急速に高齢化が進んでいる日本において、認知症が急増していることは危惧されているところですが、認知症は要介護・寝たきりの原因になるだけでなく、心筋梗塞・脳卒中などの生命予後との深刻な関連が指摘されており、認知症を予防することは現在の超高齢化社会の中で重要な課題と考えられています。
アリストテレスが「人は笑う動物である」と言ったように、神は哺乳類の中でも人間だけにしか笑う特権を与えなかったのです。
笑いはユーモアを理解し、面白いと思うから起こる行動なので、高次脳機能により維持されていると考えられています。
今回は、日常生活において笑う行為が認知症を予防する可能性につながるのかどうか考えてみたいと思います。



笑いと老いの関連性


認知症は厚生労働省研究班による調査において、65歳以降年齢の上昇とともに頻度は高くなる傾向にあり、もし笑いが認知症と関連するのであれば、笑いの頻度も年齢と深く関連すると考えられます。
健康診断を受診した4,780人(男性1,786人、女性2,994人:平均年齢59歳)を対象として、笑いの頻度と年齢との関連を検討したグラフがあります。
笑いの頻度は、日常生活における声を出して笑う頻度を「ほぼ毎日」「週1〜5回」「月1〜3回」「ほとんどない」の4段階で表しました。


男女別の笑いの頻度では、女性は「ほぼ毎日笑う」と回答した割合が53%だったのに対し、男性は40%にとどまり、女性の方が日常生活において声を出して笑う頻度が多いことがわかります。


年代別に笑いの頻度をみると、40歳未満の女性では「ほぼ毎日」と回答した割合は65%だったのに対し、年齢が上昇するとともにその頻度は少なくなり、70歳以上の女性では46%と半分以下となっています。


男性、女性ともに、年齢が高くなるほど笑いの頻度は少なくなり、70歳以上では35%まで低下しています。
表からもわかるように、笑いの頻度は男女ともに年齢とともに少なくなり老化指標の1つと考えることができると言えます。




笑いと認知症の危険因子との関連性

認知症は大きくアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症に分けられますが、これまでの疫学研究では、脳血管性認知症は、高血圧、糖尿病、喫煙などの脳卒中の危険因子をもっていることが強く関連していると報告されています。
したがって、認知症の危険因子である糖尿病、高血圧と笑いとの間に関連がみられれば、笑うことが認知症予防につながる可能性がより高くなる可能性が見えてきます。

糖尿病患者19人を対象として行われた実験で、最初の日は参加者に昼食の後に糖尿病の講義を40分間聴いてもらい、翌日は昼食の後に漫才を40分間鑑賞してもらいました。
両日の昼食前と昼食後2時間の血糖値を測定して比較した結果、糖尿病の講義の日には血糖値が151mg/dLから274mg/dLに急上昇したのに対し、漫才の日では178mg/dLから255mg/dLにとどまり、その差が46mg/dLもあることから、お笑いは糖尿病患者の血糖値上昇を抑制する可能性があると言えそうです。

この実験は2日間という短時間のものであったため、別途健康診断を受診した4,780人(男性1,786人、女性2,994人;平均年齢59歳)を対象に、日常生活における声を出して笑う頻度と糖尿病の有病率との関連を検討した結果、毎日声を出して笑っている人に比べて、週に1〜5日程度笑っている人は1.26倍、月に1〜3日もしくはほとんど笑っていない人は1.51倍も糖尿病の有病率が高いことが明らかになりました。
さらに、長期間の観察によってこの集団を3年間追跡調査した結果、特に女性においては、笑いの頻度が月に1〜3日もしくはほとんど笑っていない人は、ほぼ毎日笑っている人に比べて2倍以上糖尿病発症の危険度が高いことが明らかになりました。

少なくとも脳血管性認知症においては、声を出して笑う頻度と糖尿病の危険因子の関連性が深くかかわっていることがわかったのです。





笑いを増やせば認知症は予防できるか


では、笑いの頻度を増やせば、認知症の予防や改善につながるのでしょうか。

地域住民を対象として、平均年齢66歳の男女46名に対し笑い・ユーモアを用いた健康教室を開催し、認知症予防につながる可能性をの実験してみました。
対象者を4週間に1度落語を聴いてもらう「ぼちぼちコース」と、さらに加えて2週間に1度、笑いを取り入れた健康体操、笑いヨガ、ユーモア講座等の体験型学習を行い、さらに笑いに関するイベント、映像、本などを紹介することにより日常生活上の笑いの頻度を増やすための支援を行う「はりきりコース」の2組に分けて半年間実施しました。
実験前後に、これまで認知症との関連が報告されている血圧・心拍数の測定を行ったところ、心拍数は両群ともに低下し、笑いの頻度、うつ症状の得点は、「はりきりコース」の方がより改善する傾向がみられました。

1,203人の高齢者を対象にした社会的ネットワークと認知症との関連を検討した研究では、社会的ネットワークが多いほど将来的に認知症になりにくいことが報告されています。また、75歳以上の高齢者469人を平均5.1年間経過観察した研究では、ボードゲーム、音楽活動、ダンスなどの余暇の過ごし方が、将来の認知症に対して予防的に働くことが報告されています。
これらの結果、人とのコニュニケーションを増やすことが認知症予防につながる可能性を示唆しており、さらに、笑いの頻度が多いことは社会的ネットワークが多いことにつながる可能性も示しています。

やはり将来的には、笑いによる認知症の予防効果がより明らかになることが期待されることでしょう。





まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。

笑いと認知症発症との関連、そして笑いが認知症を予防できる可能性についてはいまだに明確ではないのですが、笑いを認知症療法に取り入れる可能性が指摘されるようになっています。
声を出して笑うことで、腹筋を締めたり緩めたり、横隔膜を上げたり下げたりまさに運動していることと同じになり、さらに笑うことによってストレスが取り除かれすっきりします。
笑いと認知症との研究がさらに進めば、笑いを介入させることで日本の保健事業に大きく貢献できる可能性が増えることでしょう。

笑医力: びっくりするほど健康になる!

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日はできる社畜としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
今まで培ったいきいき生きる術(すべ)をお伝えできれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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