グループでひとつのプロジェクトを進める場合においても、メンバーとの連携や心理的安全性を養うために日々の対話は欠かせません。
今回は、さまざまな忙しい状況にあっても、短時間であらゆる人と信頼関係を築く対話法をご紹介します。
信頼関係を築く鍵は、自分から話すばかりでなく聞き役に回るように意識することです。
しかしやってみると、存外に「これは、簡単ではないぞ」ということがわかります。
特に「喋ること」で場を和ませようと頑張るタイプの人は、自分が一生懸命話してしまうことで、相手と仲良くはなれても、なかなか信頼されるまでには至りません。
例えば営業マンなら、ビジネスにおいて、お客様との信頼関係を築き上げるのが大切なことは誰でもわかっていることです。
しかしいくら一生懸命にお客様のためになるように頑張って情報提供していても、実際にお客様が何を考えているのかをヒヤリングしながら相談に乗っているかどうかという点が抜けていると、それは一方的に情報を伝えられているとしか受け取ってもらえません。
忙しい時こそ聞き役に徹することで、短時間で信頼を得る対話術を習得するべきではないかと感じます。
では、愚弟的に自分が聞き上手になるためには、どうすればよいのでしょう。
「聞き上手」の鉄則として、まずは自分の意見は横に置き、「適当な姿勢」で相手の言葉を傾聴します。
「適当な姿勢」こそが、忙しくとも余裕のある、大人を感じる聞き上手の態度です。
不真面目に聞くのではなく、無関心でもない、あくまで「適当」であること。
この「適当」を解説する際に、ぜひここで紹介したいのが「ロジャーズの3原則」という理論です。
「ロジャーズの3原則」は、アメリカの心理学者、カール・ロジャーズが提唱した理論で、信頼構築の前提となる「傾聴」の要素は次の3つの要素からなるという考え方です。
<ロジャーズの3原則>
1.共感的理解:相手の気持ちに立てる
2.無条件の肯定的関心:自分の価値観で判断しない
3.自己一致:心で思っていることと、言動が一致している
上記の各要素を一つずつ説明するとともに、セルフチェック用の設問を作成してみたので、回答しつつ、自分が「聞き上手」になれているかどうかを確認してみてください。
1. 共感的理解
共感的理解とは、相手の立場に立って、気持ちに共感しながら理解しようとする姿勢です。
技巧的に「大変だね」「嬉しかったね」と言葉を使うのではなく、相手の気持ちに寄り添い、「その気持ちわかる」と思いながら聞くこと。
知らないことや自分にとってあまり重要ではない事柄でも、相手が嬉しそうに報告してくれた時は、素直に喜びを感じながら聞けるものです。
2. 無条件の肯定的関心
無条件の肯定的関心とは、相手の話を「良い・悪い」といった評価や、自分の価値観を加えずに、先入観のない視点に立って、関心を持ちながら聴く姿勢のことです。
ぶっきらぼうでそっけない相手に対しても、マイナスの感情を抱かず、素直に話を聞くことができます。
3. 自己一致
自己一致とは、心で思っていることと発言にへだたりがなく、正直である姿勢のことです。
部下の話を理解できない時は、理解しているフリをせずに、遠慮せずに確認するようにしましょう。
自分の意見を横に置き、「適当な姿勢」で聞く。
これが「聞き上手」の鉄則です。
「適当」とは、無責任といった意味ではなく「適切な程度」のことです。
例えば、
シーン:美味しくないと感じた料理を食べた時
NG:「マズい」と口にする or 自分を偽って「おいしい」と言う
OK:「自分はまずいと思ったけど、自分の感覚が絶対ではないし…。人によって味覚は違うからなあ」と思いながら、相手に「どう?」と聞く
この時、相手が「おいしい」と言えば、それはそれでよし。
また、相手が「まずい」と答えたならそれもよしとします。
それが「適当」。
聞き役に徹しながら、この「適当さ」を自分のものにすることこそが、「良好な関係」を築く重要な要素になるのは、疑いようのないことでしょう。
まとめ
今までの対話で、改善すべき点が思い当たるフシのある方は、早速実践してみてください。
いかなる状況でも、短時間で信頼を得る対話は成立するものです。
今回の内容が、あらゆる人と信頼関係を構築するスキル向上に向けての一助になれば幸いです。