今回は介護をネガティブなだけの体験にしないためにはどうすればよいのか、そのコツをご紹介したいと思います。
これまで当たり前にできていたことができなくなるなど、介護を必要とする人には多くの喪失体験があり、その体験に傷ついていることが多く見受けられます。
また、できなくなった自分を受け容れるために時間が必要なこともあります。
介護を受けないと日常を過ごせないという状況の受け入れ方は人それぞれで、中には「なにくそっ」と奮起して、機能回復のリハビリに積極的に取り組む人もいますが、後期高齢者の年齢を越えてくると、リハビリは機能を回復させるためではなく、残っている機能をいかに維持させるかという目的や成果のためにに行うことも多くなってきます。
リハビリによる回復への期待が大きすぎると、それが本人の体の負担や傷心につながることがあるので、注意が必要です。
周囲の人は、介護を受ける人の自尊心に配慮しながら、あるがままの状態に寄り添えるのが理想的ですが、それは言葉で言うほど簡単ではありません。
ご家族も自分の親や祖父母が歳をとり、弱ったのを見るのは苦しくて切ないため、つい親ができなくなってしまったことばかりに目を向けてしまいがちです。
そしてそのまま介護期間が長くなるにつれ、介護が苦しいだけの体験になってしまうことになるのです。
介護を苦しい体験にするのではなく、客観的な判断とアドバイスができる介護の専門職と共に、みんなでご本人が達成できる小さくても具体的な目標を考えて、その目標に向かって一緒に努力しながら、状況を全員で共有し、日々の小さな変化を喜び合っていきましょう。
そうした体験は本人の幸せや人生の意味を見直し、人生に対する肯定感を取り戻すきっかけになることもあります。
小さなささやかな成功体験でも、周囲と喜びを積み重ねて共有することで、介護が家族との貴重な思い出や素晴らしい人生体験になっていく場合もあります。
ぜひ介護者の方は、担当のケアマネジャーさんと相談しながら、達成可能な目標を設定してみてください。
介護が必要な期間がどれくらい続くのか、確実な時間は誰にも分かりません。
ほとんど終末期の診断を受けていた人が、一時退院して家に帰ったら食事がとれるようになり、主治医も驚くような回復を見せることもあります。
介護をしていると、今後のことは知りたくないこともあると思いますが、医師が示す今後の見通し「予後予測」は、終末期に限らず科学的根拠に基づいて予測されるので、概ね正確だと言えるでしょう。
そしてその情報はケアマネジャーにも共有されるので、介護面では、この先どのように状態が変化していくか、それによって生活にどのような影響が出るかを予測してもらうことができます。
ご家族は介護生活が始まったときから、主治医やケアマネジャーから伝えられる「予後予測」を受け容れ、「現在」を見ながら、同時に「すこし未来」も見ることが良いと思います。
ご本人に「予後予測」をお伝えするかどうかは、介護度が高い人は、変化のスピードが思った以上に速い場合もあるので、「予後予測」を知ることで、大事なことを優先して行えますし、これからの時間の長短にかかわらず、時間を豊かに使えるのではないでしょうか。
介護が終わったときに、ご家族にとっても大事なことをやり遂げた思い出があると慰めのひとつになるはずです。
介護をネガティブ体験にしないためにも「予後予測」を聞くのは大切なことなのです。
まとめ
もしも心配なことやわからないことがあれば、遠慮せず担当のケアマネジャーさんに相談してみてください。
ひとりで考えるよりも、プロに頼ることできっと力になってもらえるでしょう。