そんな時に頼れるのが心理カウンセラーのカウンセリングです。
専門家に自分が抱えている悩みを話すことで気持ちがラクになり、プロのカウンセラーからは内容がうっかりと誰かに漏れてしまうこともありません。
ところが、中にはカウンセリングを受けても効果が出ない「かくれ繊細さん」と呼ばれる人もいます。
今回は、時田ひさ子氏の著書『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』から、このようなかくれ繊細さんが生きやすくなるために必要な気づきについて紐解いていきたいと思います。
取り違えてしまいそうになるのは、カウンセラーは、クライエントが抱える問題解決のためのお手伝いはしますが、カウンセラーが答えを教えてくれるわけではないということです。
遠回りをしないで、さっさと答えを教えてくれたらいいのに、なぜ教えてくれないのか、と思われるかもしれませんが、カウンセリングはクライエントがカウンセラーから答えを聞いてそれに倣うのではなく、ご自身がどう感じるのかを知ることが、心が楽になることにつながっているからです。
クライエントが新しい見地や新たな着眼点を得るために、カウンセラーは気づきを促進する働きかけをします。
その働きかけの一環として、ワークをやってみたり、お話を傾聴したりします。
「傾聴」というのは、ご相談者の話されることをよく聴く、ということですが、ただ漫然と聞いているわけではありません。
クライエントに新たな気づきをもってもらうためにはどのように聴いたら良いのかを知った上で相槌を打ちながら聴きます。
傾聴は、カウンセラーがクライエントの解決に必要な情報を得るためのお話しを伺う段階で、その後の気づきのための準備だと言えます。
カウンセリングを受けて楽になる理由は、話すことによって、クライエントの脳内でぐるぐるモヤモヤしていた考えが整理されるからです。
ただ話すだけなのに?と思うかもしれませんが、人に聞いてもらうには、脳内のぐるぐるモヤモヤしたものを言葉に置き換えなければなりません。
言葉に置き換えずに漠然としたイメージのままでは、カウンセラーに伝えることができないからです。
無理にでも言葉に置き換えることで、それまで漠然ともやもやしていた思いや考えが、具体的な言葉になって自分の外に出ていくわけです。
たとえば、脳内で思っていたことを人に話してみたら、すごく深刻だったことが笑い話のようにちっぽけだった、という経験はありませんか?
または、反対に自分では大したことではないと思っていたのに、その出来事を人に話していたら、計らずも泣きたくなったことはないでしょうか。
または、喧嘩して「お前のことなんか嫌いだ」と思ってぷんぷん腹を立てていたけど、実際にそう言ったら「嫌いだ、けど、だからもっとわかってほしかっただけなんだよ」と、自分の中に嫌いとは別の気持ちがくっついていたことに気づくなんてこともあるものです。
頭の中で思っていただけのときと、具体的に言葉にして口に出してみたときに違う感じがすることは誰もが経験しているのです。
いつもそうなるわけではないにしても、時々そのような違いを感じたりすることはあるものです。
言語化には、そうした自分の考えや気持ちに改めて気づいたり、別の角度から物事が見られるようになったりするという効果があります。
しかし言語にすればなんでもよいというわけではありません。
「適切な言語」への置き換えができないと、それほど効果を感じられないからです。
そして、言語化によってうまく気づけるように、カウンセラーはサポートしながら働きかけているのです。
また、言語化にはもう一つ別の効果があります。
カウンセリングを受けると楽になるのは、カウンセラーに目の前で話を聞いてもらうことによって、ひとりでは言葉にせずに悶々としていたことを頑張って言語化し、伝えるという行為を通じて、クライエント自身の脳内が整理されるからなのです。
目の前にいるカウンセラーが「適切な言語化」を促し、効果があがるようにサポートしているので、話しながら「ああ、そういうことだったのか」と気づかれるかと思います。
クライエントの本心とぴったり合った言葉が外に出ると、カタルシスが起こり感情が昇華されます。
カタルシスとは心の中に沈んでいた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されることで、感情の浄化などという言い方をする場合もあります。
これが気持ちがすっきりする、という感覚です。
カウンセリングを受けても効果が出ない人には、生きづらさを解消できない人との共通する思考があるのですが、なんだと思いますか?
それは、「それ、知ってる」という思考なのです。
カウンセリングを、「心についての知識を得る目的」で利用すると、「それ、知っているので大丈夫」と、知識を確認したことで目的を達成したような気持ちになってしまうのです。
その場合、心そのものはすっきりしていないので効果を感じられないのです。
これは、ご相談者が「知識を得たらゴール」という癖を持っている方のよくある思い込みです。
感じ取るのではなく、知識としてインプットすることがその方の成功パターンなので、いつもそれをやってしまいます。
カウンセラーに質問して答えを引き出し、それで満足してしまうのです。
そういう方は往々にして、
「自分は自分のことがわかっている」
と思っている人です。
カウンセラーという専門的な知識を持っている人のところに、自分の抱えるモヤモヤの理由を聞きに行って解消してもらえばいいんでしょ、と思っているのです。
なので、カウンセリングに行っても、ご自身のこれまでの成功パターンである「知識の収集」を続けるので、自分自身の詭弁に惑わされます。
知識の収集以外の方法を知らないため、その根本の誤解を解消することに、まず取りかからなければなりません。
まずはこのポイントを押さえて、自分は知識をつければなんとかなると思っていたが実はそうではない、ということを理解した上でカウンセリングを受けると、より早く理解が深まり、感情を扱えるようになっていくと思われます。
かくれ繊細さんは、物心つく前から他人の顔色を読み取り、相手に合わせて生きてきた方々なので、特に「自分自身がどう感じているのか?」を知ることがカウンセリングの最重要ポイントになります。
他人がどう思うかを読み取るのは簡単にできるのに、肝心の自分自身がどう感じているのかは、改めて意識を向けないとわからないのです。
カウンセリングを受けるときは、ぜひ自分自身の本音はどうなのかという点に注目してご自身を客観的に観察してみてください。
そして、可能であればその点について具体的に言葉にして聞いてもらい、カウンセラーと共有すると良い方向に向かうのではないでしょうか。
まとめ
かくれ繊細さんの感情の起伏は激しく、時には暴れ馬のような気性を持っているため、自分の感情を持て余し、どうにか扱えるようになりたいと考えている方が多いのではないかと思います。
天国を作り出すのも地獄を作り出すのも自分の心ひとつです。
時には強い意思が必要になるかもしれませんが、ハッピーになる選択をして心を天国にすることはあなたにしかできないことです。
この記事が自分の本音を感じることに不器用なかくれ繊細さんが生きやすくなるために少しでもヒントになれば幸いです。
『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』