ときには挫折したり、あきらめたりしながら、どうしようもなくネガティブな思考や感情に支配されることもあるでしょう。
そして、ほとんどの人は、負の感情を無理やりに抑え込んでポジティブにならないといけないと考えてしまいます。
しかしそれでは、いつまでたっても本当の意味でポジティブにはなれないのです。
今回は、『望む現実は最良の思考から生まれる』ヴェックス・キング (著), 桜田 直美 (翻訳)から、自分の中に眠る可能性を引き出す法則をご紹介します。
有害であるのにポジティブ、という一見真逆なものと受け取れますが、これはネガティブな感情を抑圧しようとする行為のことで、次のような言葉が該当します。
・「もうくよくよ考えるのはやめて、前に進みなさい」
・「何も問題ない、全てがうまく行く」
・「これより悪いことだってある」「少なくとも最悪の事態にはならなかった」
・「ネガティブなことは言わない」「楽しいことを考えて」
有害なポジティブさは時に弊害となり、自分が認められていないという気持ちを生んでしまいます。
有害なポジティブさを振りまく多くの人は、自分は困っている人を助けて励ましているのだと本気で思い込んでいますが、実際にはその人が抱えているまともな感情を無視しているのです。
ネガティブな感情を抑圧すると、その人の心身の健康は大きく損なわれてしまうかもしれませんし、最悪の場合、信頼関係を損ない、人間関係を破綻させることもあります。
思考は、感情に決定的な影響を与えます。
ポジティブな思考を目指すときに多くの人が直面するのは、ネガティブからポジティブへの移行過程を無視してしまう問題です。
私たちは、ただネガティブな思考を消してしまえばいい、感情を麻痺させて、ポジティブなことだけを考えようとします。
しかし、この方法はほとんどうまくいきません。
なぜなら、自分をだまして、何も問題ないと思い込もうとしているだけだからです。
実際の感情は、そうでないことを知っているので、抑え込まれた感情は毒となり、いずれ心身にダメージを与えることになります。
有害な思考が心のなかにとどまったままでいると、似たような体験をしたときにフラッシュバックが起こります。
その結果、気分が滅入ってしまうだけでなく、このパターンが続くことでメンタルヘルスがダメージを受け、それが身体の不調にもつながってくるのです。
それに加えて、あなたが周りの人たちに対して害のある存在になってしまう可能性すらあります。
もっと孤独を感じるようになり、惨めな状況がさらに惨めになっていくのです。
だから、ネガティブな感情を抑圧してはいけないのです。
今だけではなく、この先も同じようなことが起こったときは、いつもそれを心がけるようにしなければなりません。
自分の感情を理解すれば、気が滅入る低い周波数の感情を、高い周波数の感情に変えることができます。
個人の成長で、「内省」がとても重要な役割を果たすのもこのためなのです。
ネガティブな感情を抑え込むのは、今日でおしまいにして、その感情を、気分の周波数が上がる別の感情に変えるようにしましょう。
高校生のあかねは、気になる人ができたので、思い切って話しかけてみました。
それから数日間、メッセージをやりとりしたり、電話で話したりしていましたが、彼からの連絡が途絶えてしまいます。
あかねはスマホを見つめながらずっと待っていましたが、メッセージは送られてきません。
その結果、彼女の頭の中は、「誰も私に関心がない。私のためにわざわざ時間をつくろうなんて思わない。それは私がブスだからだ」という考えでいっぱいになり、悲しみに打ちひしがれてしまいました。
彼女はこのネガティブな感情を、ポジティブな感情に変える必要がありました。
ネガティブな感情を無視するのは、体内の毒をそのままにしておくのと同じようなものです。
ここでの目的は、自分にポジティブな思考を強制することではなく、自分が感じていることをすべて理解して、ネガティブな思考をもっと健全なものに変え、自分の気分を向上させることが目的です。
そこで以下のステップ・バイ・ステップの「ネガティブな感情を別の感情に変える方法」を試してみることになりました。
「ネガティブな感情を別の感情に変える方法」
1.感情に名前をつける
感情の状態を変えるには、まず自分が何を感じているのかを知る必要があります。
あかねの場合、感情の名前は「悲しみ」と「恐怖」です。
そしてさらに深く掘り下げたところ、そのほかに「不安」「捨てられたという絶望感」という感情もありました。
2.自分に質問をする
次のステップは自分に質問することです。
「なぜ自分はその感情なのだろう?」
「どんな思考からその感情が生まれたのだろう?」
あかねが悲しみを感じていたのは、彼からメッセージの返信が来なかったから。
そこから彼女の中に、「誰も自分のために時間をつくらない、誰も自分に関心がない、なぜならブスだからだ」という思考が生まれたのです。
その結果、彼女は孤独で悲しくなってしまいました。
この段階になると、すでに自分の感情を意識的に観察することを始めています。
私たちの思い込みの多くは、誇張や誤解、自分に押しつけられた他人の意見などがもとになっているのです。
それらの間違った考えや批判に、心の中で意義を唱えてみましょう。
自分の思考回路を分析し、ネガティブな思考パターンをもっとポジティブな思考パターンに変えていきます。
思考の裏にある思い込みに意義を唱えるには、まずその信憑性を疑ってみることです。
たとえば、あかねは自分に「私がブスだというのは本当なのか?」と尋ねてみます。
この質問について深く考えていくうちに、自分がそう感じる理由について多くを学ぶことができます。
この段階まで来たら、今度はさらに深く掘り下げる質問をします。
それに加えて、もっと極端な質問をしてもいいかもしれません。
あかねの場合は、例えば「それはつまり、私は永遠に幸せになれないということなのか?」という質問です。
極端な質問は、極端な答えにつながります。
あかねはこの質問についてよく考え、そして自分が状況を大げさにとらえていたことに気がつきました。
メッセージの返信がなかったからといって、自分が一生幸せになれないと決まったわけではありません。
またあかねは、自分が喜びを感じるのに、他人は一切関係ないということも思い出しました。
自分で自分に質問をすると、自分の中にあった思考の限界に気づくことができます。
あかね自身がそうであったように、自分の思い込みが間違っていること、ただ状況のネガティブな側面だけを見ていたことを理解できたのです。
過去のイヤな経験を思い出し、問題の核心に迫るような質問を自分にしてみましょう。
そして私たちが潜在意識の中でこういった過去の経験から勝手にネガティブな結果を引きだし、自分で悲しい状況をつくりだしてしまうことに気づくことが大切です。
自分の中に「教訓」として蓄積された勝手な思い込みに意義を唱えましょう。
間違った教訓を放置しておくと、潜在意識の中で何度も再生されてしまい、それらがやがてあなたの心の重荷になって、ますますあなたを落ち込ませることになるのです。
3.理解する
このステップでは、感情の裏にある深い意味を理解することがカギになります。
あかねの例で考えてみると、あかねは最近の経験によって自分に自信をなくしていました。
好きな人からメッセージの返信があったころは、まだ自分を好きでいられたということは、彼女が社会からの受容や承認を求めているということです。
自分の感情の裏にある深い意味を理解し、それを成長のために活用しなければなりません。
あかねは自尊心が低いために、他者の承認がなければ、自分の価値を認めることができなかったのです。
他者に価値を認められ、受け入れられないと、自信を持つことができない女の子でした。
4.置き換える
発見したネガティブな思い込みを、もっと前向きな思考に置き換えるには、自分にこう尋ねてみましょう。
「もっと気分がよくなり、偉大な人生を送るためには、ものの見方や行動をどう変えたらいいだろう?」
ためにならない思考を、気分がよくなるような思考に変えなければなりません。
あかねは自分に、他人が私をどう扱おうと関係なく、私は愛される価値がある、と言い聞かせました。
「私は私を愛している。それだけで十分だ。私から私への愛は、いつか私を本当に大切にしてくれる人からの愛という形で返ってくるだろう」
自分に力を与えてくれるこのような思考をさらに本物にするために、目指している感情を本当に感じていたときのことを思い出してみましょう。
あかねは、自分には価値があると感じていたときのことを思い出しました。
そのときのあかねは自信があり、愛されていると感じていたので、彼女はその記憶を頭の中で何度も再生しました。
このテクニックは、自信をつけるのに役立つだけでなく、実際に解決策も生み出してくれます。
過去の似たような状況で、どんなことをすれば助けになったか思い出すことができるからです。
5.視覚化する
今の感情を適切にコントロールしている自分を視覚化します。
すると、自分の気分の周波数が上がるだけでなく、もうネガティブな感情に支配されなくなるので、この先同じような状況になっても、負の感情をコントロールできるようになるのです。
視覚化を何度もくり返しましょう。
くり返すたびに想像の限界を広げ、よりリアルに感じることを目指します。
何かをマスターしたいなら、くり返し練習するのがいちばんの方法です。
その感情が呼び起こされるような状況を頭の中で何度もリハーサルすれば、心の準備が万全の状態で、その状況を迎えることができますよ。
まとめ
ネガティブな感情を置き去りにしてポジティブにふるまうのではなく、自分に対して思いやりのある人間的なアプローチをとれば、自分を否定することなくい評価し、認めることができるのではないでしょうか。
自分に声をかけ、イメージして、くり返し練習しましょう。
『望む現実は最良の思考から生まれる』