「詐欺師症候群」と直訳されることもあり、十分な能力と成果をあげているにもかかわらず、今の成功は、偶然か自分の力ではなく周囲のおかげと思い込んでいる。
自信が持てず、「本当の自分にはこんな実力はない」「能力がないことがばれたらどうしよう」と難しい仕事が来ると「私には無理」と断ってしまう。
しっかりとした実績や実力があるのに、自分のキャリアを常に信じることができないまま、ネガティブな思考に陥っている。
あなたの周りに、このような人はいませんか?
または、あなた自身にあてはまることは?
今回は、インポスター症候群の症状や陥る原因、克服の方法を併せてご紹介したいと思います。
仕事やプライベートを問わず、どれほど成功していても、自分の能力や実力ではなく運が良かっただけ、周囲の厚いサポートがあったから成功できたにすぎない、と思い込んでしまい、自分の力を信じられない状態に陥っている心理傾向を指します。
インポスター症候群の名前の由来は、英語で「詐欺師」や「偽物」といった意味を持つIMPOSTERから来ています。
インポスター症候群の人は、「自分は周囲を欺いて、あたかも能力や実力があるかのように見せている」という感覚に陥っており、非常に自己評価が低い傾向にあります。
単なるネガティブ思考というだけでなく、必要以上に謙遜したり、自分自身を卑下したりする言動が多いのもよく見られる特徴です。
インポスター症候群は病気ではなく、そういった心理傾向や気質であるということですが、人によってはネガティブな心理傾向が心身の大きな負担となり、悪化すると限界を迎えて仕事や私生活に支障が出てくるケースもあります。
インポスター症候群の具体例な特徴としては、次のようなものがあります。
失敗や批判を恐れチャレンジしない
「今は良くても、いつか必ず失敗する」「失敗したら周囲から批判される」と思い込み、失敗すると「やっぱり失敗した」と感じ、成功しても「偶然できただけ」「運が良かった」と結論づけてしまいます。
また、失敗が準備不足のせいにできるように、やるべきことを後回しにする傾向もあります。
自分を過小評価する
成功や実績を偶然や周囲のおかげと考えてしまうため、実際に能力や実力があったとしても自信につなげられません。
謙遜ではなく、本気で自分を過小評価する傾向があり、他人から良い評価を受けると重荷に感じたり、不安になったりします。
インポスター症候群を発症する人には、無意識に「自分は変化してはいけない」=「成長してはいけない」と思い込んでしまうところがあります。
この思考には、次のような経験や心理的負担が挙げられます。
・自分の成功に対する周囲からのねたみ
・いじめや仲間外れによる孤独感
・失敗したときに周囲から叱られたり、からかわれたりする
・成長することで仕事量が増えたり、難度の高い業務を任せられることへの抵抗感
これらの経験や心理的負担がトラウマになり、インポスター症候群を発症する人は「自分が変わらなければ大丈夫」と思い込むことで、ストレスや不安から心を守ろうとしている傾向があるといわれています。
また、子供時代に受けた教育や、女性の社会進出による社会の変化が原因となり、無意識のうちに「目立たず周囲に溶け込んでいたほうが良い」「自分が成功することは望まれていない」と刷り込まれ、自分の能力や実力に自信を持てない心理傾向に陥ってしまうのです。
例えば、
・子供のころから「個性」よりも「同調」が求められ、ほかの人と同じように振る舞うよう教育されてきた
・自分自身の成功よりも、周囲や組織全体の成功を優先するよう教育されてきた
・「女性は女性らしく、家庭的で控え目に」という価値観の人が多い環境で育った、またはそういった環境で働いている
日本では上記のような男性よりも女性のほうが影響を受けやすい文化的要因があるため、インポスター症候群に陥る7割は女性と見られています。
インポスター症候群に悩む人は、ネガティブな考えにとらわれやすく、未来に対して不安を覚えることが多いのです。
将来について考えるのは大切なことですが、ネガティブな思考に振り回されると、心身ともに疲れてしまい、今、目の前にあることに集中できなくなってしまいます。
仕事・プライベートを問わず、まずは今、目の前にある、自分がやらなくてはならないことに集中して、周囲の視線や将来への不安などはシャットアウトすることです。
2.自分にも他人にも完璧を求めない
インポスター症候群に陥りやすい人は、「何事も完璧でなくてはならない」と考えてしまう人が少なくありません。
そのプレッシャーに負けてしまい、思い描く「成功している自分」と、自信が持てない今の自分とのギャップに悩まされるのです。
そのため、いつまでも「今のままではダメ、完璧になって成功しなければ」と思い込み、その完璧主義の価値観を、他人にも押し付けてしまいトラブルの原因になります。
自分も他人も過度なプレッシャーで追い込まず、完璧さは求めないようにしましょう。
3.自分より優秀だと思う人の中に身を置く
インポスター症候群を悪化させてしまう原因のひとつに、「自分に対する過度な期待や責任を持つこと」があります。
物事にリラックスして取り組めるように、自分よりも優秀なメンバーの中に身を置くという方法もおすすめです。
わからないことや不慣れな仕事に、アドバイスやサポートをしてくれる人のいる環境のほうが、心理的負担を軽くすることができるでしょう。
4.褒められたら素直に受け止める
日本人特有の文化として「謙遜」という、褒められてもあえて否定したり、素直に受け止めなかったりすること根付いているため、無意識のうちに自分を過小評価している人は多いと思われます。
無意識でも自分自身を過小評価し続けることで、自分の可能性をどんどん狭めてしまうことになりかねません。
褒められたときや良い評価をもらったときは、素直に「ありがとうございます」と受け止める姿勢を心掛けることで、さらに頑張る意欲と自信がつき、段々とインポスター症候群を克服できるようになるでしょう。
5.目標を達成したら自分を褒める
インポスター症候群の人は、自己肯定感が極端に低い傾向があります。
これは、日頃から自分を卑下することや自己否定することが癖になっていることが原因のひとつです。
どんなに小さな成功でも、まずは自分を褒めることを習慣づけることが大切です。
仕事に限らず、どんなことにでも小さな目標や課題を設けてそれが達成できたときには自分を褒めてください。
何度も繰り返すうちに、自己肯定力が自然と向上していくはずです。
まとめ
インポスター症候群に悩む人は意外と多いのです。
克服するためには、まずは無理のない範囲で自分ができることから始め、自分には価値があることを自覚し、自己肯定感を高めることが必要です。
自己評価を高める方法として、その日に自分の良かったと思うところを3つ日記につけることもおすすめです。
まずはどんなに小さなことでも自分を褒めてあげることから始めてみてはいかがでしょうか。