心の不調はストレスによって引き起こされますが、社会的な変化が多いこの時期は、自分でも気づかないストレスで、気持ちが不安定になることが多いのです。
しかし最近は、食生活の改善や栄養を考えてとることで、心の不調を緩和することがわかってきています。
今回は、心の不調と食事のかかわりについてご紹介したいと思います。
職場の人間関係や長時間労働、仕事と家庭の両立などで、現代人はストレスにあふれています。
そのため心の不調を感じる人も比例して増加しており、平成29年度の厚生労働省の調査では、日本の五大疾病と言われている「糖尿病、がん、心臓病、脳卒中、精神疾患」の中で、もっとも患者数が多いのが精神疾患なのです。
心の不調は性別や年代を問わず、誰にでも起こりうることが原因の一つと考えられています。
心の不調の原因はやはりストレスがトリガーになることがおおいのですが、それだけではなく、最近では食生活や栄養が大きく関係していることが明らかになってきています。
21世紀に入ったころ、「精神栄養学」という新しい学問分野が誕生し、心の病気や精神疾患の症状は、栄養不足や栄養過多、バランスの異常と関係があるのではないかという研究が行われ、食生活改善や栄養補充療法によって治療法が開発されました。
海外では実際すでに医療現場にも取り入れられています。
先進国では、食べたいと思ったものは何でも手に入れらる状態にもかかわらず、偏った栄養バランスの人が多く、食生活も乱れがちです。
そこに運動不足や睡眠不足が重なると、ますます心の不調に拍車をかけることになります。
バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠がそろっていれば、少々ストレスを感じても跳ね返すことができますが、それができないとストレスが積み重なり、慢性的な心の不調につながっていくのです。
つまり、心の病気も生活習慣病の一つだと言えるでしょう。
特に、数年にわたるコロナ禍によって人々のストレスが明らかに増加しています。
2022年に入ってもオミクロン株の抑え込みは十分にできておらず、感染力の高い「BA.2」さらには別の変異ウイルス「XE」も徐々に広がりを見せています。
もはやゼロコロナを目指すのは不可能なようですし、コロナと共存していく道を歩んでいくとすれば、自粛生活が日常となり、対面で人と接する機会が元に戻ることはないかもしれません。
行動範囲が撤廃されたとしても、ウイルス感染の予防対策は継続されるでしょうし、ストレスを発散する手段や場所も限られたままです。
また、リモートワークが広がったことで通勤の必要はなくなりましたが、運動不足が加速して、生活サイクルや食生活も乱れやすく、さらに心の不調に陥りやすい状況になっているといえるでしょう。
心の不調を防ぐには、まずは食事を見直してみることが大切です。
特にビタミン、ミネラル、アミノ酸、食物繊維などは、心の不調に影響する栄養素と考えられています。
自分の日常の食事習慣について、次の項目をチェックしてみてください。
当てはまる項目が多いほど要注意ですよ。
加工肉やファストフード、スナック菓子、精製小麦でつくったパン、白砂糖、味付け乳飲料をよく食べたり、飲んだりする
野菜や果物をほとんど食べない
1日1食、もしくは2食しか食べない
毎日のように外食をしている
偏食または拒食である
日本人の食事が西洋化したことで、摂取カロリーが過多になり、精製や加工された食品を食べることが増えたせいで、食物繊維のほか、ビタミン、ミネラルといった栄養素が不足しやすくなっています。
例えば、ミネラルの中では鉄がもっとも不足しやすく、閉経前の生理出血のある女性の2人に1人が、体内に貯蔵されている鉄が足りないと言われています。
こうした栄養素は、心の健康とも大きくかかわっています。
アミノ酸は学習や記憶につながるドーパミン、元気を出すノルアドレナリン、気分を安定させるセロトニンなど、行動や気分に命令を与える神経伝達物質をつくるもととなります。
そのためアミノ酸が不足すると、心の不調に陥りやすくなるのです。
アミノ酸から神経伝達物質がつくられる過程では、ビタミンCや鉄、葉酸が不可欠ですし、また、ビタミンCは鉄の吸収を助け、ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰な上昇の抑制にもかかわっています。
実際、うつ病を患っている方は、そうでない方と比べると鉄欠乏貧血の割合が高く、うつ病ではなくても、鉄欠乏症貧血の人はストレス症状が高いことが明らかになっています。
また、食物繊維は整腸作用など身体の中で有用な働きをすることが注目され、第6の栄養素ともいわれています。
食物繊維には、、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があり、それぞれはたらき方が異なります。
不溶性食物繊維は、水には溶けず、水分を含んで膨らむことによって腸を刺激し、腸の動きが活発になるので、便通が良くなります。
一方、水溶性食物繊維は、ビフィズス菌などの善玉菌のエサとなって発酵・分解され、腸に有用な物質などをつくり出すことで、腸内環境が良くなります。
腸内の善玉菌が多いと消化管と脳をつなぐ迷走神経さ刺激されて、ストレス反応がやわらぐことがわかっています。
●タ……タンパク質(アミノ酸)
●シ……食物繊維、ビタミンC
●テ……鉄分
●ヨ……葉酸
ポジティブ・フードを摂るには、「地中海式食事」や「健康的日本食」がおすすめです。
「地中海式食事」とは、野菜、果物、種実類、豆類、魚介類、オリーブ油、穀類を多く摂り、適量の赤ワインを飲む、その名のとおり地中海沿岸の伝統的な食事法です。
一方、「健康的日本食」には「野菜や果物、大豆製品、きのこ類、緑茶」が含まれます。
毎日の食事で野菜や果物をしっかり摂るのは難しいものですが、果物を食べる人は年々減少しており、2002年から2019年の17年間で、日本人の年間の世帯あたり果物消費量は約3割も減っています。
なかでも20~40代の果物の消費量が特に低いことがわかっています。
果物にはビタミンやミネラルが豊富に含まれています。
なかでも身近な果物の中で、栄養素充足率※がもっとも高いのがキウイフルーツです。
キウイフルーツはグリーンキウイ、ゴールドキウイともに、鉄を吸収するビタミンC、葉酸、たんぱく質(アミノ酸)を分解する「アクチニジン」、食物繊維などが含まれており、ゴールドキウイは1個で厚生労働省が推奨する1日のビタミンC摂取量を摂ることができます。
さらに、海外の研究ですが、若い成人男性にキウイフルーツを1日2個、6週間与えたところ、気分障害や疲労が減少し、活力が増加したという研究結果も出ています。
キウイフルーツはもっとも効率的に栄養を摂取できる「ポジティブ・フード」のひとつといえるでしょう。
また、キウイフルーツは皮ごと半分に切ってスプーンですくって食べられるので、手軽に食事に取り入れることができるのも魅力です。
まとめ
また、日中は運動の時間を少しだけでもつくって、できる限り早寝早起きを意識すること。
そうすることで狂っていた体内時計が徐々に整ってきます。
さらにキウイフルーツをはじめとした「ポジティブ・フード」と規則正しい生活を並行して続けることで、日々のストレスを跳ね飛ばし、心を健やかに保つ意識が芽生えてくるはずです。
心の病を治す 食事・運動・睡眠の整え方