安田正氏のコミュニケーションをテーマにした著作を読んで感じたのは、本来ならもっと評価を受けてもいい人やもっとレベルの高い仕事ができる人が、もったいない話し方をしているがために、正当な評価を受けずに苦労を強いられてしまうことがよくあるということです。
今回は『超一流の雑談力』『武器になる話し方』の2冊から、会話のスキルアップにつながるヒントをご紹介したいと思います。
実は会話をするなかで、話し手以上に影響力を持っているのは聞き手のほうなのです。
会話が盛り上がるか、盛り下がるかは、聞き手しだいで決まると言っても過言ではありません。
つまり、会話の主役は聞き手だということを明確に覚えておくことが大切です。
会話において、「自分の話をちゃんと受けとめてもらっている」という勇気やモチベーションを話し手に与えるのは「聞き手」です。
聞き手の誘導次第で、単純に話が盛り上がるだけではなく、より核心に迫った話ができ、有意義なコミュニケーションをとることが可能になります。
核心に迫った有意義な聞き方=「武器になる聞き方」を発揮するためには、相手が驚くくらいのレベルでいい反応をすることと、いい質問をすることが肝になってきます。
1.「そこまで聞いていてくれたんだ!」と相手を驚かせる反応→「オウム返し」
2.「そこまで理解してくれているんだ!」と相手を驚かせるほどの質問→「整理オウム返し」
「オウム返し」と「整理オウム返し」
では、話している人が驚く反応とは、どういうものでしょうか?
ぜひ追求していただきたいのは、相手にとても関心がある、という強いサインになる「そこまで聞いてくれていたんだ!」という驚きです。
そのために使いたい技術が「オウム返し」です。
オウム返しは、相手の言ったことをそのまま返すという会話の基本的なテクニックで、例えば、
A「最近引っ越ししたんですよ」
B「え、引っ越しされたんですか?」
という具合に、キーワードを反芻し、話を聞いているという意思表示をしつつ、会話のバトンを相手に渡す技術です。
そして、この技をさらに一つレベルアップさせたものが、「整理オウム返し」です。
整理オウム返しは、キーワードだけを返すのではなく、相手の言葉と一字一句同じ言葉を使って反応することで、例えば、
・「3年前の夏に新潟県上越市に行ったとおっしゃっていましたが、そのときにもたしか視察で行かれたのですよね」
・「先ほど、最初8%の食塩水で、それから5%で最後には3%の食塩水を入れることにした、とおっしゃっていましたが……」
といったように、相手の話を整理するためのオウム返しになります。
この整理オウム返しによって、相手の話を尊重し、熱心に受け止めているという態度が伝わり、「そこまで聞いてくれていたんだ!」「よくそこまで覚えてたね!」といった感動につながります。
複雑で専門的な話などでは、このステップを踏むことで本当に自分が話の内容を理解できているかの確認にもなるので一石二鳥です。
もちろん、これは相手の話をしっかり聞いていないとできないことなのですが、「ここぞ」という場面でこのような反応ができると、一気に信頼感を高めるきっかけになります。
ぜひ、話している人の感動が倍増しになる、「整理オウム返し」を身に着けてください。
これを知っているのと知っていないのでは、コミュニケーションの結果は大きく違ってくるはずです。
「さ」さすがですね
「し」しらなかったです
「す」素敵ですね
「せ」センスがいいですね
「そ」それはすごいですね
話し手は相手の相槌の打ち方で、興味を持って自分の話をちゃんと来てくれているのかどうかの判断材料にします。
中途半端に「はぁ」「ふぅん」と相槌を打っていると、自分の話に興味がないんだなと判断されて会話を切り上げられてしまうことになりかねません。
もうひとつ大切なのは、相槌の後に会話の流れを切らないようにすることです。
話し手の会話の一部を引き取り、
「今の話で思い出したのですが…」
「お話を伺っていて、お力になれると思ったのですが…」
「実は私どもも同じことを考えておりまして…」
など、聞き手から話し手へパートチェンジをして、相手を気持ちよくさせながら会話を途切れないようにします。
もし、意見が食い違ったら
「うかつでした!そういった見方もありますね。ありがとうございます、新しい発見をさせていただきました。」
と相手の気持ちを逆なでせずに親近感を前に出すようにしましょう。
会話スキルは、誰でもトレーニング可能であり、鍛えれば鍛えるほど効果が出ます。
スポーツと同じで、始めはウォーミングアップから始め、徐々に本格的なトレーニングに移ればよいのです。
どこかで「この話、いつまで続くんだろう」と思ったりして、上の空になってしまう瞬間があるものです。
どうしてそうなるのかというと、9割以上の人が「自分の言いたいこと」をそのまま話してしまっていることに原因があります。
すべての会話に言えることですが、どんな時でも、誰が相手であっても心がけなければいけないのは、「自分の言いたいことを相手の聞きたいこと」にすることです。
それは、いつも相手に合わせて自分が話したいことを話してはいけないということではありません。
相手が興味のない話を、どう聞いてもらうか?
ということなのです。
そのコツとして覚えておくとよいのが、自分の話を聞いて、聞き手に何をもたらすのか、何が得になるのかということを明確にするということです。
自分の話が聞き手にとってどういうメリットがあるのかを考え、その上で「話のメリット」を事前予告します。
なぜその話をするのか? という事前予告をすることによって、聞き手の心構えがガラッと変わってくるのです。
メリットをしることで相手に聞く目的さえ生まれれば、興味のないテーマであっても耳を傾けてくれるようになります。
・「今からお伝えする話は、実は、みなさんやお子さんの将来にとても関係してくる問題なんです」
・「起業した人が絶対にぶつかる壁があるんです」
・「経理の仕事をする人には、絶対に知っておいてほしいことなんですけれど」
なお、このテクニックは、セミナーや講演会などの大舞台でなくても、なんてことのない会話でも同様に使うことができます。
「(出されたコーヒーをいただきながら)ああ、美味しいコーヒーですね。先日のテレビで美味しいコーヒーのいれ方というのをやっていまして、ふつうにいれるよりも3倍美味しくなるとか……」
といったような形で、「へぇ〜」と興味をひくような事前予告を行ってみてください。すると、聞いている人が「上の空」や「噛み合わない」ということが少なくなってきます。
まとめ
私たちは、家族間やビジネスで、毎日何かしらの会話をしています。
同じ会話をするのであれば、「自分の言いたいこと」=「相手の聞きたいこと」にして、相手が興味を持って引き込まれるようにしない手はありません。
話をする理由を「メリット事前予告」して、「相手が聞きたい話」にすることができること、あなたの会話が今までの何倍もの武器になることでしょう。