ひとつのことに心をとらわれてしまい、そこから離れることができないのが「執着」です。
日常的に私たちが感じている「叶えたい」「手に入れたい」という願いにあまりにも執着しすぎると、かえって心を落ち込ませたり、落ち着かなくしたりといった悩みの種にもなります。
今回は持てば持つほど苦しくなてしまう「執着」について、そして執着してしまう理由と執着を手放して『執着しない生き方』をするにはどうすれば良いのかを考えていきたいと思います。




なぜ執着するのか?


あれがいい、これが欲しい、あれがしたい、これは手放したくない、分かって欲しい。
人には様々な『執着』があります。
執着は止めようと思っても簡単に止められるものではなく、気がついたらしてしまっていて、決して気分の良いことではないのは分かっているのにやってしまう、ということが誰にでも多かれ少なかれあるのではないでしょうか。
人はなぜそれほどまでに何かに執着してしまうのでしょう。
まずは執着の原因となるものを挙げてみましょう。

1.現在に不満がある

現状にまったく不満や不安がない、という人はなかなかいないかもしれません。
人が何かに執着するのは、多かれ少なかれ現在に不満や不安があるからです。
しかし執着が強すぎるのは、それだけ不満や不安の感情が大きく膨らんでいるからなのです。
今の不満や不安の気持ちを解消して埋め合わせたい気持ちが、何かに対する執着へと傾いていきます。
お金が欲しい、愛されたい、何かを手に入れたいという気持ちが、膨れ上がることで執着へと変化していきます。


2.過去に囚われすぎる

過去に失敗した、手に入らなかった、傷ついたという気持ちがずっと残っていると、そのマイナスの気持ちを打ち消すため行動を取り続けます。
失敗したり、後悔した気持ちを解消して気持ちよくなりたいという、過去へのこだわりが執着を生み出します。
昔受けた仕打ちに対して、見返してやる、償わせてやる、謝らせてやるいった気持ちが残っていると、現在に集中して生きることができないまま過去に執着して生きることになってしまいます。


3.評価が気になる

他人の評価や言葉が気になって、自分の人生や考え方などに自信が持てない人は、自分が他人を越える何かがあるのかということにこだわり、持っていない様々なものに執着するようになります。
必要以上に他人の評価を気にせず、自分の基準で素晴らしいことや面白いことを感じられれば、満足して執着せずに済みますが、こういう人は基準がないので、とにかく何でも他人から認められたい、褒められたいと求めながら生きていくことになります。


4.自分を受け入れることができない

物事に執着する原因として、自分自身を「受け入れられない」ということが考えられます。
ありのままの自分の姿や性格などが受け入れられないがために、外面で取り繕おうと執着するのです。
何かを必死に手に入れようとしたり批判したりするのは、本来の自分の姿を隠すためです。
過去に自分自身が受け入れてもらえなかったという大きなダメージが起因していることもあります。
幼いころに自分の気持ちや意見が受けられずに否定され続けたり、傷ついたまま成長してしまった場合に、素の自分はダメだからもっとたくさんのお金や名声を手に入れて自分をごまかさなくてはならないといった気持ちが強く働き執着心へと変わっていきます。


5.人生の不都合が受け入れられない

誰しも人生で辛いことや悲しいことを避けて通ることはできません。
どんな人でも別れや人間関係のトラブルや苦労はあるものです。
しかし執着が強い人は、自分の人生にこんな出来事があってはならない、不都合はあり得ない、という考え方を持っているので、トラブルや悲しいことが起きてもそれを受け入れることができず、必死に覆い隠そうとしたりごまかすために何かに執着した行動をとるのです。


6.完璧主義である

人生は完璧でなければならない、という執着心は、完璧主義とも言えるでしょう。
自分に欠点があってはいけない、もっと上を目指さなければいけない、といった考え方が強いので、受け入れられないことがおきても自分だけが正しいと信じて、絶対にこうあるべき、という気持ちになり、事実や相手の考えを捻じ曲げてでも自分の納得できる形に持っていこうとします。


7.お金やモノだけが自分を豊かにしてくれると信じすぎている

お金やモノは大切であり必要なものですが、どれだけそれらを手に入れ続けても完全に満たされるわけではありません。
お金やモノは流動的で、自分の気持ちや環境が変われば自然と変化していくものです。
しかしお金やモノだけが自分を満たしてくれると考えていると、その変化が受け入れられず絶対に手放したくないという執着心が働きます。
何かを絶対に手に入れたい、または手放したくないと強く思っている時は、物質的に満たされれば人生が素晴らしくなると信じすぎているのかもしれません。


8.自分や他人を信頼できない

自分や他人を含め、人間が信頼できれば、将来に関してもなんとかやっていけるだろうという信頼感が生まれ、物事に執着しすぎずに生活できます。
しかし自分のことも周りのことも信頼できず、自分自身のことも信頼できなければ、あらゆることに対して執着的に行動することになってしまいます。
「なんとかしなくては」「物やお金を手に入れなくては」という気持ちが強く働くからです。
自分のことや他人のことを信頼できないことが物事に執着してしまう原因となることもあります。





「執着」にはこんなデメリットが


執着することは人生に様々な影響を及ぼすことがあると言われています。
私たちにとってあまりよくないその影響とはどのようなものでしょうか。


1.他人と折り合いがつきにくくなる

自分の生き方や考え方に執着しすぎると、それ以外の考え方や生き方を受け入れられず、他人との折り合いがつきにくくなります。
「自分は絶対だ」「自分こそが正しい」という考え方に執着しすぎることによって意見の違う人とぶつかりやすくなり排他的な人間関係になってしまうのです。


2.依存関係になりやすくなる

執着心を持ちすぎると、人間関係や信頼関係を築くなかで依存関係に発展してしまう恐れがあります。

「なぜ自分の思った通りにあの人は動いてくれないのか」
「相手は自分の思い通りに動くべきだ」
といった考え方が強くなりすぎると他人をコントロールしようとしたり、意見が食い違っても分からせるために執拗にいがみ合ったり、あるいはそれが危険な人間関係だったとしても「なんとか改善しなくてはならない」と執着して離れられなくなってしまうことがあります。


3.今の生活を大切にできなくなる

過去や未来のことに執着しすぎることによって、現在の生活のことを認められず疎かになることがあります。
過去の出来事の解消に気持ちを注ぎ込んでいるため、これからなんとか良くなりたいという気持ちが強すぎて、現在の自分に大切なものや幸せなことに気づくことができず、今この時にやるべきことが見えなくなってしまうのです。


4.自分や他人のことを否定しやすくなる

執着が過ぎると自分の考えに合わないことや納得できないことに対して否定的になってしまいます。
「自分はこうあるべき」「他人はこうあるべき」という意識が強いため、そこから外れたときに自分に対しても他人に対しても批判的な見方が強くなります。
特に自分に対して否定的だと完璧な自分になれないことに深刻に絶望してしまうこともあります。






執着しない生き方とは


執着する生き方が苦しいものを内包していることはお判りいただけたと思いますが、では、執着しない生き方とは一体どのような生き方のことを指すのでしょうか。
上記に列挙した執着することによるデメリットの反対を考えてみましょう。


1.信頼する生き方

執着してしまうのは「なんとかしなくてはならない」「コントロールしなくてはならない」という気持ちの表れです。
その気持ちが強くある限りなかなか、執着しない生き方に替わることはできません。
モノやお金、あるいは他人に執着しないということだけでなく、なんとかなるだろう、周りを信頼してやってみようという、信頼感を持つことが大切です。
信頼は、モノやお金、人間関係を必死に執着して手に入れようとしなくても幸せだし、楽しく生きられることが信じられるので日々を無理なく過ごすことができます。


2.依存しない生き方

お金やモノを手に入れなくてはならない、人間関係は完璧でなくてはならない、といった執着が少なくなれば、自然とそれらに対しての依存心も少なくなります。
モノに満たされていないと生きていけない、常に誰かに認めてもらわないと生きていけないという依存心を持つと非常に生きづらくなります。
依存心・執着心が少なくなればその分身軽に行動できますし、何かを手放すことや誰かとの別れも受け入れやすくなります。


3.今に集中して生活できる

過去のことや将来の不安、自分や他人のことなどに執着しすぎないことで、今、この瞬間を集中して生きることができます。
「あの時ああしていれば」「あれが欲しい」「もっと必死に手に入れなければ」という気持ちが強ければ強いほど現在から気持ちが離れてしまい、今どうしたいのか、今何がしたいのかがわからなくなってしまうのです。


4.ストレスを減らせる

ストレスをゼロにすることはできませんが、日常で感じるストレスを少なからず減らすことができるでしょう。
コントロールしようとしたり手にれようとしたりする気持ちを持ちすぎることが無いので、「うまくいかないこともあるな」「ま、こんなものだろう」という感覚を持って生活することができます。


5.お金やモノを過剰に使ったり買ったりすることがなくなる

お金やモノに執着しすぎるとどうしても「お金を貯める」「お金を稼ぐ」ために生きてしまったり「物を買う」「贅沢をする」ことに対するリミッターがなくなります。
それらの執着を減らすことで、要らない物まで買ってしまうことを避けられますし、モノやお金に対して程よい距離感で接することができるので、過剰に不安になることも少なくなるのです。

では、執着しない生き方を実践するためにに、どんなふうに取り組んでいけばよいのでしょうか。

執着を手放すためには、とことん執着してみること、が1つの手段として挙げられます。

執着してはいけない、執着を手放そう、と意識を変えても、そう簡単には手放せないのが執着心です。 なかなか心の底から、執着を手放す、とは思えないからです。
執着しない、と言葉に出したり意識してみても、心の奥底で「やっぱり納得できない!手放せない!」という気持ちが残っていると、上辺だけの中途半端に終ってしまいます。
ならば、執着しても気分は良くならない、執着しても前に進めない、執着してもキリがない、ことを実感するまでとことん執着してみることも一つの手段なのです。





もうひとつの執着心を減らす手段として、断捨離も有効です。
断捨離は「モノ」の断捨離と「人間関係」の断捨離がありますが、ひとまずモノを断捨離して、家にある使わなくなったものや要らないと思うものを手放していきます。
いつか使うかもしれない、捨てるのは勿体無い、という気持ちが働くのは仕方がないですが、いつまでたっても捨てられないというのはまさしく執着で、捨てられないものがたまり続けると、そのうちに自分の周りが執着だらけになってしまいます。
何年も使っていないものや溜め込み過ぎているものは、売ってみたり思い切って捨ててみることも大切です。

モノの断捨離が終わったら、人間関係に対する断捨離を考えてみましょう。
自分にとって健全でない人や気が合わない人に対して必要以上に執着し、「なんとか分からせたい」「思い通りにしたい」「振り向かせたい」という気持ちが強すぎると適切な距離感を保つことができなくなり依存的関係が進んでしまいます。
そのような事を減らすためにも、と距離を置くなどの『人間関係の断捨離』をしてみてください。
一定の距離を置き、離れて新たな人間関係を築くことによって、今まで執着しすぎていたことに気付けたり、お互いに心地の良い距離感になって楽になることもあります。





まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。

執着しない生き方とは、単なる物質的なことだけではありません。
過去や未来、自分や他人、良いことや悪いこと、世間の様々なことに対して必要以上に執着しないことで、心を軽く、寛容な気持ちで、人生そのものを身軽な感覚で楽しむことができるようになります。
すると、今この瞬間を考えて大切に生きることができ、なおかつ自分のことも他人のことも信頼しやすくなっていきます。
めまぐるしい日常の中で、あなたの心の声に耳を傾けて、少しずつ執着を手放し、自分にとって本当に必要なものは何かを見つけて穏やかで豊かな日々が過ごせますように。

執着しないこと

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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