会社員にとって「定年延長」と「年金の繰り下げ」はセットで考えなければならない問題です。
年金を何歳から受給するかで、受け取る総額が大きく変わってくるのはご存じでしょうか。
公的年金の受給開始が65歳からになるのに合わせて、企業には65歳までの雇用機会の確保が努力義務とされました。
2022年年4月には年金法が改正されますが、それによって何が変わるでしょうか。
人生100年時代、先を見据えた計算が必要なようです。
そこで今回は、年金の受給開始時期について考えてみたいと思います。





65歳受給開始を70歳に遅らせると42%増額になる


公的年金(厚生年金)の標準的な受給開始年齢は65歳ですが、受け取るタイミングは自分で選ぶことができます。

60〜64歳で早めに受け取ることを「繰り上げ受給」、66〜70歳で遅めに受け取ることを「繰り下げ受給」といいます。

また、2022年4月からは繰り下げ受給の上限が75歳まで延長されることになっています。

雇用が実質的に70歳まで延びる中、ミドル・シニアの会社員が受け取る年金について、マスコミに取り上げられる機会が増えています。

まず、繰り下げ受給では、受け取りを65歳から1カ月遅らせるごとに、0.7%ずつ年金額が増えます。
70歳まで遅らせると総額で42%増、75歳まで遅らせると84%もの増額になるのです。

一方、繰り上げ受給を選ぶと、早く受け取るメリットはありますが、年金額は減ってしまいます。
現状では1カ月早く受け取るごとに0.5%ずつ減額され(2022年4月からは減額率は0.4%に縮小されます)、増減率は生涯固定されるので慎重に選びたいところですね。

この増減率に加え、2022年4月以降は、繰り上げ・繰り下げの損益分岐年齢についても、見ておく必要があると思われます。
もし受け取りを60歳まで繰り上げると、年金は65歳開始と比べて24%減、受取総額は80歳未満で65歳開始に追い付かれ、その後に差は広がっていきます。

63歳で受け取ると、年金は9.6%減、総額は83歳未満で追い越されてしまいます。

ただ、繰り下げだけが得になるとは限りません。

ご自身の寿命も考えなければならないからです。

67歳まで繰り下げると、年金は65歳開始と比べ16.8%増、総額は78歳以上で65歳開始を上回ります。

70歳で受け取ると42%増で、65歳開始時の場合とトントンになる損益分岐年齢は81歳以上です。

75歳で受け取ると84%増だが、損益分岐点は86歳以上になり、それ以上生きなければ損をしてしまうことになります。

日本人の平均寿命を見てみると、2020年時点で、女性が87.74歳、男性が81.64歳です。
寿命はまだまだ延びる余地があるといわれているので、特に女性は繰り下げ受給を選んだほうが有利に受け取れる可能性が高いようです。





税金や社会保険料が気になるが…

年金には税金や社会保険料がかかります。
住民税や社会保険料は、65歳以上で年18万円以上の公的年金を受け取れば、原則天引きされる仕組みです。

所得税は、65歳未満で108万円超、65歳以上で158万円超の公的年金を受け取ると、収入が公的年金のみの場合は源泉徴収されます。

繰り下げによって公的年金が増えると、天引きされる税や社会保険料も増えることになります。

ただ、年金が増えたほうが、結果的に手元に残るお金も増えますし、繰り下げた期間は年金を受け取っていないので、関連する税や保険料も発生しません。
税や保険料の負担を考えすぎてし、繰り下げをためらう必要はないのです。

例えば、住宅ローンなどがまだ残っていたり、日々の家計が赤字になったりする場合は、年金を繰り上げて受給する選択肢もありです。

反対に、資産があって家計に余裕があれば、あえて数年は貯金などの取り崩しだけで暮らし、繰り下げ受給による年金増額で将来の経済的余裕を確保する、という方法も考えられます。

かつてより寿命が延びたことによって、高齢期の過ごし方も多様になりつつあり、65歳で年金受給スタートというイメージはいったん忘れて、それぞれのライフスタイルに合わせて、受け取る時期を見直すとよいのではないでしょうか。

また、昨今の雇用延長ムードで60代になっても働き続ける人が増える中、「在職老齢年金」の仕組みについても知っておきたいところ。
「在職老齢年金」とは、定年を過ぎても働いている場合、給与と年金の合計が毎月一定額を超えると、年金が減額されたり、支給されなくなくなったりする制度です。

特別支給の老齢厚生年金を受け取る会社員を対象に、この支給停止の上限額が引き上げられます。

現在、60〜64歳の人については、給与と年金の合計が月28万円、65歳以上の人は47万円を超えると上限の対象になっていますが、2022年4月からは60〜64歳の上限も47万円へと引き上げられるのです。
つまり、月47万円までは年金と給与をもらっても制約がなくなります。

2022年度の在職老齢年金の受給者のうち、ほぼ半数の37万人が減額の対象になっていますが、この改正によって、減額対象者は11万人まで絞られると試算され、恩恵を受ける人が増えると思われます。

ただし、厚生年金の受給開始年齢が、改正で段階的に65歳へ引き上げられています。
1961年4月2日以降(男性)に生まれた人は、受給開始が65歳に設定されているため、そもそも60〜64歳で年金を受け取ることはできないのです。
また1957年4月1日以前に生まれた人は、改正時点で65歳以上になるため、対象になりません。

具体的に関係してくるのは、2022年4月以降に60〜64歳で特別支給の厚生年金を受給できる、1957年4月2日から1961年4月1日までに生まれた男性と、1957年4月2日から1966年4月1日に生まれた女性になります。





65歳の会社員が対象の「在職定時改定」にも注意

現在、厚生年金は長く加入するほど年金が増えますが、65歳以降に働く期間の年金を再計算していません。
退職して1カ月過ぎるか、70歳になった時点で、まとめて再計算して上乗せする仕組みになっているからです。
要は保険料は毎月天引きされているけれど、年金額は据え置きという状態になっているのです。

これが2022年4月以降、毎年1回再計算して上積みする、在職定時改定という仕組みに変わります。
在職中でも年金の改定が行われ、額が年々増えていくことになります。
厚生年金の増額のタイミングが早まることで家計に余裕が生まれ、国民年金を繰り下げる選択肢が生まれる可能性も考えられます。

改定によっていつからいくら増えるのかは条件が少々複雑です。
毎年9月1日時点で厚生年金に加入していれば、前年9月からその年の8月までの増加分を計算し、10月分(12月支給)から増額が始まります。

2022年4月の改正時に65歳を過ぎている場合は、それまでの上積みはまとめて行われます。
例えば、改正時で68歳になる人は、「65歳以降の増額3年分」と「68歳の4〜8月まで5カ月分」が、2023年10月分から上乗せになります。

1年分の増額をざっくり計算するには、年収に0.55%をかけてみると目安になります。

年収が約240万円(標準報酬月額20万円)なら、1年間働くと約1万3000円。年収360万円(同30万円)で1年働けば、約2万円が年金に上乗せされると考えるとよいでしょう。
少ない金額に見えますが、この増額は生涯続くので、大きなメリットがあると言えます。

2022年に行われる改正にはほかにも「アルバイト・パートに対する厚生年金の適用範囲の拡大」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)加入条件の要件緩和」などがあり、これらの改正は、どれも長くなった高齢期に対応するためのものと考えてよいでしょう。




まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。

公的年金は、なかなかメリットを感じにくいものです。
働いている間は保険料は天引きされますし、いざ受給をはじめても生活費で日々使ってしまい、実感する機会が少ないように思われます。
しかし、仮に世帯の年金が月20万円とすれば、20年間で4800万円、30年間で7200万円の給付を受けることになるので、決して少ない金額ではないのです。

もしも年金制度がなければ、自分で用意しなくてはなりません。
準備できなかった場合は、75歳以降の後期高齢者になっても働き続けるか、貧困に近い生活で我慢する生活をおくることになります。
確かに保険料の負担は軽くなですが、老後を支える大事な仕組みのひとつとして、繰り下げ受給など、できるだけ年金を増やしておくと、人生の保険として役立つことは間違いないでしょう。

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筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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