やりたいことを見つけて生きていきたいという思いは、一方で、やりたくないことはとことん回避して生きていきたいたいとも言い換えられるでしょう。
結果は同じでも「○○したい」というポジティブな思いよりも「○○したくない」というネガティブな思いの方が実はずっと強いのではないでしょうか。
例えば何かの勝負をする時には、「勝ちたい」と思うよりも「負けたくない」と思いが強くなりがちではないですか?
ポジティブは大切だけれど、やはりネガティブな気持ちは根強いものです。
今回はネガティブな思いを抑え込まずに、それを原動力に変えるヒントを探ってみます。
それはある意味本当だということを納得しつつも、この世の中が陰と陽、光と影でできていると捉えるのなら、片方ばかりを良しとするのはおかしいのでは?とは言えないでしょうか。
ネガティブな感情も、存在するからには何かしらの意味があるはずです。
何でもポジティブに考えよう!ポジティブになれよ!前向きに考えろよ!と言われても、いつもそうできたら苦労はしません。
わかっていても簡単にはできないのですから。
そういう人は、周りの人間のように無理にポジティブになろうとするのはやめたほうがよいのだと思います。
むしろ、ネガティブな感情になるに任せて、その感情をどうするのかを考えた方がよいのではないでしょうか。
1つ例を挙げてみます。
サラリーマンのAさんの会社には本当に嫌な上司がいました。
Aさんは、いつも嫌な気持ちで仕事をしています。
いくら友達に愚痴ってもスッキリしません。
自己啓発本を読み「もっと前向きに考えないと」と思うのですが、うまくいきません。
ある日、Aさんはこれ以上この会社にいるのは無理だと思い、転職を決意しました。
転職はうまくいき、新しい職場で上司にも恵まれて今は生き生きと仕事をしています。
さて、上記のAさんが転職する行動をとれたのは、Aさんがポジティブだったからでしょうか?
そうではありませんね。
Aさんは自己啓発本を読んだりしてポジティブになろうとしてもなれなかったのですから。
Aさんはネガティブな感情を貯めに貯めた結果、ある日その感情が爆発し、転職という具体的な行動をする原動力になったわけです。
ネガティブな感情はすべて悪いものではなく、役に立つときもあるのです。
むしろネガティブな感情が原動力となっている時の方が、強い気持ちや行動をを生み出すかもしれません。
中途半端にネガティブをポジティブに転換しようとするよりは、ネガティブを極めて突き抜けたほうがいい場合もあると思います。
そこから新しい世界につながる可能性だってあるからです。
ネガティブはポジティブと同様にあなたの大事な感情のひとつだということなのです。
例えば「お金持ちになりたい」と望んでも、どのくらいお金持ちになりたいのか、お金を何に使うのかというところは、漠然としていることが多いものです。
反対にはっきりしているのは、「お金に困る生活はしたくない」という気持ちですよね。
また、ただ「健康でいたい」という思いは、はっきりとしたイメージにはなりにくいかもしれませんが、「病気で寝たきりにはなりたくない」と考えれば、そうなりたくはないと誰もが思い、意識して体を動かしたりより健康的な食生活に変えられると思いませんか?
ものごとを前向きに捉える「ポジティブ」思考は、自分の気持ちを盛り立てながらやる気にさせるためには大きな効果がありますが、一方でネガティブな考えは、嫌なことを避けたい時に発揮される底力のようなパワーがあります。
将来の夢や理想を持って前進することは大切なことですが、「自分にはこれしかない!」というものが見つからず探している途中だという人にとっては、なかなかどう進んでいけばよいのかがわからないことも多いでしょう。
一方、日々の不満や「〜したくない」という思いは多かれ少なかれ誰もが持っているものです。
発想を切り替えて自分の将来に向けて、ネガティブな思考のほうにこそフォーカスをあてることも一案だと思います。
ネガティブな思いはなかなか大きな声で語りにくいものなので、自分の心の中にだけ秘めていることが多いでしょう。
そんなときには、自分だけの秘密のノートに心の思いを書き出してみましょう。
「こんな暮らしはしたくない」「こんな働き方は嫌だ」など、あなたが「〜したくない」ことを書き出したあとに、その為にはどうすればいいのか、何をしなければならないのかという具体策も併せて考えます。
例えば「満員電車で通勤するのは嫌だ」と書いたとしましょう。
ならば、徒歩や自転車で通うことはできるのか、引越しはどうか、そもそも会社勤めではなく独立したらどうかなど、満員電車を避けるための計画が色々と書き出せるはずです。
「〜したくない」という思いを具体的に書いていくと、〜しないためにどう行動するべきかという具体的にパワーを向けるところが見えてきませんか?
満員電車に乗りたくないと思いながら嫌々乗り続けるのではなく、それを避ける為に動くことができそうに思えてくるのではないでしょうか。
やりたいことをやろうとするパワーよりも、やりたくないことをやらずに済ませるためのパワーの方が自分の思いにフォーカスでき、自分の中に眠っていた大いなるパワーを呼び起こすことになります。
自分のこれからについて、「何をしたいんだろう」と漠然と探すのではなく、「何をしたくないんだろう」と探っていくと、思いもしなかった道が開けるのかもしれませんよ。
楽観的にとらえるということは、良くも悪くも細部には目がいかないので、少々無計画なところがあります。
遊びや旅行の場合なら行き当たりばったりのなかに楽しみを見出せることも出来るのですが、これが仕事となると全般に渡って「まぁー、大丈夫でしょ」「なんとかなるでしょ」では結構困ることになります。
例えば、プレゼンの前や会議の前にこの言葉を連発しがちな人は慎重さに欠けることが多く、当日になって次々と問題を誘発します。
問題が発覚した後でもポジティブ思考の人に「この問題点に事前に気が付かなかったのか?なぜ準備できなかったのか」と問いただしても、返ってくる答えは「なんとかなると思っていました」です。
こういう思考の人は、何とかなると思っていたことが何ともならなかった場合でも、あまり気にしません。
気にしないということは、裏を返せばすぐに忘れてしまうということです。
気にしないことは悪いことではありませんが、こういった態度は時として都合の悪いことから目を背けて自分を守ることになります。
「気にしない、気にしない、ポジティブ思考でいこう!」という常に前向きな気持ちが行き過ぎると、前回の教訓がすっかり抜け落ちて、悪びれもせずにまた同じようなミスを繰り返してしまうのです。
その結果、自分自身が何度も不快で悔しい思いをするだけでなく、周囲からのマイナス評価にもつながりやすくなります。
「前にも言ったのに」「何度言えばわかるんだ」と思われ、信頼を失う原因の1つとなってしまいます。
だからといって、すべてをネガティブ思考で考えることが正義なのではありません。
ネガティブ思考がすぎると、モチベーションの低下を招いたり、自分のネガティブな心にばかり目が向いてメンタルがむしばまれて心身ともに支障をきたすこともあるからです。
嫌なことを経験したり言われた時には、腹を立てる前に、もしくは腹が立ってもひと呼吸おいて、「何故このようなことが起こったのか」を考えます。
そして今の状況や自分や相手の置かれている立場を俯瞰して眺めることができると、しだいに心が落ち着いてきます。
例えば、「最近上司の機嫌が悪く、自分に対する風当たりが強いのはなぜなのだろう?」と感じたときは、心当たりのない場合は自分が原因でなかったとしても相手がカッカしていることもあると考えることです。
相手が感情を逆なでる家庭事情を抱えていたり、別プロジェクトでのトラブルが関わっているかもしれません。
まったく何もないのに、ただ怒っている人はまずいないので、そういった様々な状況的な原因が見えてくると、自分に向けられる上司の不機嫌をうまく割り切れたり、対処を変えることができたりして、仕事がスムーズにやりやすくなります。
まずはあの人は苦手で嫌いだ、生理的に受け付けない、といったネガティブな思考に飲まれる前に、焦点を「人から状況へ」変えてみてください。
何か行動しないといけない時には、ネガティブ思考の人は不安にとらわれ過ぎてモチベーションがなかなか上がらず動き出すことができません。
行動力の源泉はモチベーションですが、ポジティブ思考の人はモチベーションの高い人が多いので、「慎重で行動に二の足を踏むネガティブ思考×モチベーションが高いけど楽観的なポジティブ思考」を組み合わせると、「慎重な行動派」が出来上がります。
この「慎重な行動派」を生み出すために、ぜひ下記の言葉をおまじないように唱えてみてください。
「やらないよりマシだ」
「ダメ元でやってみよう」
「やってみなくちゃ分からない」
ネガティブ思考の特性上、結局はある程度の準備を整えて動き出す人が多いので、思ったより悪い結果にならなかったり、仮に失敗しても「今のうちに経験しておいてよかった」ということもあるので、ネガティブ×ポジティブは良い思考だと思います。
まとめ
具体的な前向きな課題や目標がなくても、「〜したくない」という避けたい思いをひとつひとつ実現させていくことで心穏やかな毎日が過ごせるのなら、それもまた幸せな未来への選択肢に繋がるのではないでしょうか。
自分はネガティブ思考だから…という負の思いを抑え込まずに、ポジティブ思考とミキシングして表に引き出してみることを考えてみませんか?
ネガティブな感情が成功を呼ぶ