ヒトの心を見透かしたような行動をとったり、まったく無関心を装ったり。
うちの子は低い大声のときは「??られる」と認識しているようですが、言葉の意味は理解しているのかどうか…。
声のトーンや大きさで判断していて、言葉の意味は本当にわからないのでしょうか。
今回は猫がヒトの言葉をどれくらい理解しているのか、について掘り下げていこうと思います。
すなわち奇跡的に野性味も残したまま、ヒトの傍ら生きてきたわけです。
自分を変えない自由な動物である猫が、人間のことをどう捉えているか不思議に思いませんか。
飼い主は、猫に向かって話しかけるとき、猫の鳴きまねをして「にゃーにゃー」などと言ってみたり、普通にヒトの言葉で話しかけたりしているわけですが、そもそも猫は人の言っていることを理解しているのでしょうか?
そのことに関しては、ある興味深い研究結果があります。
2019年4月、日本の上智大学の研究チームが一般家庭と猫カフェで飼われている猫、合わせて112匹に対して行った実験が、英国の学術誌「Scientific Reports」に発表されたもので、飼い猫は「自分の名前」と「一般名詞」と「同居猫の名前」を聞き分けられることが明らかになったというのです。
内容を要約すると、一般家庭の猫に対して猫の名前に音や響きが似ている4つの名詞で呼びかけを行い、猫カフェで飼われている猫には、一緒に飼育されている別の猫の名前を呼びかけるというものでした。
一般家庭で飼われている猫は明らかに自分の名前の時だけ違った反応を見せ、猫は確実に自分の名前を聞き分けていて、見ず知らずの人に名前を呼ばれたとしても反応するという結果が出たのです。
つまり、猫は自分の名前を完全に理解しているということになります。
残念ながら、猫カフェで飼われている猫は、自分の名前と別の猫の名前を区別しているという結果は得られなかったそうですが。
しかも猫が自分の名前に反応するという能力は、決して特別な訓練で得られたものではなく、飼い主と日常生活を送る中で自然と身に付いたものであると、上智大学の研究チームは発表しています。
うちの子も2匹ともに自分の名前は明らかに利害しています。
男の子はコテツ君、女の子はリンちゃんですが、コテツは「コテ」「こてっちゃん」「コテ野郎」と呼んでも反応するし、リンちゃんは「リンコロ」「リンリン」と呼んでも反応します。
猫を飼っている方にとっては、自分の飼い猫が名前に反応するのは、ごく普通のことですから。
日常生活のなかで飼い主とコミュニケーションをとるなかで、自然にヒトの言葉を覚えて理解しているのだと思います。
ヒトがよく使う「ありがとう」「ごめんね」などもわかっているような気がします。
ただ犬のように飼い主に褒められたくて芸を覚えるということはしないので、気まぐれでやったりやらなかったりするかもしれませんん。
知能的には猫も犬も、それほど大差はないので、根気よく教え込み機嫌のいい時ならやってくれるかも、という程度に考えておきましょう。
ヒトと猫の脳は、基本的には同じ構造なのにもかかわらず、なぜ、ヒトの方が言語能力が高く、複雑な思考や学習ができるのか。
それは記憶や思考を司る大脳新皮質というのがヒトの方が発達しているからです。
猫の知能は人間でいえば2歳児程度と言われています。
日常的によく使う、「ごはん」「ダメ」「おいで」「くさい」「かわいいね」などの短い言葉には、とてもよく反応します。
うちの男の子は、現在糖尿病治療中なので、最近新しく「ちゅうしゃ」という言葉を覚えました。
「ごはん」を食べた後は「ちゅうしゃ」をしなくちゃいけないことを理解していますます。
猫の賢さがわかるこんな例もあります。
飼い主が旅行に出る際に、飼い猫にしっかり説明していくと、とてもいい子に留守番しているのですが、黙って旅行に行ってしまうと、とても悪い子になってしまい、家の中がぐちゃぐちゃにされていたりご飯を食べていなかったりすることがあるそうです。
「旅行に行くけど、お利口にしててね」と説明したら「うん、わかった」とお留守番を承諾してくれ、黙って旅行に行ったら「断りもなしに、行った」と腹いせに何かを仕掛けてくるのです。
猫も話せばわかるのかもしれませんね。
猫にはヒトと違い「霊長類の脳」といわれる部分はうっすらとしかなく、あまり発達していないことがわかっています。
その意味で、短い単語は理解できても、単語が組み合わさった長いっ言葉まではわからないのではないか、と考えられています。
しかし猫がヒトより優れているのは、高い聴覚機能です。
ヒトが発した言葉の微妙な音の違いを聞き分けられるため、同じ単語でも内容の違いを聞き分けている可能性があります。
ソファーで爪とぎしたり、カーテンにぶら下がったり、悪いことをしていると、「コラ、ダメ」と大きな声で叱るときがあります。
しかしいくら叱られても、楽しいことはやめられない!だから自由にやらせていただきます、というのが猫のスタンスです。
ただ、命の危険が伴うようなことをしようとしたときに、これは絶対にやっちゃダメだと叱る場合、猫は飼い主の行動と発した言葉を連動させていつもと違う叱られ方を理解し、物事の内容を判断しているようです。
縄張りで生きる猫は、縄張り内の異変に敏感です。
昔から単独行動で生活してきたので、異変に気づけないと、野生では命を落とす危険性があるからです。
ヒトと暮らすようになっても、猫にとっては飼い主もいわば縄張りの範疇。
その意味では、日ごろから飼い主が話す言葉のトーンや長さ、強弱、さらにその時の人のしぐさを猫はとてもよく観察しています。
そして言葉を状況とともに記憶し、脳内に張り付けておき、その時々で引き出して理解しています。
言葉の理解は、経験が肝要になってくるので、飼い主は猫にポジティブな言葉をかけるときと、ネガティブな言葉を伝えるときでは、声の大きさや高低、抑揚をはっきり変えて話しかけたほうがいいようです。
例えば、猫を褒めるときは、高い声でやさしく、語尾を上げながら、反対に、危険なことを叱ったりする場合は、低い声で大きく語尾を下げて、のように。
猫にとってマイナスな状況で名前を呼んぶと、嫌な記憶として覚えてしまうので、猫の名前を呼ぶときは、できればポジティブな状況のみにしたほうがいいよいうです。
このように猫はヒトの言葉や感情を思った以上に理解しています。
いつも側にいてじっと飼い主を観察してくれている、飼い主が言わんとしていることを理解しようとしてくれている、そう捉えることが猫と幸せに暮らす秘訣かもしれません。
まとめ
猫の観察眼はあなどれません。
猫はあなたのことをよく見ています。
もしかするとあなたの毎日の行動パターンをあなたより熟知しているかもしれません。
旅行や出張に行く際は、旅支度をしますが、あなたがいつもと違う行動をすると、「何かあるぞ」と落ち着かなくなり、スーツケースに入ったりして邪魔をしたりするのです。
なかにはその優れた観察眼から人間のトイレで同じようにトイレをする猫もいます。
飼い主がやっている動作を常に観察して、トイレの仕方を覚えてしまうのです。
本当に猫は優れた学習能力も持ち合わせているのです。
訓練次第では犬と同じようにおすわりを覚えさせることも夢ではないかもしれません。
そして留守にする際は、その事情をきちんと話してあげるときっと理解してくれることでしょう。
岩合光昭の世界ネコ歩きmini