老後の生活を考えると、貯蓄と年金だけで足りるのかと心配になりませんか。
2025年4月からは、定年制を採用しているすべての企業において65歳定年制が義務となり、定年後の再雇用が増えたり、「60歳で退職する」のはあたりまえではなくなってきます。
そのような中で「自分は何歳まで働けばいいの?」という悩みや「働けるなら働きたいけど何歳まで働けるのだろう?」という考えが浮かんできても不思議ではありません。
では、世の中の女性たちはどのように考えているのでしょう。
今回は国が行った統計調査をもとに、「リアルな女性のキャリア」について迫ってみたいと思います。
現在、働いている女性たちは何歳まで働きたいと考えているのでしょうか。
Q.何歳まで働きたいと思っていますか?
結果を見てみると、最も多い回答は「働ける限りずっと働きたい」で22.0%。続いて、「60~65歳」が17.3%、「34歳以下」が12.7%、「35~39歳」が11.6%となっています。
最も多かった「働ける限りずっと働きたい」という少し曖昧な回答には、女性特有のキャリアの悩みが深く関係していると考えられるでしょう。
女性には、人生のキャリアの中で自分の意思とは別の原因で働けなくなることが数多くあります。
たとえば、体力や時間の問題で仕事と子育ての両立が難しいこと、そして産休(産前・産後休業)、育休(育児休業)明けの復職環境の変化、年齢を重ねると親の介護などがあげられます。
そういった未来を意識しながら、日頃から働いている方にとっては、「働ける限りずっと働きたい」という回答を選ぶのは、ごく自然な気持ちの表れと言えるかもしれません。
また、2番目に多かった「60~65歳」は、いわゆる定年を区切りに仕事から離れるということです。
17.3%という数字は、案外少ないと感じるかもしれませんが、「働ける限りずっと働きたい」と考えている方の中には生涯現役も視野に入れている方もいるかもしれません。
「66歳以上」という回答も1.7%ほどいるので、“定年まで・定年以降も働きたい”と思っている方は調査結果の割合以上いることでしょう。
また、「34歳以下」「35~39歳」の回答については、結婚や出産、子育てを機に仕事をやめて家庭に入ると考えているものと思われます。
では、結婚・出産後も働き続けたいと思う方はどのくらいいるのでしょうか。
Q.出産後も働き続けたいと思いますか?
「働きたいと思わない」という回答は9.8%で、最も多かったのが「フルタイムで働きたいと思う」(44.5%)、ついで「パートタイムなど、フルタイム以外で働きたいと思う」(38.7%)という結果になりました。
これら2つの回答を合わせると、その割合は83.2%にのぼり、8割を超える方が出産後もなんらかの形で働きたいと思っていることがわかります。
働き続けたい理由は様々で、「子育てや将来のためにお金を稼ぎたい」「社会との繋がりを持っておきたい」などお金や生きがいに関する意見が多く見られました。
しかし、女性は自分が働きたいという意思とは別の、結婚や出産、育児休業等の仕事を継続できない理由が数多くあります。
出産後も働き続けるうえで、不安なことや難しさを感じることに対する質問には、不安のおもなものとしては、やはり「仕事と育児の両立」があげられました。
男性の育児参加が声高に言われるようになった現在でも、社会全体にはまだまだ育児を担当するのは女性という根深い意識があり、女性側が育児と仕事との兼ね合いを調整しなければならない場面が多いことを、女性自身が周辺からしばしば見聞きしているため、このような不安が出やすいのでしょう。
また、具体的に自分が今働いている仕事についての質問も行いました。
Q.出産後も働き続ける場合、今の仕事をずっと続けられそうですか?
回答の3割以上(36%)が「続けられないと思う」「わからない」という結果になりました。
出産後も働きたいと考えている方が8割超であることを踏まえると、働きたいと思っていても、今の仕事は続けられないかもしれない、と思っている方が多いことがわかります。
厚生労働省が発表しているデータ「令和元年働く女性の実情」によると、年代別の女性の就業率は以下のとおりです。
〈図〉年代別の女性の就業率
図からわかるのは、多くの方が働き始める「25~29歳」の就業率が最も高く85.1%。その後、「30~34歳」、「35~39歳」で一度70%台まで下がり、40歳からはまた回復していることです。
30代の就業率が下がる原因としては、やはり結婚や出産が関係していると考えられます。
第一子を出産する女性の平均年齢が30.7歳で、この年齢を考えると、出産後に一度仕事から離れている方が一定数いるのです。
厚生労働省「令和元年(2019年)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より
実際、内閣府 男女共同参画局「「共同参画」2019年5月号」では、出産前から就業していた方が仕事を続ける割合(育休利用あり・なし含む)は53.1%となっており、決して高い数字ではありません。
また、定年を迎える「60~64歳」の女性の就業率は約60%です。
意識調査の結果を考えると、定年まで働く女性は意外に多いと感じるのではないでしょうか。
就業率については独身か配偶者がいる状態かによっても大きく変わります。
特に20~30代を見てみると独身と配偶者がいる場合の就業率は15~20ポイントも差があります。
結婚や出産のタイミングが就業率に関係していることは明らかですね。
〈図〉年代別の女性の就業率(独身、配偶者有り)
なお、この統計の就業率は正規雇用、非正規雇用すべてが含まれたものです。
女性全体の就業率が40歳以降から回復しているとはいえ、正規雇用・非正規雇用の内訳は気になるところでしょう。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が発表しているデータによると、正規雇用の割合は「25~34歳」が63.0%で最も多く、35歳以降は非正規雇用の割合がだんだん高くなっています。
〈図〉年代別の女性の正規雇用、非正規雇用の割合
これらを踏まえると、出産などで一度離職した場合、再就職は非正規雇用でしている女性も多いことがわかります。
正規雇用と非正規雇用を比べると、多くの場合は正規雇用のほうが給料が高く、非正規雇用は労働時間が短いという特徴があります。
育児と両立させるために、時間の融通がきく非正規雇用での働き方へチェンジしたけれど、収入が減ってしまったというのはよくきく話です。
女性は、このようなキャリアの変化が生じる可能性も念頭におきながら、ライフプランを立てていく必要があるのかもしれません。
社会人としてのキャリアが上がるにつれて給料もアップしていくだろう、という漠然とした展望では、将来の自分が苦しむことになりかねません。
自分の意思以外に起こる様々な可能性も考慮して、将来への準備をすることが重要になってきます。
そこで、今のうちから、将来おばあちゃんになった自分のためにできる準備についてご紹介したいと思います。
若いうちからやっておきたい5つのコト
1.再就職しやすくなるようなスキルを身につけておく
30代の後半から、非正規雇用が増えることは先ほど説明しましたが、これは子育てなどのブランク期間を経たあと、多くの方が再就職に苦労している正規雇用ではなく非正規雇用で仕事に就くこと影響しています。
あえて非正規雇用を選択している、という意見もありますが、即戦力となるようなスキルを持っていれば、同じ条件で正規雇用となることができたり、非正規雇用でも比較的給料の高い仕事に就くことができる可能性が高くなります。
具体的には、マーケターやエンジニア、デザイナーなどの専門職は、年齢に関係なく求人が豊富です。
2.できるだけブランク期間をつくらないようにする
再就職を少しでもしやすくするためには、ブランク期間をできるだけつくらないようにすることです。
ブランク期間が長くなってしまうと、即戦力としては採用されづらいキャリアとなってしまうからです。
産休や育休期間の休職はどうしようもありませんが、子育てが落ち着いたタイミングで、できるだけ早く社会との繋がりを再構築するようにしましょう。
また、ブランク期間が長引く場合、将来もらえる厚生年金の金額にも関わってくるので、この点も覚えておくといいでしょう。
3.結婚しても、経済的に自立できるようにしておく
女性の中には結婚後は家庭に入り、パートナーの収入のみで生活している方も少なくありません。
しかし、自分の生活を100%他者にゆだねる状態は危険です。
厚生労働省の「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」データによると、日本の離婚率は約36%。3組に1組は離婚しているのが現状です。
離婚でなく、突然に死別しなければならない可能性もあります。
考えたくはありませんが、もし将来離婚したり、死別した場合でも、自分の収入できちんと生活できるようにしておくことが重要です。
4.資産運用について勉強しておく
年齢を重ねるにつれて、自分の体力・時間では稼げる収入に限界がある、と感じる方も多くなると思います。
労働で稼ぐことが難しくなったあとでも安定した収入を得るためには、資産運用も一つの手となります。
安定した資産運用を行うためには、ある程度の時間が必要なので、「お金が足りない」という状況になるまえに、できるだけ若いうちから勉強しておくことをおすすめします。
5.余裕のあるうちにプランを立てる
一番大切なのは、これらを押さえたうえで、将来についてのキャリアプラン、ライフプランを立てることです。
いくら準備を万端にしても、計画がないと実行するのが難しくなるからです。
じっくりと将来について考えながらプランを立てることが重要です。
できれば、子育てなどがはじまっていない、精神的に余裕のある時期にプランを立てるようにしましょう。
ライフプランを立てる時に気をつけたいポイント
1.結婚や出産などの自分のライフイベントを想定しておく
女性は結婚や出産などのライフイベントをきっかけに、働き方や生活スタイルがガラリと変わってしまいます。
そういったタイミングは、キャリアやお金についても大きな変化が起こりがちです。
プランを立てる際にはこれらの転機をきちんと想定して組み込んでおきましょう。
2.プランを複数用意しておく
様々な転機がある分、その時どういった選択をするかで人生が大きく変わることもあるでしょう。
「結婚して今の仕事をやめる」「子どもを2人産む」「正社員ではなく、パートとして働く」など、その選択により、準備した計画が崩れてしまうこともあるかもしれません。
そういった時のために、プランは複数用意しておくことがおすすめです。
特に、考えられる中で最低限のラインを決めて、プランを考えておくと、何かあった時の想像がしやすくなります。
3.自分の中の優先順位を決める
「仕事と家庭」このふたつを同時に考えなければいけない場面が発生すると、女性にとっては悩む部分が多くあります。
計画を立てる時でも、何か決断をする時でも、自分が仕事や収入を優先したいのか、それとも家庭を優先したいのかを考えながら行動をするようにしましょう。
その時の自分の状況にもよると思いますが、自分の優先事項を決めることで、働き方をはじめ、暮らし方についても、何をするべきなのかが見えてくるはずです。
まとめ
結婚してからも共働きをする夫婦が増えていますが、出産や子育てを経てからも働き続ける女性も当たり前の存在になっています。
できる限り長く働きたいと思っていても、その時まで身体が動いてくれるのか健康でいられるかどうかどうかは別問題です。 おばあちゃんになったとき、人生を振り返って後悔しないためにも、キャリアプランと将来設計について今から真剣に考えてみるのがよいかもしれません。