目の前になるやらなければならないことのために集中力を上げるにはどうすればいいのでしょうか。
作業療法士の菅原洋平さんによると、指サックをつけるといいのだそう。
触覚などの感覚をつかさどる脳の『後方連合野』が指サックによって刺激され、余計な考えごとをしてしまう『前方連合野』の働きが抑えられることで集中できるようになるのだとか。
今回は、菅原洋平著書『「できない自分」を脳から変える行動大全』(扶桑社BOOKS)から、仕事中に入りこんでくる雑念を取り払い集中できるようになるヒントをお伝えしていきます。
【キーワード】
上頭頂小葉
ワーキングメモリ
【こうやって集中】
両足の裏を地面につける
作業する姿勢と脳の集中力は密接に関係しています。
仕事に集中できないときは、頬杖をついたり、脚を組んだり、椅子に浅く腰かけて背もたれに寄りかかったり(仙骨座り)…、といった姿勢になっていませんか?
このような姿勢で作業していると、体の中心部の筋肉の活動が低下して、脳の覚醒度が減っていきます。
そんなときは、下のイラストを参考に姿勢をリセットしてみましょう。
姿勢が崩れるとボーッとするだけでなく、無駄な情報に気をとられて神経が散漫になりやすくなります。
脳の「上頭頂小葉」という部位は、姿勢と作業の正確性に関連しており、姿勢が崩れると「ワーキングメモリ」(ストックした情報をつなぎ合わせて効果的に使う能力)が働かなくなってしまうのです。
姿勢を正すことで脳の覚醒度が高まることを覚えておきましょう。
1.両足の裏を地面につける
2.両肩を耳につけるように肩をすくめ、その肩を後ろに引いてストンッと落とす(そこが本来の肩の位置)
3.肛門を締めて、肩をおしりに向けて引き下げ5秒キープ
※1.〜3.を3回繰り返す
【応用編】
○厚めのひざかけをかける
○作業中は脚を組まない
○30分に1回姿勢を正す
2.始めたはいいものの、「そういえばあれも…」と気が散る
【キーワード】
後方連合野
前方連合野
【こうやって集中】
指サックをつける
ほかの考えごとをしてしまい集中できない場合は、指サックをつけて、脳に新鮮な触覚情報を届けましょう。
たったそれだけで、普段よりもはかどるような気持ちになれます。
触覚をつかさどる脳の「後方連合野」が指サックによって刺激され、ぐるぐるといくつものほかの考えごとをしてしまう「前方連合野」の働きを抑制してくれます。
指サックの作用と同じようなものとして、筆圧を感じやすい柔らかい下敷きを使ったり、ノートやペンを書き心地のいいものに替えることでも、触覚や手の筋肉の感覚を増強できておすすめです。
触覚は外受容感覚のなかでは唯一塞ぐことのできない感覚なのです。
人との会話に集中できない、文章が理解しづらい、相手に対して否定的な感情が湧く、などといった場合は、着ている服の素材やフィット感が悪く、体や脳が不快感を感じている可能性もあります。
肌に直接触れる下着を快適なものに取り換えるだけで、改善することもあるのです。
触覚を刺激すると雑念をカットできることを覚えておきましょう。
【応用編】
○ノートやペンを書き心地のいいものに替える
○下着を快適なものに取り換える
3.パソコンで書類を見ていたはずが、ネットサーフィンに
【キーワード】
デフォルト・モードネットワーク
※デフォルト・モードネットワークとは?
ボーッとしていると怠けているという印象を抱きがちですが、実は脳にとって大切な時間なのです。
何もしていない時間に脳内では、デフォルト・モードネットワークという神経回路が働いて「まとめモード」のように情報処理が行われています。
ここで情報がまとめられ、一見、関連がなさそうな情報が結びつくとひらめきを生み出してくれます。
ボーッとしたり、単純作業をしている時間や、友人とたわいもない話をしているとき、一瞬ですがまばたきをしているときもデフォルト・モードネットワークに切り替わります。
考えごとに行き詰まって息抜きをしたら突然アイデアがひらめいたりするのはデフォルト・モードネットワークのおかげなのです。
【こうやって集中】
書類は画面でなく紙で読む
オフィスで働く人を対象にした調査では、パソコンなどのディスプレイを見るよりも紙のほうが没頭しやすく文章が読みやすい、という結果が出ています。
要因として、紙の作業は両手で複数の文書を同時に処理できたり、操作位置への視線移動がいらないという点や、集中を乱すツールバーなどの刺激がないことが挙げられています。
もうひとつ考えられるのは、ディスプレイでの作業ではまばたきが減り、脳内で情報処理を行う「デフォルト・モードネットワーク」が機能しづらいという点が挙げられます。
まばたきは一瞬ですが、脳内では情報をまとめる重要な役割があるのです。
ディスプレイから紙に変えるだけで集中できることを覚えておきましょう。
ポイントはまばたきです。
時間が守れない人は、「まだ時間がある」と、スキマ時間に部屋の片づけなどの終わりのない作業を始めてしまいがちです。
ゴールが見えない作業は、情報量が多くなります。
情報量が多いと、脳は時間がゆっくり進む錯覚を起こします。
しかし、実際の時間の流れは変わらないので、気がついたときは思った以上に時間が過ぎているという事態になるのです。
一方で、時間が守れる人は、「メールを1通送る」といったように、ゴールが明確な作業を選択しています。
このように、スキマ時間ができたときにはゴールの見える作業を選べば、簡単に時間の超過を防ぐことができるのです。
スキマ時間に部屋の片づけを始めるのはやめましょう。
ゴールを見定めて「終わりの見える作業」だけやることを心がけることです。
まとめ
あなたの「できない」には、全部科学的な理由で改善されます。
やる気や努力、根性といった精神論ではなく、脳の仕組みを活用した科学的なアプローチで、できる自分に変われることがわかっていただければと思います。
「できない自分」を脳から変える行動大全