トップモデル・タレントとして活躍されているアンミカさんが大切にしている言葉でもあるのだとか。
アンミカさんといえば、明るくさっぱりとした性格というイメージですが、幼いころからお母さまに“口角を上げること”や“思いやりのある話し方”を教わってきたのだそう。
今回は、和顔愛語についてお話していきます。
「和顔」とは、文字のままに「和やかな顔」ということで、笑顔を表しています。
「愛語」とは、優しい言葉ということです。
お釈迦さまは、たくさんの善を説かれ、善い行いを勧められていますが、あまりに多くありすぎると一体何からしたらよいのか迷ってしまいますね。
そんな迷える私たちのためにお釈迦さまは、善を6つにまとめられました。
それが六度万行(ろくどまんぎょう)です。
【 六度万行 】
・布施(ふせ)…親切
・持戒(じかい)…言行一致
・忍辱(にんにく)…忍耐
・精進(しょうじん)…努力
・禅定(ぜんじょう)…反省
・智慧(ちえ)…修養
六度万行の中で、一番最初に挙げられているのが布施(ふせ)です。
布施といえばお坊さんに渡すお金のことと思っている方も多くおられると思いますが、布施はお金だけではありません。
布施は普施とも書き、「あまねく施す」という意味があります。
お坊さんだけに限らず、周りの人に施すことも布施なのです。
私たちが施せるものには大きく分けて「法施」と「財施」があります。
「法施」は仏教の教えを正しく伝えることで、「財施」とはお金や物品を施すことです。
ではお金や物を持っていない者は、施すことはできないのでしょうか。
いいえ、お釈迦さまはお金や物を持っていない人でも施せるものがあると教えられています。
それが「無財の七施(むざいのしちせ)」です。
・眼施(げんせ):優しい温かいまなざしで周囲の人々を明るくすること。
・和顔悦色施(わげんえっしょくせ):優しい笑顔で人に接すること。
・言辞施(ごんじせ):優しい言葉をかけること。
・身施(しんせ):肉体を使って他人のため、社会のために奉仕すること。
・心施(しんせ):心から感謝の言葉を述べること。
・床座施(しょうざせ):場所や席を譲り合う親切。
・房舎施(ぼうしゃせ):訪ねてくる人、求めてくる人があれば、一宿一飯の施しをして、その苦労をねぎらうこと。
「和顔愛語」は、2つ目の「和顔悦色施」と3つ目の「言辞施」を心がけることです。
笑顔と優しい言葉を心がける、と聞けば、何だそんな簡単なことかと思われるかもしれませんが、知っていることと、実行することは別のもの。
いつも笑顔で人に接し、優しい言葉をかける、というのは存外に難しいものです。
ところが、自分に余裕がなくなり苦境にある時にはどうでしょうか。
自分自身が辛い状況にあるのに、他人に対して笑顔を向けたり、優しい言葉をかける心の余裕を持つことは難しいです。
仏教では、すべての人の心に自分さえよければいいという我利我利(がりがり)が潜んでいると教えています。
自分自身が苦難のただなかにいるのに、誰かに笑顔を向けたりや優しい言葉をかけることができないのは仕方がない。
ついつい現状の自身の苦難を理由にして我利我利(がりがり)の心は増幅されていきます。
しかしそれではどんどん人は離れていく。
周囲への思いやりを忘れず、いつも笑顔や優しい言葉に心がける人こそ素晴らしい人だと言われます。
難しいことですが、自分自身がどんな状況にあっても、和顔愛語を心がけて日々を過ごしていきたいものです。
我利我利の反対は自利利他(じりりた)と言います。
「自らの悟りのために修行し、得られた功徳を、自分の利益を図るために使うのではなく、他人を救済するために尽くすこと」です。
誰でも自分のためになるから努力できます。
しかし、その努力の結果を自分の利益のためにではなく誰かのために使うのはなかなか困難な心掛けになるかもしれません。
人間はほおっておくと知らないうちに我利我利を増幅させる生き物のような気がします。
日々の暮らしの中で心に潜む我利我利を抑え、自利利他を意識する、それだけでも随分違ってくるのではないでしょうか。
まとめ
仏教用語は難しいと思われがちですが、お釈迦さまが説く内容はとてもシンプルです。 今この時、自分がどういう態度をとるか。
その態度が自分のための態度ではなく、普遍的に価値のある態度かどうか。
一瞬一瞬、私たちにその判断が求められ、それぞれが応える繰り返しが人生になっていくのだと思います。