会話の中において、聴き方のスキルを身につけると、誰かと会うたびに相手に好感や信頼を与え、あなたの評価を上げ、その人にとってはなくてはならない不可欠な存在になることができます。
前回に引き続き、そんなスキルのひとつであるバックトラッキングの活用事例についてお話ししたいと思います。
★ 3つの場面におけるバックトラッキングの活用事例
・ビジネスの場面での活用事例
・家庭やプライベートでの活用事例
・カウンセリングやコーチングなどでの活用事例
★ バックトラッキングにプラスαして、評価をさらに高める
・「促す言葉」をプラスα
・「肯定的な支持」をプラスα
・「質問」をプラスα
★ まとめ
相手に好感や安心感といった状態を感じてもらい、信頼関係を築く聴き方スキルのひとつとして、プロも活用するバックトラッキング。
実践的なバックトラッキングとして、ビジネス、家族やプライベート、そしてカウンセリングやコーチングといった問題解決という3つのシーンにおける活用事例をご紹介します。
ビジネスの場面での活用事例
<セールスの場面>
相手 :「今回は経費削減を可及的速やかに対応しなければなりません」
あなた:「当社では、経費削減をまさに可及的速やかに対応できるサービスをご提案できます」
<プレゼンの質疑応答の場面>
相手 :「◯◯について、どのように活用できるのか、もう少し詳しく教えてください」
あなた:「ご質問ありがとうございます。正確にお答えしたいので、確認させてください。◯◯について(そう)、どのように活用できるのか(そうそう)、というご質問でよろしいですね(そうそう)」
※このケースは、質問者が、自分の質問、そして自分自身のことをちゃんと受け止めてくれているという印象を与えていることがポイントです。
すぐに答えず、相手の聴きたいことをバックトラッキングで確認するだけで、安心感や好感、信頼感を築くことができます。
<新規顧客獲得のできた部下に対応する場面>
部下 :「新規の◯◯商社から採用の連絡がありました。早速受注もいただきました!」
あなた:「◯◯商社に採用か(そうです!)。 新規のお客様だな(そうです!)。 受注、おめでとう。うれしいな!」
※すぐに「やったな!」といった言葉で返すのではなく、相手の言葉で事実を取り上げ、感情を汲みとってバックトラッキングしている活用例です。
家庭やプライベートでの活用事例
<親子の会話の場合>
子ども:「今日学校で嫌なことがあったんだ」
親 :「嫌なことがあったんだ…(そう)、どうしたの?何があった?」
※つい、「何?何があったの?」と聴きたいところをバックトラッキングして質問をしているところがポイントです。子どもに「聴いてくれている」という安心感を与えます。
<夫婦の会話の場合>
夫:「ちょっと熱があるみたいだから、会社休もうと考えてるんだよ」
妻:「熱があるみたいなの…(そうそう)。だったら会社休みなよ」
※この会話も同様、つい「休みなよ」と返すところをバックトラッキングして伝えているところがポイントです。
<恋人同士の会話の場合>
彼女:「ねぇ、私のこと、愛してる?」
彼氏:「愛してる」
※解説はいらないと思います。
ここで、「大好き」と答えても彼女は納得しないかもしれません。
女性は言葉で確認したがる傾向にあると言われていますので、照れくさくて言えない方も、バックトラッキングのつもりで活用してください。
カウンセリングやコーチングなどでの活用事例
<カウンセリングの場合>
クライアント:「人間関係で悩んでるんです。実は上司の対応に困っていて…(話はつづく)…いろいろ考えたんですけど、落ち込んでしまってどうしたらいいかわからないんです」
カウンセラー:「つまり、上司との関係で落ち込んでいらっしゃるんですね」
※要約して、クライアントの感情をバックトラッキングしている例です。
<コーチングの場合>
クライアント:「将来独立したいと思っているのですが、不安で時間だけが過ぎている状況なんです」
コーチ :「不安な状況が続いてるんですね。そして、今は不安だけど、将来は独立したい、そう考えていらっしゃるんですね」
※このケースはバックトラッキングしながら、クライアントの目的や目標に意識を向けていく質問としても有効な例です。
さまざまなケースをご紹介しましたが、時には気持ちを受け止めることが必要な場面、また最後のコーチングの例でご紹介したように、解決策を見出していく場面と状況によって、バックトラッキングの使い方に柔軟性を持ちながら活用してください。
バックトラッキングした後に一言つけ加えることで、相手との関係性がより深まり、さらにあなたの評価を高めることができます。
ここでは一言添える方法を3つお伝えします。
・「促す言葉」をプラスα
促す言葉とは、「それで」「それから」「で、どうなったの?」「どうだった?」という言葉を添えて、会話を促進させます。
相手 :「この前ね、久しぶりに映画館で映画を観たの」
あなた:「へえ、映画館で、映画を観たのね(そうそう)、大画面だと迫力が違うものね。で、どうだった?(促す言葉)」
このように「促す言葉」を添えて、相手との会話がさらに広がるように活用していきます。
・「肯定的な支持」をプラスα
肯定的な支持とは、相手が言ったことに対して、あなたも同意ができる点を添えて、会話をすすめます。
相手との共感ゾーンが生まれることで、相手との関係性はより良くなることでしょう。
相手 :「この前ね、久しぶりに映画館で映画を観たの」
あなた:「へえ、映画館で、映画を観たのね、大画面だと迫力が違うものね。で、どうだった?」
相手 :「やっぱりいいよね。あの空間は」
あなた:「いいよね。あの空間、私も好きなんだ(肯定的な支持)」
といった形で活用します。
自分もいいと思ったことを伝えましょう。
嘘や適当に合わせている会話は、相手の無意識はちゃんとわかっていて、違和感を持ち始めます。
ここは相手に対しても自分に対しても、誠実になって伝えていくことがポイントです。
・「質問」をプラスα
言葉通りバックトラッキングした後、質問を添えていきます。
促す言葉でご紹介した、「で、どうだった?」といったことも質問のように見えますが、ここではただのお喋りではなく、ビジネスといった具体的な目的がある場合などに有効です。
企業の経営者とコンサルタントの会話を事例にすると以下のようになります。
クライアント :「今年は利益を生み出すために経費削減を行いたいと考えています」
コンサルタント:「利益を生み出すための経費削減ですね(そうそう)。大切だと思います(肯定的な支持)。そこでもう少し詳しく教えて下さい。どういった経費項目の削減を特にお考えでしょうか?(質問)」
この「質問」を付け加えることによって、相手には、「この人はちゃんと理解しようとしてくれている」「わかろうとしてくれている」「頼もしい」といった信頼感が生まれてきます。
プラスαの事例を3つお伝えしましたが、まずは、バックトラッキングそのものを意識して「オウム返し」を活用してみてください。
そして、慣れてきたら、あなたのコミュニケーションの目的に相応しいプラスα「促す」「肯定的な支持」「質問」を用いてください。
以上を公式のように示すと以下のようになります。
バックトラッキング+促す言葉(それで…/それから…)
バックトラッキング+肯定的な支持(いいね/好きです/私もです)
バックトラッキング+質問(もう少し具体的に…/詳細を教えて下さい…)
バックトラッキングの後にプラスαをつけなければならないというわけではなく、また順番が決まっているわけでもありません。
「質問」の後に「肯定的な支持」を付け足したり、「促す言葉」の後に「質問」をさらに足すなど、その時の場面や相手や状況に応じて柔軟に対応することが大切です。
まとめ
大切なポイントは、ビジネスやプライベートに関係なく、どんな場面でも相手の使った言葉を繰り返して会話を進めていくことです。
これだけでもあなたへの好感や安心感を高め、相手にとってあなたへの信頼感が増す貴重な存在としての評価につながりますので、ぜひ活用してみてください。
『人を覚醒に導く史上最強の心理アプローチ NLPコーチング』