面接で失敗する人は共通して、相手が聞いていようがいまいがお構いなしに、一生懸命自分の話をします。
無論面接はあなたの話をする場ではありますが、面接相手があなたの「何を」聞きたいと思っているのかを認識せず、一方的に話をするのがこのタイプの特徴です。
面接官が明らかに「もうその話はいいよ」という表情をしていても、当の本人は緊張で舞い上がっているのか、それに気づくどころか、輪を掛けて切れ目なく話し続ける人も少なからずいて、この時点で既に負けは確定です。
では、うまくいくコツとは何でしょう。
今回は、転職コンサルタントの井上和幸氏著書『30代最後の転職を成功させる方法』より、面接時の自己アピールについてご紹介したいと思います。
「自己アピールをしっかりしなければ」と必死に話をするこの手の人に企業が疑念を持つのは、普段から自分が他者からどう思われているかということを感じ取ることができない人だと見ているからです。
こういった人が仮にその企業に採用されて働くことになっても、クライエントやベンダーといった対外的な関係や、社内の部下や上司、同僚といった対内的な関係のなかで望ましいコミュニケーションを行うことは難しく、結果として仕事の質に期待できないだろうと判断されます。
優秀な人は、面接相手が求める質問にだけ回答します。
相手がどう感じているかを、常に表情から探り、場合によっては「このお話でよろしかったでしょうか?」などと、しっかり確認を入れます。
自己プレゼンテーションを求められている場面であっても、相手とのキャッチボールは欠かさないのです。
反対に、面接で嫌われてしまう人の共通項に、「話が盛り上がらない」「会話していてつまらない」ことがあります。
面接官が何を聞いても、「はい……」「いいえ……」「そうですね……」としか返さないので会話が続かず、こちらから何かを聞かないと沈黙のまま、という人です。
面接官には、「あーぁ、この人は入社しても実際、いつもこんな感じなんだろうな」と思われたら、面接結果は明らかですね。
面接を受ける立場であっても、面接相手に「良い質問」ができるのが、どの企業からも「ぜひわが社に来てほしい」と言われるコミュニケーションに優れた人に写ります。
「私は~なのですが、Aさん(面接官)はどう思われますでしょうか?」「現職ではこうなのですが、御社ではどのように取り組んでいらっしゃいますか?」など、自分が答えながら、相手にも自然と質問を投げかけていく。
一方通行の自己アピールではなく、会話・対話になるように持っていく。
そこから相手の情報を収集することもでき、それを踏まえて次に自分が話すことの内容の取捨選択や軌道修正もできます。
本来、優秀な人材は無意識的に自然とこうしたコミュニケーションをしています。
「質問上手」で「聞き上手」。
極論をいえば、面接官と応募者の立場が逆転するような聞き上手こそが、採用される条件の一つとなるのです。
また、面接で面接官が話すことに「全面同意的な相づち」ばかり打つ人がいます。
「はい、おっしゃる通りだと思います」「ほんと、その通りですね!」といった具合です。
もちろん、相手の話を聞き、それに前向きな反応をすること、共感・合意することは大切なことですが、ミドルやリーダー層の場合、これが行きすぎると逆効果になります。
留意してほしいのは「合意だけしている人はいらない」ということです。
特に社長や役員クラスの面接官だと、あまりに過剰な迎合と映ると、内心では「本心か?」と勘ぐります。
面接側が知りたいのは、それだけ共感・合意してくれるなら、あなたが会社に参画したら、具体的に何をしてくれるのかということです。
そして、その有無こそが、採用したいと思うか思わないかの分かれ目なのです。
要は、その応募先企業があなたを採用する意味は何なのかというあなたの付加価値が試されているのです。
単なる相槌ではなく、自分の意見やアイデアを乗せて返答、会話しているでしょうか。
面接側が伝えている現在の会社の考えや施策は、既に現体制で実現できていることで、若手や中堅社員の採用であれば、それをしっかりやってくれるだけの人でもOKかもしれません。
しかし、ミドル、リーダー層の人たちに求めるのは、プラスアルファでわが社に持ち込んでくれる付加価値がある人なのかどうかです。
面接の際、自分としてはとても盛り上がったので、きっと合格だと思っていたら、NGの連絡が来たという経験のある人は、ぜひ、この部分がどうだったかを確認してみてください。
おそらく相手先企業からすると、「良い人だとは感じるが、当社に参画してもたらしてくれる付加価値が見えない」と感じられたはずです。
次回以降、そのようなことのないよう、心がけてください。
応募企業とあなたには、何らかの交わる点があるはずです。
そうでなければ書類審査で落とされ、面接まで進むことはありません。
例えば、募集しているポジションとあなた自身の経験、専門性、知見、人脈などです。
だから、まずは応募職務についての共通項から話を展開し、自分の得意技へと自然に話が進めば、あなたのものです。
ところが時折、面接において「私はあなたがたとは違う世界で生きてきたのだ」ということを滔々と自慢し、ご高説を垂れるような話し方をする人がいます。
大手企業の人が格下の企業の面接を受けるときや、発注側やコンサルティングする側の企業に所属していた人が、受け手側の企業に応募する際にこういった事例が起こりやすいです。
自分を上に見せたいという意識なのでしょうか、面接の場で面接者にマウントを取りたいのでしょうか、どちらにせよ、嫌われる人は、自分と相手を別の世界にいる者として話すのです。
「お前たちとは違うんだ、一緒にするな」と思っているような人を、どの企業が快く仲間に入れようとするでしょうか。
そんなつもりはなくても、無意識のうちに言葉の端々ににじみ出ていることがあるかもしれないので、十分に注意が必要です。
面接で自分にとってのメリットしか話せない人も、採用側からすれば不要と判断されるでしょう。
「これをやらせてくれなかったので、前職を辞めました」「部長を希望します」「年収~万円以上を希望します」「キャリアアップが目的です」などなど。
転職で得られる役割や機会、諸条件は非常に重要なことなので、自分の要求を持ってはいけないということではありませんが、頭の中に自分の要求“しか”ない人が採用されることは難しいでしょう。
いつも好かれる人は、どのような立場の違いや差があったとしても、相手との間に共感の橋を架ける人です。
こうした人は、面接のような初見の場で、まず何よりもお互いの「共通の話題」を見つけ出して会話しようと試みます。
何か具体的な接点はないか、面接の冒頭や前半で話をしながら探るのです。
過去に所属した部署で取引先だった人が応募先企業に転職していた、面接官の人脈と自身の人脈に共通の知人がいた、など、こうした具体的なつながりが見つかると、それだけでお互いの心理的距離はぐんと縮まります。
付随した話題としては、面接相手との間で、趣味やバックグラウンド、出身地・出身校などでの共通項が見つかればしめたものです。
それだけで場が打ち解けますし、「知り合いモード」でその後の面接を進めることができます。 できる人は、こういう情報を見つけ出すのもうまいのです。
ミドルやリーダークラスの人たちには、「私が」ではなく、「私たちが」成し遂げたいという態度が求められています。
「この部門でこのような経験も生かして、これこれの貢献をしていきたいです」
「こうした事業チャンスがあると思っているので、この役割でそれを具体化、成し遂げてみたいのです」
といった言い方になるでしょう。
主語は、「私が」ではなく、「私たちが」です。
何回かの面接で、まだ採用が決まったわけではないのに、自分の中で移籍後のイメージがありありと湧いていて、「当社はこうすべきですよね」「われわれなら、絶対にこうできるはずです、やりましょう!」というような「勝手に入社モード」で話す候補者も私は多く見てきました。
こうした人たちの多くは転職に成功し、入社後に活躍しています。
あなたが同じ方向を向いて業務に邁進してくれる人か、貢献マインドがある人かを、特に経営者は厳しく見ています。
総じて言えば、会話の視点、ベクトルが「自分に向かうばかり」の人は相手の心に刺さらないうえに、「こんな人がうちの会社に入ってきたら嫌だな」と思われます。
そうではなく、会話の視点、ベクトルが「相手や外の世界に向かう」人はどのような場面でも好かれ、周囲に人が集まってきます。
転職で応募先企業から「ぜひわが社に来てほしい」と求められるのもそういう人です。
ぜひ、皆さんには面接で、どこに行っても「好かれる」「乞われる」人材側に立っていただければと思います。
まとめ
面接官と自分が双方向にコミュニケーションをとれるように、共通の話題を見つけられるかどうかが大切なところです。
今回ご紹介したことをヒントに、あなたなりの望ましいコミュニケーションスタイルを築いて、面接を受けた企業から「ぜひわが社へ」と言われる人材になってください。
『30代最後の転職を成功させる方法』