思っていることを伝えようとしても言葉がまだ十分には話せないため、うまく自分の気持ちを伝えられず、泣いたり怒ったり身体全身の身振り手振りで表現しようとします。
子どもの主張を大切にしたい、自主性を育んでいきたいと思っている親御さんが、どこまで子どもの要求に従うのかを決めることは案外難しいものです。
親の方がまいってしまい、ついつい子どもの要求を聞いてしまう方も多いかと思いますが、反面、わかままな子になってしまったら…と心配している方もいらっしゃるでしょう。
今回は、なぜイヤイヤ期があるのか、また我が子がイヤイヤ期に入ったときの対応のポイントについてご紹介していきたいと思います。
「魔の2歳児」という表現が使われることもあり、自我が芽生えてママやパパの言われるとおり、されるままだった状態から自立しようとする一歩を踏み出している状態とも言えます。
一般的には、3歳頃になると落ち着いてきて、4歳になる頃には終わっていたというパターンが多いようです。
もちろん子どもによって個人差があるのですが、基本的には自分の思った本能のままにやりたいことへ向かって一直線な行動をとります。
自分一人で洋服を着たがって、ボタンが思うように留められずイライラしてギャーギャー泣きだしたり、ズボンを前後ろ逆にはいてしまっても、親の手を借りることは絶対に拒否したり。
ほかにもオムツを替えるのを嫌がったり、ご飯を食べない、お風呂に入りたくないなど、日常のことすべてがイヤイヤになってしまう子どももいます。
外遊びに出掛けようとしても、ベビーカーや自転車に乗ることへの拒否から始まり、出発が遅くなり、やっと公園についたと思ったら、順番を守らずにわれ先に滑り台やブランコを独り占めしてルールを守らなかったり、買い物に行けばおもちゃがほしい、お菓子を買ってと泣きわめいたり…。
コロナ禍でしばらく生活が家の中に閉じこもりがちでしたが、家にいても外に出てもイヤイヤ期の子どもと一緒に過ごしていると、体力的にも精神的にも限界までストレスを感じることが増えるものです。
それがまさしく「魔の2歳児」と言われる所以ですが、実は子どものイヤイヤ期は他人との関わりや自分の感情の表現・抑制方法を学んだり、失敗しつつも身の回りのことが自分でできるようになったりしながら、動物的・本能的だった赤ちゃんが、人間らしくなる成長過程としてとても重要なのです。
例えば、赤ちゃんが景色に飽きて、寝返りしたいー!と泣くのも広義ではイヤイヤに含まれ、それが激化するのが2歳前後のため、「2歳=イヤイヤ期のはじまり」が定着しているようなのです。
この時期は、身体も脳もぐんぐん成長し、いろいろなことをスポンジのように吸収していく時ですが、自分と他人という存在を認識していないため、相手にも自分と同じように感情があることを理解できていません。
イヤイヤをして反抗的な態度や言動を繰り返し、相手の反応を見て確認しながら少しずつ学んでいる時期なので、子どもが順調に育っているあかしともいえるのです。
ただ、このままだとわがままな子に育ってしまうのではないか、協調性のない自分勝手な子になってしまうのではないかと不安を覚える親御さんもあるかもしれません。
しかし、イヤイヤ期の甘えを周囲が受け止めることで自己肯定感が高まり、子どもが自信を持つことができるとも言われています。
自分に自信がつくと失敗を恐れず積極的にチャレンジし、仮にダメだったとしてもまた立ち上がって挑戦することができるようになります。
なぜイヤイヤ期がおこるかと言うと、家庭環境や育て方の違いといったことではなく、子どもの『脳』の理性的な部分をつかさどる前頭前野が発達途中にあるため、不快な感覚に引っ張られやすくなり、自分の思い通りにならないときには、気持ちの抑制や表現がうまくできないため、欲求不満や癇癪を起しやすくなるのです。
むしろ相手の気持ちを理解できない、空気が読めないのが当然の時期だとも言えます。
でも、本能だけで行動できるのは今だけです。
3歳ごろを過ぎると前頭前野の機能が発達し、自分の気持ちをコントロールし始めるので、何でもかんでもイヤイヤをしている時は、子どもの脳が成長していることを実感できる時期だ!と割り切って考えるようにしましょう。
子どものネガティブな気持ちを否定したり、見ないようにせずに、ネガティブな気持ちこそ共感しましょう。
子どもは共感されると早く落ち着きます。
子どもが考えていることを代わりにに言葉にして「〇〇が欲しいの?」「〇〇がイヤだったの?」と聞いてみましょう。
子どもの場合、共感せずに別のもので気を逸らそうとすると、「分かってもらえていないから、もっと伝えなきゃ」と癇癪が激しくなるかもしれません。
嫌な気持ちをどんな風に嫌なのか口に出さなかったとしても、周囲が想像して代わりに言葉にしてあげることが大切です。
気持ちを代弁することで感情発達が進み、「モヤモヤとした不快な感情を言ってもいいんだ」「こういう気持ちがあるのはおかしくないんだ」と安心することができます。
2.選択肢を与える
できる範囲で子どもに選択肢を与えて選ばせてあげましょう。
お着換えの時に「白と黄色の服どっちを着たい?」とか「赤い靴と青い靴どっちを履いて行く?」などと子どもに選択肢を与えると、それまで、「着替えるのイヤ〜!!」と泣いていた子どもがスムーズに行動に移してくれる場合があります。
ただし、毎回成功するわけではないので、もし「どっちもイヤ!」と言われてしまったら、「じゃあ、時計の針が1番下に来たら着替えよう」と少し時間をおいて再度チャレンジするのも1つの手です。
この時に大事なのが、あいまいに「またあとで」などと表現するのではなく、「時計の針が1番下に来たら」や「歯みがきが終わったら」のように明確なゴールを設定することです。 「いつからやるのか」が、子どもに伝わりやすくなります。
3.子どもが泣くことを恐れない
子どもを泣かせちゃいけない、泣きだしたら早く泣き止ませなきゃ、と焦りすぎないことです。
子どもは適度に泣いてスッキリしたら自然に泣き止むものです。
大人でも、悲しい映画を観てわーっと泣いてスッキリするように、泣いて発散することも必要な時があります。
泣いている子どもを見守りながら、周囲が安全か、近くに危険なものがないかを確認した上で、癇癪がある程度落ち着いてきたら共感的な声掛けをしましょう。
癇癪を起こすことは親の対応が悪いわけではなく、子どもが発達していく上で自然な流れであり、親が相手なら大丈夫だと感じているからこそ癇癪を起こすのです。
4.親の考え癖に気づく
私たち大人はそれぞれ何かを考えるとき、つい同じパターンで考えてしまう考え癖があるものです。
子どもが泣いている状態に対して「責められている感じがする」「否定されているような感じがする」「他人から子育てがちゃんとできていないと思われるのではないか」などとあるパターンで考えてしまい、子どもの癇癪に耐えられなくなっていませんか。
親の考えの癖によって、子どもに泣かれて「イライラする」「怖い」「不安」など不快な気持ちが強くなると、子どもに共感的に対応する余裕がなくなり、無理やり泣かせるのをやめさせようとして逆効果になってしまいます。
自分の考え癖が働いていないか意識してみましょう。
5.子どもの気をそらせる
子どもは思うようにいかない状況にイライラして自分の気持ちを自分でコントロールできません。
そういう時はできるだけ、その場の状況から気をそらしてみましょう。
親がタイミングを見て、抱き上げたり優しい言葉をかけて「見て!ハトがいるよ!」と外に意識を向けたり、別の提案をすると落ち着くことがあります。
大人でもイライラした時に、一旦その場から離れて外の空気を吸ったり、軽く体を動かしたりすると気分転換になりますよね。
子どもは親から気持ちを調整してもらった経験を積み重ねることで、自分自身で気持ちを調整できるように成長していきます。
6.親自身の気持ちをコントロールする
イヤイヤ期を乗り越える一番の手立ては、親自身が自分の気持ちをコントロールすることです。
非常につらく長いように感じるイヤイヤ期も必ず終わりを迎えます。
イヤイヤ期の間、親自身が上手にストレス解消をしながら気長に付き合っていけるといいのですが、仮に今までの関わり方を失敗したと感じたとしても、過去は振り返らず、これからできることに目を向けましょう。
大人が対応の仕方を変えると子どもは驚くほど変化します。
もちろんやり方を変えた直後は、今までと違う反応に、一時的にイヤイヤがさらに強くなることもがあるかもしれません。
しかし子どもの気持ちに共感して、きちんと向き合って辛抱強く関わることで、時間とともに落ち着いていくと思います。
まとめ
今回ご紹介した対応ポイントも、お子さんによっては効果があったり、なかったりと様々だと思います。
親が怒ったり、叱ったりするほど余計に泣きわめいたり叫んだりするのでほんとにクタクタになりますよね。
子どもが癇癪を起して「イヤー!」と叫んだら、たまには一緒になって「ママもイヤー!」と泣き叫んじゃってください。
終わりは必ず来ますから、適度にストレスを発散しつつ乗り越えていきましょう。
イヤイヤ期専門保育士が答える 子どものイヤイヤ こんなときどうする? 100のヒント