嚥下とは、食べ物を飲み込み、口から胃へと運ぶ一連の動作のことで、これがスムーズに行われるために、多くの器官の筋肉や神経などが連携して働いているのです。
正しい嚥下に失敗すると、食べ物や唾液が食道ではなく空気の通り道である気道に入り込んで誤嚥してしまいます。
その予防として有効なのが、食べ物にとろみをつけることです。
特に介護食ではとろみをつけることが必要になってきます。
今回は、介護食に必要なとろみのつけ方の基本から便利なとろみ調整食品、誤嚥を防ぐとろみの濃度までをご紹介します。
嚥下機能が低下したり、嚥下が困難な状態になると、日常場面でさまざまな変化がみられます。
例えば以下のような症状はありませんか。
・食事中や夜間によくむせたり、咳き込んだりする。
・飲み込んだ後に声が変わる、ガラガラ声になる
・よく痰がからむ
・喉や胸に何かつかえているような感じがある
・食後に胸やけがある
・食事に時間がかかるようになった。疲れてしまい残すようになった
・好みが変わった。水分やパサパサした物を避けるようになった
・食べこぼしが多くなった
・やせてきた
など。
これらの変化など、気になる様子があれば、ぜひ専門医に相談しましょう。
噛む力が弱り、飲み込む力が落ちてくると、食べ物がいきなり喉に入ったときにむせてしまったり、誤って気管に入ってしまったりして、いわゆる誤嚥の原因になります。
これを防止するためには、口に入れるものにとろみをつけることが必要です。
その目的は大きく2つあります。
1.液状の食材、飲み物の、喉へ流れ込むスピードを遅くすること
加齢や、病気が原因で、食べ物を飲み込むタイミングが合わなくなり、むせてしまうので、とろみをつけて口の中での水分や、液状の食べ物の動きを遅くさせます。
2.粘度をつけて、食べ物をまとめやすく、飲み込みやすくすること。
食べ物を咀嚼(そしゃく)した後、飲み込むためには舌や唾液で食べ物をまとめるのですが、唾液分泌が少なかったり、舌の機能が低下してきたりすると、食べ物をうまくまとめることができなくなります。
そこで、まとめやすく、飲み込みしやすくして上手に食べてもらうためにとろみ剤等で粘度をつけて調整します。
また、食べ物だけではなく、お茶や水などの飲み物にもとろみは必要です。
液体は固形物よりも喉に流れ込むスピードがさらに速いため、液体でも誤嚥の原因になります。
その人の嚥下機能の状態によって適正な粘度があるので、医師や管理栄養士さんに確認してください。
とろみをつけるには溶き片栗粉を入れて加熱をする方法のほか、小麦粉で練り上げたり、たんぱく質の粘性を利用したり、市販のとろみ調整食品を使う方法などさまざまです。
最近では、溶かすだけで加熱の必要がなく、簡単に粘度の調整ができて、調理の手間がかからない、とろみ調整剤を使用する方が増えています。
『トローミファイバー』(宮源) の場合、体にやさしい水溶性食物繊維が原料となっています。
無味無臭で食べ物や飲み物の味を変えることもありません。
デンプンを主原料とする片栗粉などでつけたとろみは、冷めるととろみが弱くなり、時間がたつと分離してしまったり、唾液などによりデンプンが分解されて、ゆるみやすくなったりしますが、とろみ調整食品はしっかり溶かせば形状が安定するため、素材を選ばずとろみをつけやすいというメリットがあります。
とろみ濃度を実際に体感する場合は、とろみのついたお茶を口に含み、そのまま上を向いて口の中での動きを確認したり、他の人から介助してもらいながら、自分の摂取のタイミングではなく、介助されるタイミングで摂取してみてください。
誤飲やむせないよう十分注意しながら、口を大きく開いて、スプーンでとろみのついた飲料を少し高い位置から流し入れてみます。
こうすることで、口の中でどのくらいのスピードで喉まで運ばれるのかを体感しやすくなります。
とろみは、薄すぎると、のどまでサッと流れてむせてしまう一方、濃すぎると、窒息の原因にとなる場合もあります。
本人にとって適正な粘度を、かかりつけの医師等に必ず聞き、安全に食べて飲めるように粘度の調整してくださいね。
また、とろみが濃いと口の中に張り付いて残ってしまうので、食後の口腔ケアが大変になることもあります。
食べる、飲む人にとって、適正なとろみを調整し、おいしく感じられて無理なく飲み込めるとろみの濃度を、守って継続することが大切です。
まとめ
食べ物や飲み物に適切なとろみを加えて、誤嚥を防止しながら好きなものを味わえる楽しい食事時間になることを祈っています。