こういった悩みを抱えるビジネスマンに対して、産業医・精神科医の井上智介氏は、最も波風を立てずに断れるあるマジックワードを勧めているのだそう。
今回は、上司にノー!と言い切ることができない方へ向けて、井上智介氏著書 『「あの人がいるだけで会社がしんどい……」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』 からうまく攻撃をかわす方法をご紹介します。
自分を確実な安全圏に身を置いておくためには、めんどくさい人や上司に対して「ノーと言える人物」だと理解される必要があります。
とは言え、相手も自分の要求をどうにかして承諾させようとするでしょうし、上司・部下という関係の場合だと、きっぱりと断れないこともあると思います。
そのような場合には、
「これはちょっと……」
というセリフを試してみることをお勧めします。
たとえば、めんどくさい上司から突然当日の残業を頼まれた時に、
「これはちょっと……」
と言って、最後まで言い切らずに言葉を濁します。
そうすると相手は、「ちょっと急すぎたか」「難しいか」など、あなたの話の先を推測して、話しかけてくるでしょう。
そうなれば、あなたは「はい、ちょっと難しいですね」と、ただ相手の言葉に乗っかればいいのです。
相手の言葉尻にあわせておけば、相手は自分が言い出したことでもあり、すんなり納得してくれることが多いのです。
もしも、「ちょっと……何?」と聞かれた場合は、
「お引き受けしたいのは山々なのですが、ほかの業務も立て込んでいるので、提出が来週の月曜日になりそうです」
などと、やる気はあるものの、相手の希望の日時までにできない旨を伝えましょう。
一方的に断るのではなく、会話を少し工夫して、相手に判断を任せることで、めんどくさい上司から心証を損ねずに自分自身を守ることができます。
パソコンや手帳にメモしている方が多いと思いますが、めんどくさい人対策としておすすめなのはA4用紙にやるべきことを書き出しておきます。
タスクの内容とあわせて、優先順位や依頼者、締切などを大きめの文字で書き、それを誰にでも見えるように机の上に広げておきましょう。
予定を可視化することで、依頼を引き受けるのが難しいことを説明する手間が省けるだけでなく、紙に書かれた依頼者が上司より上の役職の人だった場合などは、さりげなくプレッシャーをかけることもできます。
いくらめんどくさい上司といえども、自分の上司の仕事を差し置いて、自分の依頼事項を優先させるほど図々しくはないですし、むしろ、相手によって態度を変えるような人たちは、置いてあるA4用紙をチラ見して自分の分が悪いと分かればすぐに諦めてくれるでしょう。
めんどくさい人に対してだけでなく、中にはどうしても、断ること自体に抵抗を覚える方もおられるのではないでしょうか。
そういう方のために、とっておきの「お断り」練習方法があります。
それは、「SNSで苦手なアカウントをブロックする」方法です。
スマホの普及も相まって毎年のように新しいSNSが登場しています。
見ず知らずの人とつながることが普通になった今、SNS上で関係を断つことに抵抗感や恐怖心を抱いている人が少なくありません。
顔も見たことがない、実際に会うこともない相手にもかかわらず、一度つながった関係を断ち切ることに躊躇してしまうのです。
SNS上でトラブルがおきた場合には、ブロックをすると、お互いのフォロー関係が解除され、ブロックされた人が相手の投稿にアクセスすることが不可能になります。
しかし、そういう方はどうしても抵抗があるようです。
いきなり知り合いをブロックするのに抵抗があるのなら、最初は見ず知らずの人で練習してみましょう。
優しいあなたは、ブロックすると相手が傷つくのではと不安になるかもしれませんが、面と向かって伝えるわけではなく、画面をタップするだけですから、案外相手はブロックされたことにさえ気がつかないものです。
騙されたと思って1度トライしてみてください。
そうやって人との関係を切ることに慣れていきましょう。
ブロックしたその日は気になってしまうかもしれませんが、一晩寝たら忘れてしまうことも少なくありません。
つながりやすい時代になったからこそ、付き合う人や取り入れる情報を自分で選んでいかなければなりません。
自分の意志で「ノー」を判断できなければ、何でもかんでも受け入れることになり、あなたの大切な時間やエネルギーを浪費してしまうだけでなく、精神的にもストレスになります。
ひたすら我慢して言いなりになっていたところから、SNSでブロックすることでワンクッション置けた事実は、自分を守るために相手と距離がとれたということに違いありません。
こうした練習をしていても、時にはうまくいかないこともあると思いますが、重要なのは1つでも自分の意志で抵抗できたということなので、一歩一歩慣れていけるはずです。
小さな成功体験をしっかり重ねて、少しずつ自信をつけていきましょう。
まとめ
悪い印象を持たれない断り方を知っていれば、どんな場面でも角が立たないものです。
言い切らずに我慢して言葉を濁す、相手がかけてきた言葉に乗っかりつつ、うまく攻撃をかわすスキルを身につけてくださいね。
『「あの人がいるだけで会社がしんどい……」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』