「提案力」はかつての調査で仕事をするうえで必要なスキル第一位に選ばれた「交渉力・説得力」にも通じます。
今回は顧客や社内での新規プロジェクトなどに必要な「提案力」とはどのような能力なのか、それを身につけることのメリットのほか、提案力を鍛えるための考え方など、ビジネスに欠かせないこのスキルを向上させる方法を探っていきましょう。
「売れる営業」と「売れない営業」の差を一言でいうとすれば、「提案力の違い」なのです。
極論ですが、提案書のページが多ければ多いほど売れず、少なければ少ないほど売れるということです。
専門知識が豊富な営業ほど、提案書に色々な要素を盛り込んでいく傾向にあり、プロダクトアウト(製品指向)の営業になります。
しかしいくら製品知識が豊かであっても顧客のニーズから反れたピント外れの提案になっていては商談はまとまりません。
逆に、専門知識が豊富とはいえない営業でも、的確に顧客のニーズを捉えることが出来るマーケットイン(顧客指向)の商談ができれば、ピンポイントで期待通りの提案書が作成出来るのです。
そのために最も重要なことは「傾聴力」です。
「傾聴力」はいかに顧客の声を客観的に聞くことが出来るかという重要な能力です。
きちんと成績を残す営業は、よく話すのではなく、よく聞きます。
顧客の声にきちんと耳を傾ける心理学者のような人材は良い営業と言えるでしょう。
しかし素晴らしい提案を行ったにも関わらず、最終的な詰めの交渉で商談がまとまらなかったという経験をされた方もおられることでしょう。
それは提案段階においてはその内容に基づく理性的な判断が重視されるのに対し、商談を成立させる交渉においては相手を納得させるという人間対人間の合意、いわゆる「落としどころ」を見つけることが重視されるためです。
このため、商談においては提案とは異なり、人間の生身の部分に配慮をしなければなりません。
最後の契約合意まで至るためには、「最初は情、プロセスは理で、最後は再び情に戻る」ことが大切です。
人間は理屈ではなく、感情で動く生き物であるということを決して忘れてはいけません。
しかし提案力を高めるには顧客の声に傾聴し、客観的に顧客が望んでいることをピンポイントにすくい上げることが出来るアプローチが必要です。
提案力を強化し、営業力を上げるためのポイントを、あらためて整理します。
ポイント1:自分で仮説を立ててみる
顧客にヒアリングする時には、「仮説にもとづいた質問」をすると具体的な質問ができ、深い内容の回答を聞き出すのに役立ちます。
話を聞きながら、「ということは、こういうことなのでは?」と想像し、常に次の仮説を考えるトレーニングを積むのが提案力を高める効果につながります。
ポイント2:ゴールを明確にして提案を組み立てる
提案を組み立てる前に、「結果として顧客は何を得るか」というゴールから考えると組み立てやすいはずです。
ゴールが明確であればストーリーを考えやすく、焦点もブレません。
まずは、到達点を見つける習慣をつけるといいでしょう。
ポイント3:論理性と具体性、感情を使い分ける
相手の納得を得るためには、説明に論理性と具体性を持たせることが重要です。
また、状況によっては、相手の感情に訴えかけることも必要になってきます。
先方に不安感が残っているときはその感情に寄り添う、判断を決めかねているときは熱意を込めて一押しするといったことも意識してみましょう。
ポイント4:相手に応じて聞き方や話し方を変える
提案力に優れた営業は、聞き方や話し方も相手によって自然に変えることがよくあります。
自分流にこだわる人もいますが、臨機応変で柔軟性を備えている人のほうが相手との距離を縮めやすく、一度断られた場合のリトライも成功しやすいでしょう。
人は心を開かない者に対しては、正直に口を開いてはくれません。
そのためにまずは「こいつは人間として信頼できそうだ」と思わせることが大切です。
「信用」と「信頼」は似ているようで違っていて、「信用」は一回でも勝ち取ることが出来ますが、「信頼」は積み重ねのたまものです。
時間や約束を守る、質問に対して真摯に答えてくれる、よい情報を提供をしてくれるなどの行為を積み重ねた結果、信頼関係が構築され、口を開いてくれるようになるのです。
2.不要を取り除く(論理のフェーズ)
信頼関係が構築されると、顧客から現在の問題点やニーズを的確に得られるようになり、状況を把握することができます。
顧客の抱える問題点やニーズを踏まえ、それらの解決策をサービスや商品として提示するのです。
それには提案の必要性をきちんと論理で説明することが求められます。
「論理」とは「言語」と「数字」から成り立ちます。
つまり、具体的な数字を取り込んだ説明をしない限り、論理的とは言えないのです。
3.不適を取り除く(論理のフェーズ)
提案の必要性が顧客に理解されると、次は具体的な検討段階に入ります。
当然あなたの提案だけではなく、他社のものとも検討して、その中から最適なものを選択することになります。
ここでも論理が重要になってきます。
他社と比較して、あなたの提案のどういう部分が優位なのかをきちんと理解していただく必要があります。
4.不急を取り除く(論理のフェーズ)
最終段階で、必要性を感じ、あなたの提案が最適という判断を下した後にやってくるハードルが本当に今必要かどうかということです。
時間軸で考えた場合、今その提案を受け入れることがベストであるということをきちんと論理的に説明し、納得してもらうことが必要です。
5.クロージングでは(感情のフェーズ)
いよいよクロージング(契約)直前のフェーズです。
ここで最終の意思決定がされますが、値段や導入時期、本当に判断が正しいのだろうかと顧客が迷うケースがあります。
その際は最初の入口に戻り、感情に訴えることです。
最後の一押しは「論理」ではなく「感情」なのです。
まとめ
提案力を身に着けるには、多方向の能力をバランス良く習得していく必要があります。
簡単なことではありませんが、提案力を鍛えれば成績の大幅なアップに結びつきますし、営業としてだけではなく人間としても大きく飛躍できることでしょう。
コロナ禍の現状、なかなか対面での営業がかなわない部分もありますが、今だからこそ時間をかけて提案力の強化に取り組んでみるのもよいのではないでしょうか。