ストレスの原因は新型コロナウイルスが引き起こしたとはいえ、パートナーの何気ないひと言にイラッとしたり、子どもとうまくコミュニケーションできずに落ち込んだり。
コロナ禍以前とは違い家にいると落ち着くどころか家族に心をかき乱されて、我慢の限界という方もおられるのではないでしょうか。
今回は、そろそろ限界…と爆発寸前のあなたに、家族と穏やかに過ごすためのヒントをご紹介します。
人生の岐路である進学や就職、結婚、昇進といった良い方向への変化であったとしても、環境の変化そのものに不安や緊張を感じるのです。
未だに終息の目途が立たず、世界的に蔓延し続けている新型コロナウイルスという悪い変化によって誰もが今まで感じたことのないような強いストレスを抱えていることは間違いないでしょう。
家族のあいだでは、それぞれストレスを抱えていることが見えにくい部分があります。
とくに真面目に一所懸命、完璧主義で家族のために頑張ってきた主婦ほどストレスは強くなる傾向にあるようです。
しかしストレスを感じているのにあなたがそれを自覚できずにいると、あなたに代わって体や心が悲鳴をあげるようになります。
頭痛や肩こり、胃腸の不調、血圧上昇といったサインを出して「ストレスを何とかして!」と声なき声で訴えてきます。
体調不良や気分の落ち込みなどの心の不調は、日常生活にも影響を及ぼします。
たかがストレスと放置せず、上手につき合っていくことが大切です。
適当というと、「適当なことばかり言って」とか「そんなの適当にやっておけばいいよ」など、その場しのぎに雑に物事を済ます、といったマイナスの意味にとらえる人が多いかもしれません。
ところが適当にはもう一つ、「適当な温度具合」や「適当な場所が見つかった」など、程よい状態や目的、要求に合っているという良い意味もあります。
コロナ禍という現実から逃れることはできないし、家族に対してストレスを感じてしまう自分もいて…、それはどうしようもないことだとわかっていても、もう少し柔軟にラクになれないものか、そのために必要なのが「適当力」なのです。
今の現状やそこから発生しているストレスと上手に付き合っていくための考え方を切り替えるスキルとも言えます。
それでは、あなたがどんな場面で「適当力」を必要としているかを気づくことから始めていきます。
デリケートでストレスを抱えやすい人は、その瞬間は自分の本音を表に出さず我慢してしまうことが多く、時間がたってから「ああ言えばよかった」「こうしたらスッキリしたかも」と思い返して悔やみます。
パートナーから「部屋が汚い」と言われたらどんな感情が湧きますか?
「そう思うなら自分で掃除すれば!」「そんなに汚れていないじゃない」「今やろうと思ってたのに」、人によって湧き出す感情はそれぞれです。
あなた頭の中に湧き出した感情のつぶやきを言葉にすると、自分の気持ちを客観的にとらえることができます。
この作業を意識して続けると、怒りや悲しみなど感情が大きく動いた瞬間に「こういう言われ方をすると私はイラつくんだ」「この言葉には落ち込んでしまう」と気がつき、客観的な視点で自分の反応が自覚できるようになります。
そして自分の本音に近い、適当な返事や態度がとれるようになると、後悔することも減っていくはずです。
さらに思考グセに気づくための「セルフトーク」に挑戦してみるのもよいでしょう。
これはあなたの感情が大きく動いた瞬間に浮かんだ頭の中のセリフを、俯瞰的に第三者として説明する方法です。
たとえば「部屋が汚い」と夫に言われたとき、「『じゃああなたが掃除すれば!』と心の中でキレてる私を発見!」とか「悲しくて私は泣きそうになっています」というように、あなたの感情や反応を自分で解説してみるのです。
これも続けるうちに、あることが起きると決まってストレスを感じる自分、その場にふさわしい反応ができない自分の「クセ」に気づくことができます。
その思考グセを「適当力」をつかっていいかんじにゆるめると、ストレスと上手に付き合ってていくことができるようになりますよ。
世間の常識や自分のルールにこだわり、そこから外れるとストレスを感じてしまう人がいます。
正義感が強く真面目なのはいいことですが、「こうあるべき」「こうするべき」といった自分なりの価値観を押し通そうとして、相手の気持ちや周囲の状況とズレてしまいがち。それが新たなストレスを生み、悪循環に陥ってしまいます。
このタイプに必要なのは、「人は人、自分は自分」と切り離して考えられる適当力です。
家族であっても価値観が違うことを認めあい、相手がそこからズレても過剰に反応しない、期待や批判をしないことが大切です。
たとえば家族の行動に対して、前述したセルフトークで「◯△はこうあるべき、と思っている私がいる」と気づいたら、自分の価値観が狭いのではないかと疑うことから始めましょう。
「人はそれぞれ。違う価値観の人もいる」と認めると、違う見方ができるようになります。
2.6割できたら自分をほめる
失敗しないために準備も努力も一所懸命するのですが、それが自己肯定につながらなず、なんでも自分のせいにする人もいます。
ちょっとした失敗や他人からの指摘がストレスになり、「どうせ私なんて」「やっぱりダメなのよ」と落ち込んでしまいがちです。
このタイプに必要なのは、カンペキじゃない自分も自分だと認め、ほめてあげる適当力。たとえばコロナ禍で家族のための家事が増えたのなら、できないことに目を向けるより、「6割できた自分」をほめてあげましょう。
もし自分で自分をほめるのが恥ずかしい場合は、好きなタレントをセルフトークの語り手にして、「あなた、十分頑張ってるわよ〜」と想像上で激励してもらったり、自分で自分の頭をなでたり抱きしめたりすりこともおすすめです。
3.今できないことはいったん棚に上げる
ストレスを感じていても自分で気づかない、本音を隠して無理しているうちに、ストレスが溜まって身動きが取れなくなる人がいます。
人生に目標や理想は必要ですが、「家族はいつも仲よく助け合う」といった理想にしばられて自分が苦しくなっては本末転倒です。
このタイプに必要なのは、今は必要のないことを切り捨てたり、棚上げしたりする適当力。
セルフトークで活用してほしいフレーズは「ま、いっか」。
家族から理不尽な要求をされた時、やらなければいけないと思ったことでも、「ま、いっか。今はとりあえず聞いておいて、あとで適当にやろう」と考えてみます。
実は「適当に」と思ったほうが、ちゃんとできる時があることに気づけます。
そうすることで、結果的に自分の理想である「家族仲よく」を守れたりするもの。
誰に対してもちゃんとしたい、いい人と思われたい気持ちを客観的に見直して、今できることとできないことを仕分けることが大切なのです。
4.「私のせいじゃない」と断定する
真面目で頑張り屋、いつも一所懸命なあなたにおすすめの適当力が、何でも自分のせいにしないことです。
嫌なことがあったとき「私のせいじゃないのに」とモヤモヤすることがありますよね。
しかし場合によっては、「少しは自分にも責任があるかも」と思い当たったりすることも。
その線引きを「今日は人のせいにしちゃえ」「この件は私の責任だ」と能動的に断定するクセをつけると、ズルズルと長引くストレスを減らすことができます。
コロナ禍で、離れて暮らす親に会いに行けないことがつらい時、「遠くに住むことを選んだ私のせい」と思わずに、「そもそもコロナのせい!」と考えて、それ以上は悩まない。
そして親の好きな物を送ってあげたり、LINEや電話をしてみたりと、今この状況に「適当」な行動に集中することが大切です。
責任感が強く、なんでも一人で抱え込みがちな考えグセの緩和にもつながります。
まとめ
健康な体作りのためにトレーニングではある程度の負荷を筋肉に与えるのと同じように、心の健康づくりにもある程度「心の筋肉」に負荷を与えることが必要です。
スタンフォード大学の研究によると、ストレスはあるが、その事実に気づいて前向きにとらえている人は、ストレスがまったくない人に比べて寿命が長い傾向があることがわかっています。
長い間に染みついた自分の考えグセを直すのは無理、と思うかもしれません。
しかし考え方のクセを直す前に、大切なのは気づくことです。
気づきさえすれば多くの場合、その後の行動は変えられるものです。
自分のストレスに気づき、「適当力」でできることから一つずつ上手に対処していきましょう。