「ギフテッド」とは、知的に高い子どもや芸術的才能に優れている子どもが、いわゆる“神から授かった才能=特別なギフト”をもらって生まれてきたという意味で使われる言葉です。
似たような言葉で「タレンティッド」と言われることもあります。
この飛び抜けた能力を持つ天才たちは、海外では広く知られています。
想像力や記憶力などに優れる一方、対人関係などで困難を抱える子どもが一定数いるとされていますが、まだ日本国内での実態は分かっておらず、ようやく文部科学省が支援するための検討に乗り出したところです。
今回は、天から才能を与えられた子どもたち「ギフテッド」についてのお話です。



ギフテッドとはどんな人

ギフテッドとは、高い知性や共感的理解、倫理観などを持っている人のことを指します。これは生育時に早期教育をすることによって得られるものではなく、先天的な特性です。

「神様からの贈り物」という意味でギフテッドと呼ばれ、日本語に訳すとすれば「天賦の才」や「鬼才」と表現されるものと思われます。
「天才」という表現もギフテッドを指す上で使われますが、いわゆる勉強ができる優秀な子というよりは「生まれつき特定の能力が抜きんでている」ことに主眼が置かれます。

保育園や幼稚園でたくさんの同じ年齢の子どもといるようになると、ほかの子どもとの違いが目立つようになり、周りの子どもに比べ飛びぬけて理解力や記憶力が優れている、独創的な絵を描くなど、ギフテッドの兆候を園の先生が気づくケースもあります。
さらに、ギフテッドには、同年代の子どもより大人の中にいるほうが好きという特徴もあ、園の活動や友達と遊ぶことには興味を示さず、保育士から参加するよう促され苦痛に感じることもあります。


ギフテッドの正式な定義はなく、アメリカでは大半の州がテキサス州の内容と同じ定義を用いています。


ギフテッド・タレンテッドの生徒とは、同じ年齢・経験・環境を持つ子供と比較して、著しく高いレベルを達成する、あるいはその可能性をうかがわせる子ども。
知的能力、独創性や芸術の分野において高い実行能力を示す、並外れたリーダーシップ能力を持つ、あるいは特定の学術分野で秀でている。
引用:74th legislature of the State of Texas, Chapter 29, Subchapter D, Section 29.121)


ギフテッドの定義が曖昧なこともあり、一般に言われるIQ130以上をの人をギフテッドとするならば、およそ人口の2%程度が当てはまります。
これはあくまでも知能指数を基準とした場合であり、芸術的才能や音楽的才能など知能指数では測れない人を含めるとまた異なる数値となるはずです。

ギフテッドは生まれつきの特性のため、遺伝要因が大きいとされており、親族にギフテッドがいる場合は、生まれる確率が高いと言われていますが、明確な結論は出ていません。
ギフテッドに生まれても、さまざまな要因によっては知能を伸ばすことができないこともあります。


ギフテッドは「英才型」と「2E型」の2種類があります。

英才型は全般的に高い知能を持つ人を指します。
認知や記憶などの能力が高く、学業成績は非常に優秀なことが多いです。
周囲からも非常に優秀に見えるため、才能を伸ばすための機会が提供されやすいとも言えます。

2E型の2Eとは「twice-exceptional」のことで、「二重に例外」という意味です。
ギフテッドと発達障害を同時に持っている状態の人で、ある分野では突出した才能を示しますが、苦手なことはまったくできない傾向があり、「発達に凸凹がある」などと表現されたりもします。
特定の分野にだけ突出した能力が見られますが、印象はマイナス面のほうが強く、才能に気づかれないことのほうが多いです。
これは周囲が気づかないというだけでなく、身近な家族や自分自身でも気づいていないケースがあります。





ギフテッドと発達障害の違いと共通点

ギフテッドと発達障害は異なる概念ですが、共通する特徴もいくつか見られるため、ギフテッドでありながらADHDやアスペルガー症候群と誤診されているケースが非常に多く見られます。

「ギフテッド+ADHD」や「ギフテッド+ASD」という、2Eであることを正しく理解することが大切です。

ギフテッドと発達障害の共通点は、

1.好きなことや興味のあることへの集中力が非常に高い
2.完璧主義で、細かいところまで気にしていつまでも完了できないことがある
3.論理的思考力が高く、考えが奥深い


ギフテッドと発達障害の相違点は、
基本的には以下のような違いがありますが、2Eの場合はこれらの特徴が一部逆転していることがあります。



ひと口でギフテッドと言っても、どのような能力が突出しているのかは個人差があるため、ハワード・ガードナー氏によって8分類にされた知能『多重知能(Multiple Intelligences)理論』を総合的に見ながら、子どもの得意不得意を探していくことが重要です。




音楽的知能

リズム感・音感に優れ、音楽への感受性が強く、メロディーやリズム、ピッチの識別、再現が得意で、音程の聞き分けもできます。
作詞や作曲の能力が高く、音楽を聞いただけですぐにピアノで再現できたり、言葉の音やリズムを活用して韻を踏んだ歌詞を書くことができたりします。

子どもの場合は以下のような特徴が見られることがあります。

・歌うのが好き
・ずっと音楽を聞いている
・楽器の上達が異常に早い
・曲の共通点を見つけ出すことができる など


対人関係知能

人との関わり合いに優れておりグループワークが得意です。
他人の気持ちや感情を敏感に感じ取り、周囲の人が求めていることを察知する能力が高く、リーダーシップを取ることに長け、発言や行動で周囲の士気を高めたりすることを得意とします。

子どもの場合は以下のような特徴が見られることがあります。

・友だちが多い
・いろいろな人と話すことが好き
・様々なグループに所属したがる
・中心人物になることが多い


内省的知能

自分自身の感情や価値観の理解力が高く、正確に把握してそれに基づいた行動を取るのが得意です。
自分の得意なことは他の人の分も進んで手伝ったり、苦手なことは早めに相談したりということができます。
自分の関心に沿って研究を続けることで大きな成果を得ることがあります。

子どもの場合は以下のような特徴が見られることがあります。

・マイペースに行動する
・関心のあることには徹底的に詳しくなる
・自分の関心に沿って積極的に行動する事ができる


言語的知能

言葉への理解や感受性が高く、話をしたり文字や文章を書くなど、言葉を巧みに使いこなすことが得意です。
論理的で人を引きつける話し方ができ、説得力があります。

子どもの場合は以下のような特徴が見られることがあります。

・本を読むのが好き
・文字や文章を書くのが好き・得意
・話がうまい、おもしろい
・人前での発表や演説が得意


数学的・論理的知能

数や規則性、予測が得意で論理的思考力が高く、論理的なパターンや関係性に気づき、抽象的な概念でも容易に対応することができます。
数字を扱った説明や論証を用いて、物事の規則性や法則性を導き出して体系化することが得意です。

子どもの場合は以下のような特徴が見られることがあります。

・実験が好き
・パターンや規則性の研究が好き
・質問が論理的
・話の矛盾に気づく
・課題の設定が得意


博物的知能

環境、動物に関心が高く自然への感受性が強いので、身の回りの事象に対して疑問を持って違いを発見したり、共通点を見つけたりすることが得意です。
自分で基準や視点を決めて分類・整理したりできます。

子どもの場合は以下のような特徴が見られることがあります。

・動物が好き
・地図を見るのが好き
・勉強した内容を他の分野でも応用できる


空間的・視覚的知能

空間認識が得意で、絵や設計図を書くことが得意です。
絵や図を見たときに一瞬で細部まで感覚的に理解できてしまうため、理由を問われても説明することができないこともあります。

子どもの場合は以下のような特徴が見られることがあります。

・図や絵を描くことが好き
・プラモデルなどの組み立てが得意
・映像を見るのが好き
・頭の中で考えた風景やキャラクターをイラストにすることが得意


身体的・運動的知能

運動能力が高く、身体を自由にコントロールでき、いろいろなスポーツをそつなくこなす傾向にあります。
考えや感情を自分の身体で表現することが得意です。
手先が器用で、芸術的な作品を作ることができます。

子どもの場合は以下のような特徴が見られることがあります。

・動き回るのが好き
・実際に触れて感じたり考えたりすることが好き
・役になりきるのが得意
・学んだことを実際にやってみることが得意





ギフテッドの子どもの教育方針

ギフテッドの子どもの場合、大切なのは「得意を圧倒的に伸ばし、苦手を人並みにする」ことです。
平均点を目指すのではなく、苦手なことが大きな障害にならないようにサポートしつつ、得意分野を自由に伸ばせる環境を整えてあげることが重要です。
そのためには、自分が何が得意で何が苦手なのかを理解することです。

年齢に見合った横並びの教育ではなく、興味関心の強さやレベルに応じて適切な機会を提供してあげると、圧倒的に成長していきます。

ギフテッドの子どもは、得意分野については自主的に才能を伸ばしていきますが、苦手分野はまったく関心がないことが多いので、親御さんがしっかりとサポートしてあげるようにしましょう。
特に2Eの場合は苦手なところばかりが注目され、社会的に孤立してしまうことが多く、その結果強みを伸ばしきれないというケースが存在します。
苦手なところも社会生活に大きな影響を及ぼさない程度にコントロールしてあげることが大切です。

ギフテッドの子どもの特徴として、学校での授業が簡単すぎて退屈に感じられ、授業態度が悪く成績も良くないことがあります。
特に日本においては、同じ学年は一斉に同じ内容を学ぶシステムになっています。
習得の遅い子どもに対してはサポートがあっても、速すぎる子どもへのサポートはほとんどありません。

本人に学校ではクラスのみんなと足並みを揃えて勉強をする必要があることを理解してもらいながら、自宅でのプライべートは、興味関心のあるものには制限を取り払って自由に打ち込める環境を準備してあげましょう。

興味のある分野の奥深さを伝え、教科書や本だけではなく、実際にその分野の研究者や専門家に会う機会を作ってあげたり、全国的なコンテストを目標に設定してあげたりすることで、限界を作らず才能を伸ばしていくことでしょう。


ギフテッドの子どもは、あまりにもレベルが高すぎるためにその凄さを認めてもらえなかったり、時には否定されることもあります。
学校の教師がついていけないレベルに達していたり、周囲の同級生には何がすごいのか理解もできないような状態だからです。
親ですら理解できないレベルに到達してる場合がありますが、子どもが関心を示して集中している分野に関して熱く話しているときは興味を持って聞き、家庭で接する際にはなるべくストレスを抱えずに落ち着ける場所を作ってあげることが重要です。

ギフテッドは自分の得意分野に没頭するあまり、集団への帰属意識やコミュニケーション力に困難を抱えることがあります。
チームで何かをする経験を積ませることで、社会生活への順応性を維持することに繋がります。

ギフテッドの中でも2Eの場合、認知特性が大きく偏ることがあります。
認知には主に視覚認知と聴覚認知がありますが、視覚認知が優位の場合は話を聞いて理解するより、本やネットなどでテキスト・図表を読んだほうが理解できますし、聴覚認知が優位の場合はテキストで説明されるより、話を聞いたほうが理解しやすいのです。
それぞれの特性に応じた学習環境を整えることで、スムーズなサポートにも繋がります。




まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。

ギフテッドは天から与えられた才能に気づいて伸ばしていければ、圧倒的な成果を出すことがあります。
一方で、発達障害と共通した特性ゆえマイナス面にばかり注目を浴びてしまい、ギフテッドであることを自覚しないまま生きづらさを抱えてしまうことが多いのも事実です。
得意なことと苦手なことの差がはっきりしていて生きづらさを感じる場合は、一度知能検査やQEEG検査を受けてみることをおすすめします。
精神科などの専門医から自分の状態を正確に聞き、把握することで、得意なことを伸ばし、苦手な事をサポートしてもらうことができます。

ギフテッドの主な特長として10項目を挙ておきます。

1.記憶力が非常に高い
2.すぐに物事を学び判断できる
3.年齢のわりに語彙が多く、複雑な文章構造を話せる
4.数字やパズルなどの問題を楽しむ
5.感情の起伏が激しく、神経質
6.社会や政治、不正に対して関心がある
7.想像力があり、空想に夢中になる
8.好奇心が強い
9.集中力が高い
10.並外れたユーモアのセンスがある


『みんな一緒に、みんなが平均的に同じくらいの教育を受けて同じ経験をして卒業していく』という日本の学校システム自体が、ギフテッドの教育にはそぐわない部分があります。
ここ数年、ギフテッドや発達障害児が増加したように見える理由として、昔の子どもはあまり他人の立場や感情を考えて行動しなくてもよかったのに対し、現在は「助け合う」「一緒にする」といった社会性や協調性が子どもにも求められるため、それらができない子が目立ってしまうからではないでしょうか。

親にとってすべての子どもは、天からのギフトです。
これを機会に、ギフテッドに興味を持っていただければと思います。


わが子がギフティッドかもしれないと思ったら: 問題解決と飛躍のための実践的ガイド

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

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ちなみに「こらっと(korat)」は
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