に話しかけるような言葉になってしまう」
「冗談を言おうとして軽率な言葉を出してしまい、利用者を怒らせてしまったことはある」
「同じことを何度も繰り返し聞いてくる利用者に『たった今お話ししたでしょう?』と言ってしまったことがある」
など、親しさからか、利用者を軽んじた言葉や態度が出てしまったケースがいくつもあるようです。
一方、その介護サービス事業者連絡会は、介護職員だけではなく、利用者側にもアンケート調査を行っています。
「介護職員に言われて嫌な気持ちになった言葉がありますか?」という質問に対しての回答の中には、介護職員の人員不足や忙しさから来ているであろうと推測できるものもありますが、中にはそもそも介護職員としての資質に問題があったのではないかと思える発言もありました。
「介護職員に言われて嫌な気持ちになった言葉は?」というアンケートに対する利用者の回答は以下のとおりです。
・そうじゃないっす(敬語ではない)
・うんち出た?
・何度トイレに行くの?
・子ども扱いや幼児言葉で声をかける
・きつい口調、命令口調で強く言う
・名前の呼び捨て
・ダメでしょ
・座っててください
・早くして
・ちょっと待って下さい
・さっき言ったばかりでしょ! などの否定的な言葉
・顔を見ずに「はいはい」と軽い返事をされる
*以上、江戸川区地域密着型サービス事業者連絡会調べ
呼び捨て、命令口調、子ども扱い…など、親しさから発したとは思えない言葉も多くありますね。
回答を読んで、あなたはどのように感じましたか?
大切な家族を預ける側としては、介護職員に正しい言葉づかいで接してほしいと感じたのではないでしょうか。
また、一口で正しい言葉づかいと言っても、その正解が何なのかは難しい問題でもあります。
基本的に敬語で接するのがルールとはいえ、親しくなると時にはフランクな言葉を使っていいシーンもあるのではないかと思います。
それは介護施設は入所者にとって「日常生活の場」であり、介護職員は共に生活を送るパートナーだからです。
日常の会話で高級ホテルのような敬語が使われていることで、なかなか施設を「自分の家」と認識しづらい、できないということもあります。
例えば認知症の方などは、ご家族と相談のうえではありますが、家庭的な感覚で過ごしてもらう方が落ち着くケースもありますので、「敬語以外は全て不適切」と決めつけることも実際には難しいのです。
では、良い施設を選ぶにはどうしたらいいのでしょうか?
施設内で職員が使う言葉ひとつとっても賛否が分かれるところではありますが、良い施設を選ぶのに一番かんたんで、分かりやすいと思う判断基準は、「利用者の明るさ・表情」を見ることです。
施設入所前の訪問見学では、介護職員はとても愛想良く対応をしてくれるかもしれませんが、日常的に介護職員と接し、ケアを受けている利用者の表情はごまかせません。
施設内の設備などを見学しながら、利用者の表情や顔色を観察することをおすすめします。
例えば、怯えた様子がある、人目を避けたがる、「怖い、怒られる」といった発言がある場合は、決してその施設を選ぶべきではありません。
良い施設にいる利用者は、表情も穏やかで明るく落ち着いて過ごしているものです。
また介護職員の言葉づかいは、時折フランクな言葉を使っていてもいいのですが、聞いていて不快ではないレベル、そしてベースにはきちんと敬語であることをチェックしましょう。
介護の現場においても、利用者が気持ちよく過ごせるように配慮が行き届いている施設を選びたいものです。
まとめ
言葉づかいは単に職員と利用者のコミュニケーションというだけでなく、人間が人間の尊厳を守りながら、不快にさせないための配慮だといえます。
そのような施設は、利用者が明るく、表情も豊かです。
あなたが施設を選ぶ際のポイントとして、ぜひ注目していただきたいものです。
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