仕事をする人なら、だれでも困難に直面したり組織のなかで悩むことがあると思いますが、その多くの人がドラッカーの言葉にに救われます。
経営者や会社員はもとより主婦や学生までもが、それぞれの悩みに応じてドラッカーの言葉に心を動かされ、気付きを得ています。
コロナ禍で閉塞状態にある今だからこそ、本質を突き説得力のあるドラッカーの言葉が必要とされているのかもしれません。
今回は深く広い人間的なドラッカーについて解説していきたいと思います。
彼の名前は、岩崎夏海氏の小説『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)で知っている方も多いのではないでしょうか。
1909年11月19日、ユダヤ系のオーストリア人としてウィーンに生まれたピーター・ファーディナンド・ドラッカー。
ドラッカーは1931年にドイツのフランクフルト大学にて法学博士号を取得します。
当時はナチス・ドイツが台頭していた時代で、ユダヤ系のドラッガーには身の危険を感じることすらあったでしょう。
その後アメリカに移住し、1942年にはアメリカ、バーモント州のベニントン大学の教授になり、アメリカ国籍を取得します。
さらにニューヨーク大学やカリフォルニア州のクレアモント大学院大学などの教授を務め、最終的に執筆活動や教育、コンサルティング活動を続けました。
日本にも数回来日したことがあり、1966年には「産業経営の近代化および日米親善への寄与」が認められ勲三等瑞宝章を受勲しています。
政治社会への関心から出発し、マネジメントを提唱・発展させたドラッカーは、「20世紀最大の『哲人』」や「マネジメントの父」と称されますが、その視線の先には常に人間があり、自らは「観察者」「社会生態学者」と呼ばれることを好みました。
彼はマネジメントを発明した経営学者として、その教えは決して廃れることはなく、現代社会においても彼のマネジメント論、思想は世界各国の企業経営者に深く影響を与え続けています。
そして、「マネジメント」の生みの親と言われるとおり、仕事の成果をあげるためには、会社に対してどのような「貢献」ができるかということを考えなければならないと述べています。
「マネジメント」とは一般的に「管理」や「経営」といった意味合いを持っていますが、ドラッカーは今までの全体主義的な組織の在り方ではなく「成果をあげる責任あるマネジメントこそ全体主義に代わるものであり、われわれを全体主義から守る唯一の手立てである」と述べています。
その根本には「人を幸福にすること」という思想があるためです。
そして、個人においてプロフェッショナルとして成功するためには「自己の長所(強み)」を知り、「自分が成長できる環境にいくこと」を主張しています。
先にも述べたように、ドラッカーは自らを人間によってつくられた人間環境に関心を持つ「社会生態学者」と称しています。
それが、傑出した人間に対しての洞察力となり「マネジメント」の誕生につながったと言えるでしょう。
自身で「社会生態学者」である、と呼ぶだけあって優れた社会への関心や観察力をもって分析しています。
ピーター・ドラッカーは「マネジメント」に関する著書だけでなく、自己啓発に関してもたくさんの著書があります。
日本でも和訳されたものが多く出版されているので、読んだことがある方もたくさんいらっしゃることでしょう。
現在に至るまでいろいろな人、企業などが参考にしている、そういった名言をいくつかご紹介していきます。
「成果とは、常に成功することではない」『マネジメント』
「人に教えることほど、勉強になることはない」『マネジメント』
「イノベーションに成功する者は保守的である。」『ドラッカー 365の金言』
「自らの強みを知り、それをいかに強化するかを知り、かつ自らのできないことを知ることが継続学習の鍵である。」『ドラッカー 365の金言』
「企業にとっての第一の責任は、存続することである」『現代の経営』
「企業の目的は顧客の創造である」『現代の経営』
「最も重要なことから始めよ」『プロフェッショナルの条件』
「マーケティングの理想は販売を不要にすること」『断絶の時代』
「変化はコントロールできない。できることは、先頭に立つことだけだ」『チェンジ・リーダーの条件』
「最も重要な5つの質問とは、われわれのミッションは何か、われわれの顧客は誰か、顧客にとっての価値は何か、われわれにとっての成果は何か、われわれの計画は何か、という5つの質問からなる経営ツールである」『経営者に贈る5つの質問』
今のあなたの心に響く名言はあったでしょうか。
まとめ
亡くなってもなお現代社会、現役の経営者に大きな影響力を与える、ピーター・ドラッカー。
最後に、ドラッカー本人から設立の承認を受けた世界でも数少ない団体の一つである「ドラッカー学会」より、ピーター・ドラッカーという人物が集約されていると言えるドラッカーに対する日本の著名な経営者の声をご紹介します。
「ドラッカー先生の一言一言の重みを、今でも、折に触れ感じています。例えば「理論ばかりではいけない。経験も大事にしなくてはいけない」とか「顧客と市場を知っているのは、ただ一人顧客のみ」といった言葉は、普遍的なビジネスの本質を切り取って見せてくれます。「人はコストではなく資源」「事業の目的は顧客の創造」「問題ではなく機会中心」「イノベーションの欠如こそ組織がだめになる証拠」などの言葉は、日頃マネジメントが陥りやすい現実に対する戒めとなっています。」 (伊藤雅俊 セブン&アイ・ホールディングス名誉会長)
「なぜドラッカーか。根本の問題を意識させてくれるからです。何のためにわれわれの会社があるのか。なぜ自分は経営しているのか。会社はなぜ事業を行わなければならないのか。社員は会社組織でどのような仕事をなすべきか、社会における個人とは何か。そういった誰もが前提として疑わないこと、本質的な問題に問いを投げかけ、答えてくれている。ドラッカーの書いたものを読むと、自分がぼんやり考えていたことはこういうことだったのではと得心がいくのです。」 (柳井 正 ファースト・リテイリング会長)
「彼は世の定見や既存の政治的公正を唯々諾々と受け入れることをしなかった。そのような姿勢が、ひとかけらの良心、良識を持つ人から一貫して受け入れられた理由と思います。」 (小林陽太郎 富士ゼロックス元取締役会長)
どんなに優れた経営者もマーケティングを成功させるには、ドラッカーの説く「マネジメント」が必要だと語っています。
だからこそ今日に至るまでドラッカーの思想は説得力を持つのです。
マーケティングを成功させたいと思っている方は、一度このドラッカーの思想に触れてみるのはいかがでしょうか。