マウンティングとは、自分の優位性を誇示するような言動のことで、相手を見下す行為全般を指します。
本来は、サルなどが「優位個体が劣位個体に対して行なう馬乗り行動」の意味ですが、これを人間のコミュニケーションに転用したのが、現在のマウンティングなのです。
マウンティングをしかけてくる人「マウンター」としてわかりやすい例を挙げるとすれば、ドラえもんに出てくるスネ夫でしょうか。
スネ夫はお金持ちのお坊ちゃんなので、その言動は所有しているモノや知識、ステータスをひけらかすことで「こちらのほうが上だぞ」と示威する、典型的なマウンターです。
スネ夫のように露骨ではなくても、さりげなくマウンティングをする人は、どんな職場にいるかもしれませんね。
こちらが対抗する気がなくても、仕事で成果をあげている人ほど、そうした感情をぶつけられることは多いでしょう。
今回は、なにかと対抗心の強い面倒な人「マウンター」の対処法をご紹介したいと思います。




マウンターの特徴

マウンターは、性別や年齢に限らず私たちの周りには必ず一定数います。
具体的に例をあげると、同じ部課のメンバーが上司に呼ばれ、「取引先の担当者が君のことをほめてたよ。」などといわれているのが耳に入ると、自分が低い評価を受けたわけでもないのに、急に不機嫌になってふさぎこんでしまいます。

同僚が大きな案件を受注してきて、みんなから祝福の言葉をかけられているときでも、「たいした額でもないじゃないか」などとひとり言のように嫌みを口走ったり、同僚がノルマを達成し、部内で「よかったな」「すごいじゃないか」と声をかけられているそばで、露骨に不機嫌なオーラを漂わせて黙りこんだりするのです。

誰でも同僚や部下が手柄を立てると、うらやましい気持ちと同時にちょっとは妬ましい思いに駆られるかもしれませんが、普通は、そんな自分の気持ちを抑えて祝福の言葉をかけるものです。
しかし、このような人物は、自分が妬ましいと思っていることを露骨に言葉や表情に表します。

何かと対抗心が強すぎるタイプの典型的な反応ですが、やたらと妬んだり、拗ねたり、嫌みをいったりする人物が身近にいるのは、どうにも面倒くさいものです。
このような人物は、良かれと思ってしたアドバイスに対しても反発して不機嫌になったりするので、親切心が通じないというよりは、仇となってかえってくる危険性もあるため、アドバイスした側からすれば、「やってられない」ということになります。

さらに、このような人物に特徴的なのは異常な「比較意識」の強さです。
比較意識は誰にでもあり、自分の現状が満足のいく段階であるのかがわからないときには周囲の皆はどうなのだろうか、と気になるものです。

例えば、自分と比べて同年代の人たちの平均年収がかなり高いと不満が募り、平均並みならこんなものだろうと納得し、かなり下回っていれば満足する、という具合です。
他人と比較して自分の現状を確認して評価するのは、多かれ少なかれ誰もがやっていることですが、このような人物は、その比較意識が異常に強いため、仲間が仕事で成果をだすと、自分が失敗したかのように落ちこみ、仲間が上司からホメられると、自分が叱られたかのようなショックを受けるのです。

仲間が評価されることが、自分が評価されないことと同じ意味としてとらえてしまうのです。
このように比較意識が強すぎると、仕事でうまくいった仲間が祝福されることで、自分の評価が下がるわけでもないのに、評価を維持しようとする力学が働き、思わず仲間をこき下ろすようなことを口走ってしまうのです。

このような人物は、同じ社内で同年配だとしても、他部署や職種の違う人が成果をだしたときはダメージを受けることはありません。
似たような立場で、年齢の近い人物、職場であれば身近な同じ部署の同僚が比較対象になりやすいのです。

ターゲットの対象者と自分をつねに比較し、優位に立っていることを示したいがゆえに、対象者の成功は大きな脅威となり、頭のなかに「勝者と敗者」の図式が刻まれているこのような人物にとっては、その枠組みのなかでは自分が勝者でなければ気がすまないといった心理が働いてしまうのです。




健全なライバル心との違い

マウンターの心理としては、常に自分の存在に優越感を感じたいと考えていて、それを他人に認めてもらうために活動しています。
特に自分とレベルの近い相手に対して優越感を感じたいところがあります。

自分より格段にレベルが低い相手には興味がなく、わざわざマウントを仕掛けるための時間を使うことはほとんどしません。
逆に相手が自分に悪い印象を持たないように務めることもあるかと思います。
レベルが格段に違えば、まったく相手にしない/されないのです。

なので、このようなマウンターのターゲットになり対抗心に火がつくと、とんでもなくややこしいことになります。
こっちには、競争する気も争う気もまったくないにもかかわらず、むこうが勝手に闘争心を燃やしてあの手この手で引きずりおろそうとしてくるからです。

ただ、同じように比較意識が強く、こちらをライバル視していても、自分で必死に頑張って力をつけて這いあがろうとする人物はマウンターではないので、なんの問題もありません。
そのような人物は、ライバルとしての対抗心を燃やしても、悪口をいったり、嫌みをいったりすることはなく、純粋に向上心が強く、むしろ健全な比較意識をもつ人物なので、決して面倒くさい人の部類には入らないでしょう。

問題なのは、比較意識が同じように強いとしても、頑張って自分が這いあがろうと努力するのではなく、相手を引きずりおろそうとするタイプです。

自分が相手より上位になるために、自分が這いあがる方法をとるのか、相手を引きずりおろす方法をとるのかで、生き方は正反対になるのです。





マウンターに対する5つのトリセツ

このように他人に対して自分の優位を誇示するマウンティングをやられた相手は、もやもやとイヤな気持ちになってしまいます。

職場などでのマウンティングの系列をあげてみます。

1.ステータス系
社会的ステータスに関するもの。学歴や年収、人間関係などに関するアピールです。

高学歴アピール
高年収アピール
職業・職歴の自慢
「仕事デキる」アピール
モテる自慢
恋人・家族・知人の自慢
居住地の自慢、など


2.モノ系
高価な持ち物を見せびらかしたり、旅行や豪遊を自慢したり、物質的・金銭的な豊かさをアピールするものです。
ちなみに、高年収アピールは「自分はこんなにお金持ちだぞ」というモノ系と、「こんなにお金を稼げる社会的地位があるんだぞ」というステータス系の両面をもつマウンティングだと言えるでしょう。

高級品の自慢
高級店の自慢
その他の持ち物自慢
旅行や豪遊の自慢
高年収アピール、など


3.知識系
聞いてもいないウンチクを一方的にしゃべる人や、「そんなことも知らないの?」とバカにしてくる人など、知識によるマウンティングもみられます。

物知りアピール
専門通アピール
相手の無知をバカにする
頼んでもいない上から目線のアドバイス
知ったかぶり、など


4.言動系
何かにつけて「いや、それは違うよ」と否定してくる人や見下す態度をとる人も、広い意味でのマウンターだと言えるでしょう。

過剰に相手を否定する
見下すような振る舞いをする
悪口やイヤミを言う
話を無視したり横取りする、など

では、マウンティングをしてくる人が職場にいる場合、どう対処すればいいのでしょうか?
それぞれの言動例も合わせて対処法をご紹介します。

1.距離を置く

一番の対処法は、なるべく距離を置き、関わらないようにすることです。
まともに接していると、どんどんストレスがたまり、精神がすり減っていきます。

マウンティングをやり返したりなどすれば、相手がさらにエスカレートするかもしれません。
マウンターは「勝てそうだ」と思える相手を狙うので、特に卑屈な態度を見せず、できるだけ堂々と振る舞うようにしましょう。
萎縮していると増長したマウンティングを受け続けることになる可能性があります。

ハラスメントに近い深刻なケースでは、担当や部署を変えてもらったり、出勤時間をずらしたりして、マウンターと会わずにすむ環境づくりを考えましょう。


2.「スルー言葉」を返す

マウンターが、マウンティングを仕掛ける最大に理由は、優越感を得るためです。
なので、マウンティングしても優越感を得られなければ「つまらない」と感じてやめるはずです。
「つまらない」と感じさせるには、徹底的に無関心な態度をとるのが一番です。
マウンティングの意欲をそぐためには、さらりと受け流す「スルー言葉」がつかえます。

最もシンプルなものは、無感情な「へぇ」。
「へぇ」という言葉には拒絶のニュアンスはありませんが、感情を込めない「へぇ」は、話に興味がないことを表します。

「なるほど」「それはよかったですね」と、肯定する言葉で同意しつつも声音や表情は無関心を示す、という方法もあります。

◆「スルー言葉」の例

(すべて感情をこめずに)
「へぇ」
「なるほど」
「それはよかったですね」
「そういう考え方もありますね」
「わかりました、検討させていただきます」
「アドバイス、ありがとうございます」


3.「牽制球」を投げる

「あなたのマウンティングを不快に感じています」「マウンティングをすると嫌われますよ」とほのめかす方法です。

◆「牽制球」の例

「もうー、マウントとらないでくださいよ(笑)」と、冗談っぽく指摘する
「そういうこと言われると傷つくなぁ」と、さりげなく不快感を伝える
「そういうの、けっこう根にもちますよ?」と、遠回しに不快感を伝える

いずれも、冗談っぽくさらりと言うのがポイントですが、牽制しすぎて自分がマウンターにならないよう気をつけてくださいね。
目上の人に対してはリスキーですが、対等か目下の相手になら、比較的使いやすいテクニックです。


4.「メタ認知」を鍛える

自分自身の考え方を変えることで、マウンティングへの耐性を高める方法です。

メタ認知とは、客観的に自分を眺めて理解を深めることです。
メタ認知によって自分の価値基準がはっきりしていれば、他人にいら立ったり嫉妬したりすることが少なくなります。

たとえば、「えっ、こんな有名ブランドも知らないの?」と知識系マウントをとられてバカにされても、ブランドにまったく興味がないという価値観を自覚できていれば、「うん。知らないし、興味もないよ。だから何?」とスルーできるはずです。
逆に、敗北感や嫉妬心を覚えてしまっても、「いま、自分は○○という理由で悔しがっているな」と客観的に自己分析することで、ネガティブな感情のコントロールができるでしょう。


5.懐に入る

少し高度な方法として、マウンターの懐に飛び込む、というもあります。
人間は自分に好意を示してくれた人や、親切にしてくれた人に対しては攻撃しづらいものです。
この心理を利用して相手のマウンティング意欲をそごうという作戦です。

マウンターの懐に入る方法としては、頼みごとが有効です。
このテクニックは「ベンジャミン・フランクリン効果」に基づく方法で、「Aさんを助ける」という行動をした人は、行動と感情を一致させたくなり、「助けたのは、自分がAさんを好きだからだ」と思うようになります。
頼みごとによって「教えてあげる」「助けてあげる」などの行動を起こさせると、マウンターはあなたに好感をもち、マウンティングを続ける可能性が低くなるのです。

「こんなことも知らないの?」とマウントをとってきた人に対して「そうなんですよ。よく知らないので教えてくれませんか?」と素直に頼ってみましょう。
相手はあなたに好感をもち、マウンティングしてやろうという気を起こしにくくなるかもしれません。
また、マウンティング癖がやまない場合でも、親しくなれば率直に意見しやすくなるため、ストレスはためにくくなるはずです。





まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。

身近にいるマウンターは確かに厄介な存在ですが、職場でマウンティングされても、ムキになってやり返したり、ストレスをため込んで落ち込む必要はありません。
無関心にスルーするか、思い切って懐に飛び込むか、ややこしい対抗心からわが身を守るために、今回ご紹介した方法をもとに、あなたに合ったマウンターとの適切な付き合い方を考えてみてくださいね。

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筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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