しかし、いくら勉強しなさいといっても、素直に従う子どもがめったにいないのも現実です。
では、親は一体どうすればいいのでしょうか?
実は、子どもに「親が言う」のではなく、「親がやる」ことを子どもに見せることで、子どもの学力が上がるようです。
今回は、心理学博士でもある榎本博明氏著書『親が「これ」をするだけで、子どもの学力は上がる!』からとっておきの方法をご紹介したいと思います。
2012年に国立青少年教育振興機構が、「子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究」を実施しました。
調査研究は、中高生にみられる影響・効果と、成人にみられる影響・効果がどれほどのものかと言う内容でした。
中高生についての結果をみると、子どもの頃に本や絵本を読んだ経験が豊かであるほど、読書が好きで、1日の読書時間が長く、1カ月に読む本の冊数が多いことがわかりました。ここから、子どもの頃に本をよく読んでいた子は、中学生や高校生になってからも本をよく読んでいることが分かります。
また、この調査研究では、そうした読書傾向が学力向上に貢献していることも示唆されています。
つまり、子どもの頃の読書活動が多いほど、社会性があり、物事への意欲や関心が高く、論理的思考能力が高い、などといった傾向を示すデータが得られているのです。
社会性に関しては、子どもの頃の読書活動が多いほど、ケンカをした友だちを仲直りさせたり、友だちに相談されることがよくあるというように、人間関係能力に優れていることが分かりました。
意欲・関心についても、子どもの頃の読書活動が多いほど、なんでも最後までやり遂げようとする気持ちが強く、分からないことはそのままにしない、経験したことがないことでも積極的にチャレンジするというように、物事への意欲や関心を強く持っていることもわかっています。
論理的思考能力については、子どもの頃の読書活動が多いほど、複雑な問題について順序立てて考えるのが得意、考えをまとめることが得意、物事を正確に考えることに自信がある、という論理的思考能力に自信を持っていることが分かりました。
子どもの頃の読書活動には、幼児期の絵本を読むことも含まれ、就学前から小学校低学年の頃に絵本をよく読んだ人ほど、社会性も意欲・関心も論理的思考能力も高いことが判明しています。
さらに、そのような傾向が、自分で本が読めるようになる以前の読書行動にも当てはまることが分かりました。
つまり、自分ではまだ本を読めない赤ちゃん期に、家族から本や絵本の読み聞かせをしてもらったり、昔話を聞かせてもらったりした経験の多い人ほど、社会性も意欲・関心も論理的思考能力も高いといった傾向が顕著にみられたのです。
・家族から昔話を聞いた
・本や絵本の読み聞かせをしてもらった
・絵本を読んだ
・本を読んだ
・マンガを読んだ
・地域の図書館で本を借りた
・地域の図書館で調べものをした
というような質問項目によって測定されます。
すでに成人になっている方への調査の結果を見ても、子どもの頃に本や絵本をよく読んだ大人ほど、読書が好きで、1日の読書時間が長く、1カ月に読む本の冊数が多くなっています。
読書習慣のある大人の多くは、子どもの頃から本や絵本に親しんでいたことが分かります。
そしてやはり、子どもの頃に本や絵本をよく読んだ大人ほど、社会性や意欲・関心などが高く、教養があるといった傾向も示されているのです。
まとめ
さらには子ども時代の読書が、学力の基礎となる知的好奇心や意欲、論理的思考能力の発達を後押しすることも示されています。
まだひとりでは本を読めない年齢でも、家族から読み聞かせてもらうことでだんだん本を好きになり、興味のある分野の本を自分から手に取るようになっていきます。
そうして積み重ねた読書習慣のプラス効果は、学校時代のみならず、成人後にまで及ぶことが確認されているのです。
『親が「これ」をするだけで、子どもの学力は上がる!』