しかし高年齢雇用安定法の改正により、企業には希望者全員に65歳までの雇用が義務付けられ、2020年3月にはさらに改正されて、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務になっています。
現在ではほとんどの方が、65歳の誕生日になるのを待って会社を辞めることにしているようですが、実はその退職の仕方はNGのようです。
今回は青春出版社発行の『60歳からのお金と健康の裏ワザ』から、60歳からの「お金」と「健康」に関する裏ワザをご紹介したいと思います。
年を重ねてから健康を保つには、下半身の筋力を鍛えておくことが大切です。
そのためにウォーキングやジョギングなどを習慣にして、足腰を鍛えておく必要があります。
運動の一環として、エレベーターやエスカレーターが近くにあっても乗らないで、わざわざ階段を使うことを心がけている人もいることでしょう。
その場合、階段は「上る」ことで足腰を鍛えると考えがちです。
もちろんそれも悪くはありませんが、もっとトレーニングになる方法は階段を「下りる」ことです。
階段は「上る」ことより「下りる」ほうが筋力はアップするのです。
「速筋」「遅筋」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
どちらも筋肉のタイプのことで、速筋は短距離を走ったり、重いものを一気に持ち上げるなど、瞬発力を発揮するときに使われる筋肉です。
これに対して、遅筋は長距離走や長く歩くときなど、持続的な運動をするときに使われる筋肉です。
階段の上り下りに関しては、速筋は下りる際に足をストップさせるときに使われ、遅筋は一歩一歩上っていくときに必要になります。
高齢者が階段で転んでけがをするのは、ほとんどの場合が下りているときです。
これは速筋が衰えて、スムーズに下りられなくなったことが原因です。
人間の筋肉は30代を境に衰えはじめ、特に速筋の筋肉量が先に減っていきます。
一方、遅筋の衰えるスピードは速筋と比べてずっと遅く、年齢を重ねるとともに筋肉量が激減するようなことはありません。
速筋については、何もしないと衰えていくばかりですが、トレーニングをすることで筋肉が大きくなりやすいという特徴があります。
遅筋の場合は筋肉量が減りにくい反面、鍛えてもなかなか筋肉は大きくなりません。
こうした筋肉のタイプの特性から、年を重ねると日ごろから鍛えるべきなのは速筋ということがわかります。
階段は、速筋に負荷がかかる下りる時にこそ意識することが大切です。
頭を切り替えて、速筋強化につながる階段トレーニングをしましょう。
最近は60歳を過ぎても、継続雇用などで働く人が増えています。
こういった働き方を選んだ場合、退職するのは65歳であることが多く、ほとんどの人は、65歳の誕生日になるのを待って会社を辞めることを考えると思いますが、その退職の仕方は実はすすめられません。
まさかと思うかもしれませんが、それをすることで何10万円も損をしてしまうことになってしまいます。
65歳で定年退職した場合、ハローワークに行っても、失業保険の基本手当をもらうことはできません。
基本手当の支給の対象となるのは64歳までだからです。
65歳になると、「高年齢求職者給付金」という制度に変わってしまうのです。
「高年齢求職者給付金」は基本手当とはまったくの別物で、支給されるのは1回きりです。
上限の金額でもらえて、最大50日分という設定で計算しても、30万円余りにしかなりません。
一方、基本手当はどれくらい支給されるのでしょうか。
雇用保険に20年以上加入し、基本手当日額が7000円の場合、7000円×150日=105万円までふくらみ、高年齢求職者給付金と比べると差額はおよそ70万円にもなります。
退職日がたった1カ月違うだけで、もらえるお金にはこれほどの違いが出てしまいます。
どちらが得かを考えれば、言うまでもなく64歳での退職を選ぶのではありませんか。
勤める会社の就業規則の定年規定が「65歳に達するときまで」となっていれば、その1カ月前、64歳11カ月で退職するのがおすすめです。
なぜなら、雇用保険法では誕生日の前日に満年齢に達すると定められており、これは「年齢計算に関する法律」によって、年齢の考え方が、「初日算入」(年齢は出生の日から起算する)ことからです。
例えば7月1日が誕生日の場合、その前日の6月30日で辞めても、制度上では65歳で退職することになるので注意が必要です。
また、会社によっては、65歳が定年退職の日だと正式に定められている場合、定年前の64歳11カ月で辞めたら、退職金を満額もらえないこともあります。
勤める会社でそういった問題はないか、事前に人事部などに確認しておくのがいいでしょう。
年を取って収入がなくなったら、国から支給される年金が頼りです。
では、年金は何歳から受け取ることができるのか、知っていますか。
「65歳から」と思った人が少なくないかもしれません。
確かに65歳から受け取れますし、実際にそうする人が多いのも事実です。
しかし実は年金は、60歳から75歳までの間なら、いつ受け取りはじめてもかまわないのです。
年金を65歳からではなく、66歳以降に受け取ることを「繰り下げ受給」と言い、65歳より前に受け取りを開始することを「繰り上げ受給」と言います。
いずれも年金事務所への申請が必要で、いったんスタートしたらその後はもらい続けることになります。
実際には年金受給者の多数が65歳から受け取りはじめる一方で、約15%の人が繰り上げ受給を行っています。
60歳以降に仕事がなくなったり、働いて得た収入だけでは暮らせない人が少なくないのかもしれませんし、60代前半に受給して、元気なうち楽しいことに使おうという考え方をする人もいそうです。
繰り上げ受給を申請して、早めに年金をもらうと得するように思えますが、65歳から支給される場合と同じ金額はもらえません。
同額を早くもらうようにするのですから、それは当然ですね。
繰り上げ受給をすると、もらえる年金はひと月あたり0.4%の減額になります。
何だ、大した差はないじゃないか、などと思ってはいけません。
65歳から1年早めるだけで、4.8%の減額になってしまいます。
60歳からもらいはじめると、5年間繰り上げることになるので、通常より24%も低い金額しかもらえなくなるのです。
これに対して、66歳以降に繰り下げ受給をすると、繰り上げ受給とは逆に、年金がひと月あたり0.7%の増額になります。
1年繰り下げたら8.4%増額されるので、70 歳まで我慢したら支給額が42%も増えるのです。
さらに上限である75歳まで受け取らないでいると84%も多くなります。
繰り上げ受給も繰り下げ受給も、日本人の平均寿命とリンクし、生涯で受給する金額はほぼ同じになるように計算されています。
このため、どちらを選んでも損得はないという考え方もできますが、本当にそうでしょうか。
70歳まで繰り下げ、65歳にスタートの損益分岐点は、81歳11カ月。
これ以降も、受給するたびに42%分を上乗せした金額をもらうことができます。
2020年の日本人の平均寿命から見ると、男性が81.64歳で女性が87.74歳なので、男性に関してはまあまあいい線をいっているでしょう。
しかし、重要なのは0歳からではなく60歳から何年生きるかです。
2020年の60歳からの平均余命を見ると、男性が24.21年、女性が29.46年もあります。
70歳まで繰り下げて平均余命をまっとうした場合、女性はもちろん、男性でも2年以上の間、42%増額された年金を受け取れることになります。
しかも、日本人の寿命はまだまだ年々伸びているのです。
受取年齢の上限である75歳まで繰り下げるとさらに増額されますが、この場合、70代になっても相応の収入が必要になってくるので、多くの人にとっては現実的ではないと考えるべきでしょう。
繰り下げ受給をする割合は全体の1.5%と少数派ですが、とても賢い人たちだとも言えます。
70歳あたりまで年金受給を繰り下げる余裕を作ることを目標に、60代を頑張ってみるのもいいかもしれません。
まとめ
還暦以降も、20年、30年と人生は続いていくのが今の現実です。
その分、とにかく気になるのは「お金」と「健康」ですね。
お金の面では、いかに収入を減らさず、支出を減らしていくのかがカギになり、健康に関しては、病気にならず若々しさを保つのが大きなテーマとなります。
老後の知識はあって困ることはないでしょう。
今回の記事を頭の隅に留めていただき、少しでもお得な老後を迎えたいものです。
『60歳からのお金と健康の裏ワザ』