一方で、そこまで秀でた能力を持たなくとも、いかなる企業でも通用し、必要とされる人材もいます。
このような経営者や経営幹部が、絶対に手放したくないと考える人材の共通点とはいったい何なのでしょうか。
今回は、マーケティングコンサルタントの酒井光雄氏著書 『まんがで覚えるマーケティングの基本~人の心をつかむサイエンス』 から、組織が必要とする能力について触れていこうと思います。
人工知能(AI)の進化とともに、企業はあえて人間がする必要のない業務は、費用対効果が高く、より効率化を図れる方法に順次舵を切っています。
近い将来においては、そのような業務に就いている人たちが賃上げを要求すればするほど、企業はコストダウンができて効率のよい、「人を使わない方法」を導入していくことになるでしょう。
企業に勤める立場の人間なら、やはり可能な限り給料の高いところを選んで働き、労働を提供する対価として給料をもらえたら…と考えます。
しかしこういう人は、もらうお金以上の仕事はしないものなのです。
一昔前には工場に多くの労働者がいた自動車や電機産業ですが、すでにだいぶ前から自動化が進み、そこで働く人の数は大幅に減少しました。
近年、時代の移り変わりとともにこの流れが他産業にも急速に拡大しています。
その先陣を切っているのが食品・医薬品・化粧品業界です。
こうした業界では大量生産だけでなく少量多品種にも工場における生産工程の自動化を図るシステムやロボットが活用され、省人化を実現しています。
人手不足に苦慮している日本では、長時間労働問題やサービス残業問題を抱え、また、海外生産においても中国などでは人件費が高騰していることもあり、無駄を押さた自動化への取り組みが求められています。
そこで人を省き、つまりシステムやロボットを導入することで業務効率化を図ろうとしているのです。
しかし、いかに技術が進歩し人工知能(AI)やロボットが人間の仕事に置き換えられても、企業が欲しい人材、手放したくない人材は必ず存在し、置き換えられることはありません。
その人材の共通点は、いることで「企業に利益」を産み出し、その「利益を見える化」できることです。
組織では部下が上司を選ぶことはできませんが、だからといって、上司の不満や非難をしているだけでは周囲からの評価は下がり、自身の向上もありません。
上司の不満や非難をしている暇があるなら、昇進して自分が上司の立場になったときに、部下から信頼され、上司以上に仕事ができる人材になれるように備え、仕事に取り組む姿勢の見える人材は手放したくはないでしょう。
Ⅱ.企業に利益をもたらす人
決まりきった単純な業務(作業)は、ロボットやAIの方が向いています。
人間はミスをする生き物で、どんな作業でも、間違い(ヒューマンエラー)が起こる可能性はあります。
マニュアル化でき、誰にでもできる単純作業は、ロボットやAIに置き換えられやすいのです。
その一方で、企業に利益をもたらす新しい価値のある仕事を生み出して、結果を出す人材を、会社は絶対に手放さないでしょうし、他社にヘッドハンティングされないよう厚遇するものなのです。
営業部門の人材は成果が数字を通じて見えるため、多くの場合報酬は成果に連動しています。
内勤業務の人も自分の仕事の成果を数字で見える化すれば、それなりの評価と処遇が受けられると考えられます。
たとえば、
・人事担当 → 企業に収益をもたらす人材を採用できる仕組みを考え出し、その仕組みを運用する者
・マーケティング担当 → ヒット商品を生み出し、同時にロングセラー商品の価値を磨き上げて、さらに売上げを伸ばせる者
・システム担当 → 人を使わず商品やサービスをオンラインストアで販売し、顧客のデータベースをつくりながら継続購入に結びつける新規チャネルをつくって運用できる者
・経理、財務担当 → 会社の隠れた無駄を見つけ、そこで浮いた費用を投資に回して運用し、利益を生み出せる者
・仕入担当 → 新たな仕入システムを考え出し、痛みを伴わずに経費を削減する仕組みを運用できる者
・広報担当 → 広告や広報の効果を最大限発揮できる仕事ができ、有能な人材を入社希望者にできる者
・総務担当 → 社員のメンタルストレスを軽減し、働きやすい職場を実現することで、社会保険料の支払い額を軽減する者
このような仕事ができる人材なら、成果を数字で見える化できるので、会社が手放せない人材になれると考えられます。
Ⅲ.部下を育成できる人
能力の高い人は一人で何でもできるため、チームで動くことはなく自己完結で仕事をするため、部下が育たないことが多いようです。
こういう人が部下を持ったら、自分で容易にできる仕事は部下に任せ、自分はより高度な仕事に取り組むようにするのが得策です。
部下に仕事を放り投げるのでなく、部下の成長を見守りながら自己実現に繋がるように支援できる人は組織の人材として価値が高いのです。
Ⅳ.将来の社会体系を踏まえ、自分の仕事を進化できる人
ビジネスに大きな影響を及ぼす将来の社会体系を踏まえ、先んじた仕事に取り組み、自身の能力を高めていける人なら、その人の仕事は輝きを失いません。
ビジネスパーソンは、人口知能(AI)の台頭や社会インフラの変化、ネットメディアのさらなる普及、キャッシュレス化など、社会的な環境の変化に伴う新しい情報を絶えず入手する必要があります。
将来の変化に備えて自分の仕事を高度化させていける人材なら、経営者はずっと厚遇し続けるでしょう。
Ⅴ.プロフェッショナルな営業経験を持った人
広告販促担当者やコピーライター、マーケティング担当者、サイト制作者、映像制作者といった専門職の人たちは、意外に第一線で営業活動をしたことがない人が多く見られます。
こうした人たちは新規顧客の開拓や、既存顧客との関係を深める取り組み、店頭などの現場で商品やサービスの販売などをした経験がないため、皮膚感としての営業センスを備えていません。
なので理論上は上手くいくように見えても、いざ実施してみると成果を上げられないことがあります。
理論やノウハウを学んでいても、顧客心理を理解できない人から顧客は購入してくれませんし、大事にもされません。
その点で実際に顧客と接し、販売の皮膚感を備えている専門職なら、商いの本質を理解して、リアル、バーチャルにこだわらず顧客の心情と行動を踏まえた実効性のある取り組みを生みだせます。
Ⅵ.企業ブランドに依存しない人
「企業規模が大きい」「知名度がある」「業績がいい」「安定している」「給与が高い」「待遇がいい」「潰れない」といった企業のブランド基準で入社した人材は、先人がつくった付加価値やブランド資源に寄りかかって作業に従事するため、自ら新たな価値を生み出そうという意欲が希薄です。
「会社の看板」や「名刺の力」に依存する人は、企業の業績が悪くなったり待遇が下がると、すぐに転職を考え始めます。
そうではなく、自社のブランド力向上につながる仕事に日ごろから取り組み、仮に業績が芳しくなくなれば、自分の力で何とか経営を上向かせようとあらゆる手を尽くそうとする人材を企業は必要としているのです。
終身雇用が崩壊し、厳しくなる労働環境の中、40代以上のホワイトカラーこそ、AIやロボットに取って代わられないスキルを絶えず磨き、将来に備えて仕事に取り組むことが大切でしょう。
それが現状のスキルアップはもとより、定年後に別の仕事に就く時にも選択肢を広げることになります。
まとめ
6タイプのどれに自分を当てはめて努力するのかはその人次第ですが、この人は手放したくないと思われるスキルがひとつでもあれば、今だけでなく将来定年後にも有効になるはずです。
『まんがで覚えるマーケティングの基本』