5月21日のブログ では、子育てと教育において、アドラーが必要としたのは「自立」と「協力」のふたつだとご紹介しましたが、今回もそれに通じるものがあると感じます。
今回は、教育家・見守る子育て研究所所長の小川大介氏著書『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』より、小さな子どもが自分の欲求をコントロールできるようになるには、親はどんな言葉がけが必要なのかを解説します。
親なら子どもがおやつが好きなことは十分わかっていますが、ストックのためにと買いだめしたおやつを、購入した日に「明日我慢するから全部食べていい?」と言われてOKしたものの、翌日になればやはり「お腹減った!おやつちょうだい!」となります。
目の前におやつやお菓子があるのですから、当然おやつが食べたくなる気持ちもわかります。
身体も成長期で、すぐにお腹がすいてしまうのも理解できます。
しかし親としては、自分で決めたおやつのルールを守れずに我慢できないことについては、きちんと我慢することを学んで欲しいのに、という悩みが芽生えても不思議ではありません。
決めたルールを守れて、我慢できる子どもを育てるために、親は子どもにどう教えたら良いのでしょうか?
そんな「我慢する力を育てたいけれど、どうしたらよいのかわからない」と悩む親御さんは、子どもの個性や本人の意思を尊重したいと思いつつも、子どもの意思ばかりを尊重し続けていたら、やりたい欲求のままに行動するようになってしまい、子どもにとって悪影響にならないか?という怖さがあるようです。
もちろん世界的にも子どもの権利が尊重されなければならないのは明白なのですが、親としてはどこまでを自由にさせ、どこまでを強制したらよいのかわからなくて不安だというのもごもっともなご意見です。
おやつの一件のようなちょっとしたことをきっかけにこうした不安を感じた親御さんは、もしかすると、この先宿題をやらない子になってしまうのではないか、大人になったときに社会のルールを守ってやっていけるだろうか、というところまで考えてしまうかもしれません。
まず大切なことは、親としてどんな人間に成長してほしいと思っているのかをしっかり子どもに伝えることです。
おやつの件で振り返ってみると、おやつが『欲しい』と言ってくるあなたは無条件にかわいいし大好きだけど、と前置きしたうえで、自分の欲求をコントロールして、ときには誰かのために、自分の意見を抑えてあえて言わない選択ができる力を持った人に育ってほしい、と子どもにもわかる言葉で伝えるのです。
そして、「わかってくれるかな?」と確認しましょう。
その際、しぶしぶでも何とか親御さんの願いを理解しようとしてくれる場合は、おやつを食べる日ごとに小分けをして、今日の分と明日の分などと一緒に分け、「明日からの分は戸棚に入れておくからね」と見せてしまうなどして、ご家庭のルールを実行していけば問題なく守れるようになっていくと思います。
もしも子どもが全く親の話を受け入れる様子がなかった場合は、お子さんが自分の衝動を抑えられているイメージを持つのがまだ難しいのだということが考えられます。
子ども自身がイメージできないことを親が要求するのは残酷なので、このような場合は段階的に我慢する力を育ててあげる必要があります。
たとえば、「おやつが欲しい」と言われたら、親御さんは「わかった、15分待ってね」といったんおやつをあげるのを引き延ばします。
もしも非常に子どもの衝動が強く15分が難しいなら、最初は3分から始めてもよいでしょう。
そして、また違う日に「おやつが欲しい」と言われたら、「30分後ね」と少しずつ、おやつを手に入れるまでの時間を延ばしていきます。
その代わり、延ばした時間がきたら必ずおやつをあげる約束は守り、待てる体力と心を鍛えるトレーニングをしていきます。
重要なのは、待てた場合は「約束通り待ってくれたね、よくできたね」と褒めてあげることです。
我慢することが苦しい記憶としてセットになると子どもは嫌になってしまいます。
「我慢した結果、約束通りに親はおやつを出してくれた。我慢できたことを褒めてくれた」という、成功体験や嬉しい気持ちをつくってあげることが大切です。
それを繰り返すうちに、「待てるよね」という言葉がけだけで、子どもが「うん」と素直に言えるようになっていきます。
親子のそういった関係性ができてくれば、少しずつ無理なく立ち止まれるようになります。
さらに「30分待っている間に、宿題終わらせちゃえば?(学校で借りてきた本を読んだら?)」などとお子さんに選択可能な別の行動を示してあげるのもよいでしょう。
脳は衝動的な欲求を瞬間的に満たすとドーパミンがものすごく出て気持ちよくなるのですが、そうなると衝動は次第にエスカレートしていきます。
しかし、「今すぐ欲しい」という衝動は数秒で消えるので、少しずつ待つ時間を延ばしていくと衝動を抑えられるようになっていきます。
こうしたトレーニングを積んでいく中で、「欲しいものは欲しい、やりたいことはやりたいと素直に言っていいんだよ。でも必要なときには待つことができる子に育ってほしいとも思っている」という親の願いを時折伝え直すことで、いつも我慢して待っていなければならないわけではないという理解と納得を得ることで、親の顔色を伺うのではなく、自分で判断する力も育ちます。
あとは各家庭のルールに沿っておこなっていけばよいのではと思います。
まとめ
言われるがままに甘やかしてしまうのも不安だけれど、キツくいっても反発されてしまう。
そんな時は、率直に子どもに「どんな人になってほしいか」を伝えましょう。
衝動的な欲求は数秒で消えるものです。
時間の先延ばしトレーニングで子どもにセルフコントロール術をマスターしてもらいましょう。
『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』