猫の舌の表面はやすりのようにザラザラしているため、猫に舐められると「痛い」と感じることがありませんか。
この不思議な猫の舌は、実は猫が生きていくうえでとても重要な役割を果たしているのです。
今回は、猫の舌の仕組みやどうしてザラザラしているのか、また、うちの子たちもよくやる「舌のしまい忘れ」の理由を解説します。
猫の口の中を覗き見ると、舌の前側から奥側に向かってやすりのように尖る無数の小さな突起があることが分かります。
猫に舐められると痛いトゲトゲの名前は「糸状乳頭(しじょうにゅうとう)」と言います。
人間の舌にある突起は丸い形ですが、猫の場合は先端に向かってゆるくカーブし、間に唾液が溜まるような構造になっています。
しかし、生まれて間もない赤ちゃんニャンコには、舌のザラザラはありません。
生後3〜4週間で離乳食を食べ始めることになってから、少しずつザラザラが生えてきます。
猫は人間と比べると、味を感じる細胞「味蕾細胞」が20分の1ほどしかないため、はるかに味覚が鈍いのです。
なので、私たちと猫とでは、同じものを食べたとしても味の感じ方はまったく異なります。
猫はもともと肉食なため、穀物を消化する機能が備わっていないことから、「塩味」「酸味」「苦味」の3つ程度しか味覚を感じることができません。
「甘味」は魚肉類に含まれるアミノ酸由来のものは感じますが、穀物の糖類(炭水化物)の甘さはわからないのです。
しかし「甘味」に鈍感な分、「苦味」や「酸味」には敏感です。
さらに猫には水の味の違いを判別できる器官が備わっていると言われています。
では、どうして猫の舌はトゲトゲ、ザラザラしているのでしょうか。
その理由は、主に猫の4つの習性にあります。
1.グルーミングのため
猫は起きている時間の大半を毛づくろいに費やします。
この毛づくろいにクシのように細かい舌の突起っが、抜群に役立つのです。
猫の舌はまるでブラシのように毛をとかし、毛並みを整えてくれます。
2.肉を削ぎ落とすため
猫の祖先であるリビアヤマネコは、ネズミのようなげっ歯類や鳥類をハンティングしてエサにしていました。
ザラザラの舌は、食べる際に獲物の肉をそぎ落とすときにも活躍します。
3.体温調節のため
汗腺がほとんどなく、汗をかくことができない猫にとって、自然に体温調節をすることは困難です。
その代わりとして、グルーミングのときに唾液で毛を湿らせて、その気化熱によって体温を下げる仕組みがあります。
4.猫同士のコミュニケーションのため
猫はコミュニケーションの一環として、お互いに毛づくろいすることがあります。
1匹飼いの場合でも、最近は猫の舌のザラザラを再現した「猫の舌風ブラシ」が販売されてます。
飼い主さんはぜひ猫の代わりにブラッシングしてあげてください。
ブラシで撫でると毛づくろいの代わりになるので、うっとりとリラックスしてもらいましょう。
猫を飼っていると時々目にする光景ですが、どうして舌をしまい忘れてしまうのか不思議になりませんか。
それにはいくつかの理由があって、ここでは代表的なものをご紹介します。
リラックスしているから
お気に入りの場所でのんびりと舌を出しているのは、猫がリラックスしている証拠です。
猫にとっては敵に襲われる心配もなく自由気ままな時間なので、安心しきって舌を引っ込めるのも忘れているのです。
逆に緊張しているときは決して舌を出しません。
グルーミング疲れから
長時間毛づくろいをしたあと、そのまま舌をしまい忘れているパターンです。
うっかり舌をしまい忘れてぺろんと出ている様子は、なんともかわいらしいですよね。
猫の舌先をちょんちょんと触って「舌が出てるよ」と声をかけると、あ、しまった!と慌てて舌を引っ込める猫の姿が見られますよ。
あごが小さいから/歯がないから
口内に舌が収まりきらずに外に出てしまう猫がいます。
鼻ぺちゃ顔のエキゾチックショートヘア、スコティッシュフォールドやペルシャといった猫種は、骨格の問題で他と比べてあごが小さく舌が外に出やすいです。
また、年齢を重ねて前歯が抜けてしまった猫も、舌が出やすくなります。
猫の舌はもともと長いので、顎が小さい猫や歯がない猫などは舌を出しっ放しにしていることも多いのです。
運動後などで暑いから
ハアハアと舌を出して息をする行動をパンティングと言います。
汗腺をほとんど持たない猫は、運動後などで暑さを感じたとき、グルーミングによる気化熱で体温を下げようとしますが、グルーミングでも間にあわないほど暑いときは、舌を出して体温を逃がそうとするのです。
何らかの病気が原因になっている
口内や呼吸器系に異常があり、舌を出しているケースもあります。
舌が出ていて、以下のような症状がある場合は病院で診察を受けることをお勧めします。
・よだれがたくさん出る→口内炎
・口の中に痛みがあり口が閉じにくい→歯肉炎
・異物で口が閉じにくくなり、舌が出る→口の中に腫瘍がある
・口や顎周りにケガを負っている→外傷
・激しいパンティングにより舌が出る→呼吸器疾患
出たままの舌をちょんちょんと触るとすぐに引っ込めるときは、病気ではないケースがほとんどですので安心してください。
舌は健康のバロメーターと言われるほど、猫の健康状態を反映するものです。
日常的におかしなところがないか、こまめにチェックしてあげてください。
健康な猫の舌は、濃いサーモンピンク色をしています。
トゲトゲは舌の根元の方向に伸びており、色は白っぽく見えます。
形は左右均等にU字を描き、奥に向かって厚みがあるのが分かります。
サーモンピンクだった舌が黒く変色していると、舌斑や色素沈着、血豆あるいは悪性腫瘍の可能性があります。
悪性腫瘍の場合、舌のふちがギザギザに変化してしてくることもあります。
舌の一部が白く変色しているときは口内炎や口内潰瘍が、全体的に白っぽくなると、貧血状態のサインが疑われます。
また舌のただれやできものが見られるときは、舌が炎症を起こしている可能性があります。
時には割れた食器を舐めてしまったり、ケンカをして舌を切ってしまうこともあるかもしれません。
ごはんを食べたがらない、よだれに血が混じっているなど症状があればすぐに病院へ連れて行きましょう。
くれぐれも自分で判断せずに動物病院を受診してください。
まとめ
猫の舌の仕組みや、舌を出しっぱなしにする理由がお分かりいただけたでしょうか。
舌を出している猫の姿はとてもかわいらしく見えるものです。
たまにはじっくりと飼い猫の舌を観察するのも面白いのではないかと思います。
舌を出したままにしている猫を見かけたら、ぜひ「舌、出てますよ」と声をかけてあげてください。
CIKALIN 猫の舌 櫛 グルーミングくし