内向的と言うと、どうしても「陰気」「消極的」「暗い」といったネガティブな印象を持たれてしまうのではと思いがちですが、実はそんなことはなく内向的な人は、実は営業マンとして独特の強みも持っているのです。
今回は、心理学博士で人間科学研究所代表の榎本博明氏著書『 何でもないことで心が疲れる人のための本 「隠れ内向」とつきあう心理学』より、その強みの部分をご紹介したいと思います。
現代において、コミュニケーション能力が重視される傾向にあるのは間違いありません。
そのような社会のなかでは、内向的な人は何かと肩身の狭い思いをしがちです。
慎重で内省的、そして何かと自己嫌悪に陥りやすい内向的性格ですが、そんな内向的性格にも独特の強みがあるのです。
そんな隠れ内向も含めた内向的性格さんの強みとはいったい何でしょうか。
内向的性格な人は、仕事の場面においても神経過敏になり過剰に不安を感じがちです。
例えば、1カ月先に大きなプレゼンを控えていたとします。
すると当日まで「失敗したら大変だ」というプレッシャーがかかった状態がずっと続き、何をしていても落ち着かずにそわそわとした日々を送ることになります。
本人としても、プレッシャーにさらされ続ける時間は苦しく、同じ状況にもかかわらず、楽天的に「まあ何とかなるよ」「本番勝負だよ」と構えている同僚を羨ましく思ったりもするでしょう。
しかし、内向的な人の不安になりがちな性格は言い換えれば慎重さにつながっています。
不安だからこそ、プレゼンの内容を何度も繰り返しシミュレーションして、失敗しないように万全の準備をするのではないでしょうか。
プレゼンの最中にどんな質問を受けてもいいように、あらゆるシーンを前もって想定しておくため、当日は大きなミスもなく着実に進行することができ、思いがけない質問にも対応することができたりします。
不安の強さは、実は慎重さにつながるのです。
さらに、内向的性格の人によくある「どうしてあんなことを言ってしまったのか」「なぜあの人みたいにとっさに切り返すことができないんだろう」というような、迷いのある自分を振り返る癖も、視点を変えれば強みにつながります。
ぐずぐずと自分の行動を反省し、自責の念に駆られる感受性のある人は、他者に対しても、無意識に軽率な発言をしないよう気をつけていることが多いのです。
そのため、デリカシーのない発言をうっかりしてしまい、誰かを傷つけるような事態を避けることができます。
一見その場での臨機応変なやりとりができる外向型の人を見ると羨ましく思うかもしれませんが、よく考えて発言する慎重な人だからこその長所もあるのです。
このように内向的性格な人の短所は、裏を返せば長所にもつながるというわけです。
新しい環境への順応性が良くないということはその分、「周囲にに惑わされない自分を持っている」ということにもなります。
その能力をうまく発揮することができれば、常識にとらわれないユニークな発想につながっていく可能性もあるのです。
実際に、企画力や発想力で抜きんでている人の特徴を振り返ってみると、周囲に合わせるつきあいを最優先するのではなく、自分ひとりの時間を大切にするタイプの人だったということに納得する方も多いのではないでしょうか。
人間関係の面でも、内向的性格さんは社交的な顔の広いつきあいを苦手とするからこそ、親密な深いつきあいができるという強みになります。
何かの悩みがあり、誰かに相談したいという時には、根っから社交的で、友人知人が多いタイプの人よりも、慎重で、口が堅く、本人も悩みがありそうな人のほうが心情を吐露しやすかったりします。
こうした視点から見てみると内向的性格が必ずしも悪いものではないと理解していただけるのではないでしょうか。
まとめ
本人は対人関係が苦手で口下手だと思っているかもしれませんが、社交的で弁の立つ人ではないからこそ、かえって他者にとっては居心地のいい存在になる可能性もあるのです。
内向的性格だから人とかかわる仕事は苦手だと思い込んでいるだけで、業務内容によっては意外に適性があるという可能性は否定できないのです。
何でもないことで心が疲れる人のための本 「隠れ内向」とつきあう心理学