コロナ禍以前の2019年に行われた調査ですが、介護経験者からのリアルな声を集計したデータであり、昨今の介護実態を知るためにもご紹介したいと思います。
主に介護生活の実態と金銭面に関することを、インターネットを通じて回答してもらいました。
アンケートを実施したのは介護資格学校「日本総合福祉アカデミー」を運営する民間企業、株式会社ガネット。
アンケート結果から浮かび上がってきたのは、介護をしている人たちにのしかかっている負担が非常に大きいという点です。
驚くのは回答者の5人に1人が複数の人を介護する「多重介護」を経験していること。
さらに、ほとんどの人が「介護は心身の負担になった」と感じていたのです。
こうした状況を軽減するために介護サービスが存在するはずなのですが、施設やサービスの利用率は高いものの、給付金制度などについてはまだ認知度が低いという結果となりました。
それでは、個々の具体的な質問についてくわしく見ていきましょう。
まず、介護離職に関する意識と実態調査として、「介護をすることになったとき、会社に相談しますか。またはしましたか。」という質問に対しては以下の回答となりました。
図1「介護をすることになったとき、会社に相談しますか。またはしましたか。」株式会社 ガネット調べ
会社に相談する人は、約4人に1人の割合だという回答になりました。
実際に介護する側になると、一人で奮闘するには限界があります。
家族の協力、会社の協力、行政や民間サポートの協力など、使えるものは総動員してあたらなければ抱えきれるものではありません。
会社に相談しても、仕事の質や量はそれ以前とかわらないかもしれませんが、上長の耳に入れておくだけでも対応が違ってくる可能性があります。
次に「最大で、同時に何人の介護をしていますか、またはしていましたか」という質問への答えをまとめたものが、以下のグラフです。
図2「最大で、同時に何人の介護をしていますか、またはしていましたか」株式会社 ガネット調べ
回答で最も多かったのは「1人」(77.3%)。
一方で、2人以上を同時に介護していた人は22.7%にのぼり、これは5人に1人が、2人以上を同時に介護していたことになります。
中には4人以上という過酷な状況の人も複数みられました。
介護が発生すると、介護保険の申請、デイサービスなどへの送迎、介護食作り、入浴やトイレなど多くの作業が必要となります。
私も母の介護の経験をしましたが、家族や外部サービスの協力があっての介護でも体力的精神的な負担は想像を超えるものでした。
同時に複数人の介護を行う場合の負担を考えると、その負担の大きさは想像想像を絶するものでしょう。
介護にかかる費用もかなりの額になると考えられます。
平成30年度に生命保険文化センターがまとめた「生命保険に関する全国実態調査」では、介護の平均期間である54.5か月で介護費用を算出すると、1人あたりの総額は約500万円となります。
要介護の家族が複数いれば、作業だけでなく費用も人数分だけ増えていくことになるのです。
実際、「介護をしている中で、身体的・精神的にどのくらい負担を感じましたか」という質問には、8割の人が「負担を感じている」という回答がありました。
図3「介護をしている中で、身体的・精神的にどのくらい負担を感じましたか」株式会社 ガネット調べ
さらに、「介護の際に感じる不安」についての質問には、「自分の健康状態が悪化するかもしれない不安」(43.0%)、「介護と仕事の両立ができるか不安」(41.8%)、「資金などの準備ができるか不安」(38.0%)という回答結果(複数回答)となり、不安を抱えながら介護をしている人の多さが改めて浮き彫りになっています。
また、自身の介護状況を『○○介護』という言葉で表すと、どのようになるかという質問に対しては「ストレス介護」「疲労介護」「疲弊介護」といった、ネガティブな表現が多く見受けられ、介護する側の辛い状況を物語っています。
そういったサービスをどれくらい利用されているかの調査も行われました。
「介護サービスで知っているものを全て選んでください」「実際に利用したことがある、利用する予定があるものを全て選んでください」という2つの質問(複数回答)に対する回答は以下の通りです。
図4「介護サービスで知っているものを全て選んでください」、「実際に利用したことがある、利用する予定があるものを全て選んでください」(単位%)株式会社 ガネット調べ
多く認知されている介護サービスは「デイサービス」、「ショートステイ」、「訪問介護」などです。
施設関係では「老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」といったものは、ほとんどの方は知っておられるようです。
しかし「費用負担緩和の助成金」、「介護休業給付金」といった、資金面のサービスについては認知度が3〜4割と低い傾向にあります。
利用率も低く、「費用負担を緩和する助成金」は9.7%、「介護休暇給付金」にいたってはわずか2.4%しかありませんでした。
また、「ご家族の介護にあたり、外部のサポートやサービス(在宅介護、訪問介護、老人ホームなど)を利用してもよいと思いますか」という質問には、介護者の約97%が外部の介護サポート、サービスを利用したいと回答しました。
図5「ご家族の介護にあたり、外部のサポートやサービス(在宅介護、訪問介護、老人ホームなど)を利用してもよいと思いますか」(単位%)株式会社 ガネット調べ
仕事との両立や家計の負担減のためにも、様々な制度の利用は役立つはずなのですが、ほとんどの方が外部のサポートやサービスを利用したいと考えているにもかかわらず、そのサービス自体が必要な人に周知されていないというのが現状のようです。
介護される側になったときのための貯蓄に関する質問には、約6割が「自分の老後に向けて貯蓄をしている」と回答がありました。
貯蓄額についての回答は以下の通りです。
図6「どのくらい貯蓄していますか、またはしていましたか」株式会社 ガネット調べ
2000万円以上と回答した人が約3割もいた結果について、同社では「多くの介護経験者が介護の不安として資金面の不安を挙げていたことから、自身の将来に向けて貯蓄をしている人が多い傾向にあるといえそう」と分析しています。
まとめ
今回ご紹介したデータで、介護経験者の意識と実態が見えてきました。
介護の必要が迫られた時でも、会社に相談しない人が約8割もいるなか、介護によるストレスや疲労などを抱えていても、介護者の思いはなかなか外部に伝えることができない現状であることがわかります。
多重介護と介護疲れ、費用の問題など、超高齢社会の日本の介護の現状は、まだまだ課題が山積みのようです。
【調査概要】
介護に関するアンケート調査
・調査方法 :インターネットアンケート
・調査実施機関 :アンとケイト
・調査実施期間 :2019年10月1日〜10月11日
・対象地域 :全国
・対象者 :40代〜70代以上の男女(616人)
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