最近では、自分の好きになれない部分やマイナスだと感じる部分を別の角度から見直してよい方向に捉え直したり、同じ内容でも言い方を工夫して受け取りての印象を変える「ポジティブ変換」も話題です。
しかし人を生きやすくするための思考の意識が、知らずしらずのうちに「義務」になってしまっていては、逆に苦しくなってくることもあります。
今回は、ポジティブ思考や自己肯定感についてお話していきたいと思います。
自己肯定感をアップしようと懸命になりすぎて、それがプレッシャーになっていることはありませんか?
人間は自分のネガティブな面も含めて、すべてをあるがままに認めたうえで、そんな自分を好きになれれば言うことはありません。
どんな場面の自分の態度にも意味と価値があると肯定しながら動ける感覚が、すなわち自己肯定感です。
それは、今までの自分を乗り越えるためにも失敗を恐れず挑戦し、周囲の意見に惑わされない自分をつくるために重要なキーワードになります。
しかし最近は、自己肯定感をアップさせる熱の高まりに警鐘を鳴らすカウンセラーもいるようです。
自分の自己肯定感をあげることに熱くなるあまり、人にもその感覚を押し付けてしまう「ポジティブハラスメント」を招いてしまうこともあります。
落ち込んだり自分を否定したりすることを、すべて悪の行いと感じて、ネガティブなことを許せなくなってしまうのです。
人間がネガティブな感情を持つことは自然なことで、その感情を含めて自分を認められる感覚が自己肯定感なのに、これでは本末転倒になってしまいます。
そもそも、自己を肯定することと、自己肯定感とは、少しばかり違います。
自分には価値があると言い聞かせるのではなく、自分には価値があるのだと自然と思えることが自己肯定感なのです。
同じように、共通点が多いけれど少し意味が異なるのが、ポジティブ思考です。
ポジティブ思考は、どんな事象も前向きに捉える考え方ですね。
ネガティブな出来事があっても、それをポジティブに変換して捉え直そうとする思考です。
一方で自己肯定感は、ネガティブをポジティブに無理やり変換はせず、ネガティブ自体も受け入れて肯定します。
「いつもポジティブでなければいけない!」と気負うことなく過ごし、ネガティブなことも受け入れながら最終的には前を向いていることです。
ポジティブ思考の人は、いつも自信に満ちあふれていると感じませんか?
なぜ自信に満ち溢れているのかというと、自分の価値や能力を信じること、自分を信頼する気持ちを前向きに持ち続けることができるからです。
仕事などでも、能力を発揮して成果を出たときなどは、特に自信を感じやすいですよね。
しかし自己肯定感というものは、たとえ能力がなくても、成果を出せていなくても、失敗をしたり、ミスをしたときでも自分を肯定できる感覚です。
教育においてもテーマになることの多い自己肯定感ですが、成果を出したときだけ褒めるのではなく、うまくいかないときにもその状況を認めて受け止め、何が悪かったのか、どうすれば最良の結果が出せたのか、次の機会ではどうすることが良いのかなど、自分を尊重し、サポートしてみましょう。
ダメだった時、失敗したときのネガティブな状況こそ、より自分を知り得るチャンスだと考えましょう。
まとめ
人生の豊かさとは何かを考えたとき、物質的な満足度も大切ですが、心の満足度はさらに大切なことに気づくはずです。
そのために、自己肯定感のアップやポジティブ思考への変換をするとよいと言われていますし、そういったフレーズは心理学の世界でもよく登場します。
しかし、いつでも100%ポジティブな人はいませんし、自分のすべてを肯定できる人もなかなかいません。
好きな自分と嫌な自分が混在しているのが人間なのです。
ネガティブな部分を無理やりポジティブに変換することが義務になっていませんか?
次回は、気負わずあるがままでいられる具体的な5つのヒントをご紹介したいと思います。