家族が家の中に閉じ込められるに等しい環境となりましたが、だからこそこの状態を利用してしっかり子どもに学ばせたい、心豊かに遊ばせたい、家族の絆を強めたいという前向きな気持ちになる親も増えたのではないでしょうか。
今回は、著者自身がモンテッソーリ教育で育ち、わが子を自宅で教育する人気子育てコーチでもあるエロイーズ・リックマン氏が、コロナでロックダウンしたロンドンで緊急出版した『モンテッソーリ式 おうち子育て』から、おうちでの子育てをストレスフリーに過ごすための方法を紹介します。
精神的な問題を抱える若者が増えている中、レジリエンスは、先行きの見えない今の時代を生きる子どもにとって非常に大切な力です。
レジリエンスとは、一般的に「復元力、回復力、弾力」などと訳され、近年は特に「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」という心理学的な意味で使われるケースが増えています。
さらにレジリエンスの概念は、個人から企業や行政などの組織・システムにいたるまで、社会のあらゆるレベルにおいて備えておくべきリスク対応能力・危機管理能力としても注目を集めています。
子どもにおいても、予測のつかない変化の激しい時代に是非とも育みたい必要な能力だと言えるでしょう。
親子の関係が前向きだと、困難やストレスに対してうまく対処でき、自信や自主性、相手の感情を理解するレジリエンス能力が育ちます。
子どものうちに、何かに夢中になれることに挑戦するのは、ストレスが原因で引き起こされる神経不安やうつなどを防ぐ効果があると、数々の研究から明らかになっています。
親としては、子どもには問題に立ち向かってほしいし、ストレスや変化にも対応していってほしいと考えるものです。
そのためには、子どもの欲求に応え、愛情を持って支えるだけでなく、自立につながる貴重な経験となる機会を見定める必要があります。
1.レッテルを貼らない
賢い子、やんちゃな子、器用な子、繊細な子、なまけ者、だらしない子、怒りっぽい子など、子どもにレッテルを貼り決めつけると、いつしか子ども自身がそれを信じてしまいます。
たとえよい意味で言った言葉でさえも子どもの個性をしばる可能性があり、こういった決めつけによるレッテルは成長の妨げになりうるのです。
なので親は、ほめる場合は「天才芸術家だね」ではなく、「この絵を見ると一生懸命描いたのが伝わってくるよ」くらいにしておいたほうがよいでしょう。
2.見方を変える手助けを
できないことではなく、できることに目を向けるように子どもを導きましょう。
ある同じ状況に対しても、マイナス面ばかりでなくプラス面に視点を変えて見るように促します。
たとえば、雨の日にテンションが下がりがっかりしている子どもには、一緒にペットボトルで雨粒を集めたり、レインコートを着てかたつむりを見に行ったりといった楽しみ方もできますよね。
3.大変な状況を利用する
子どもがつらい状況に置かれているときは、現実を無視して根拠なく「大丈夫だよ」などと言ってはいけません。
今の大変な状況に対して少しだけ違う見方をするように導き、どうしたら問題を解決できるか、どんな助けがほしいのかを訊いてみましょう。
4.問題は自分で解決させる
小さい子にも、困難を自分で解決させる場を与えてもいいでしょう。
たとえば、遊び場でほかの子どもとけんかになったとき、口は出さないままそばで見守ってみる、兄弟姉妹でいざこざが起きたら、同じ部屋に入れて自分たちで話し合わせる、といった具合です。
親はついつい間に入ってさっさと事を収めたくなりますが(その気持ちもよくわかります)、自力で問題を解決したり、ときには間違えたり、といった経験がレジリエンスを育てる貴重なチャンスになります。
5.失望や試練、失敗、ストレスも必要だと考える
つらい経験もレジリエンスを育てて、将来社会で生きていくためには必要です。
親であっても、すべての苦しみや痛みから子どもを守りきることはできません。
しかし、子どもの気持ちや失敗を見守ることはできるはず。
わが子が悲しんでいたら、自分のことのように胸が痛むのが親というもの。
できれば子どもが動揺する姿は見たくないものですが、子どもにとってのいやな体験を先回りして防ごうとするのは、子どものためになるとはいえません。
それどころか、子どもから悲しみや失望、怒りを感じる経験を遠ざけているうちに、無意識にそういった感情が悪いものだと教え込んでしまうかもしれません。
負の感情をどう解消するのか、そのプロセスを経験することが必要なのです。
6.自分で対処できる力に、自信を持たる
子どもが試練を乗り越えたら、それだけの力を持っていることに自信を持たせてあげましょう。
「すごく不安だったよね。でも、ちゃんとできたね」と、前向きに伝えるのが大切です。
例えば
「おばあちゃんが亡くなって、つらかったよね。 パパもママも、今でもとても悲しいよ。でも、おばあちゃんとの思い出が消えてしまうわけじゃない。 思い出すと、楽しかったなあって懐かしい気持ちになれるから」
7.リスクと子どもの自立のバランスをとる
現代の子どもは、小さなリスクからも遠ざけられ、十分な自立の場を与えられていません。
公園でも、手を泥だらけにして遊んだり、「高すぎる」ジャングルジムにのぼったりして怒られている子をよく目にします。
年齢や能力によってあえて子どもにリスクを与える場もありますが、小さな子どもでも1人で横断歩道を渡らせなさいとか、13歳の子に1人でバックパックで旅行をさせなさいとか言っているわけではありません。
危険を伴う遊びにもメリットはあります。
自分で危険の度合いを見積もる力は、将来的に必要となるからです。
レジリエンスは一朝一夕で身につくものではありません。
子どもがつらい状況にいるときは、親はいつでも愛情と共感を持って傍にいましょう。
それが、人生でどんなことが起きても子どもが自分で乗り切れるように育つための、最初の大切なステップだと考えてください。
コロナのような、まったく予想もしなかったようなことが起きたときは、誰だって、「大変だ」「どうしよう」と不安に襲われて、何もできない自分を追い詰めてしまうもの。
でも、安心してください。私たちにできることは、ちゃんとあります。
そりゃあ、地球規模で広がる病気を治したり、気候変動をただちに食い止めたりはできないでしょう。
でも、私たちにもできることはあるのです—自分だけでも取り組めて、世界を変えられる方法—それは、親子の絆を大切にはぐくむ、おうち子育てです。
子育てには、大きな力があります。家庭や社会、さらに世界をよくする力があります。
危機的な状況に置かれたときは、自分も不安を抱えつつ、家族の安全を守り、家族がお腹をすかせないように、家族ができるだけ安心して過ごせるように、気を配らなくてはなりません。
そんななか、親として今何を優先したらいいのか考えるのはむずかしいですよね。
でも、見方を少し変えれば、私たちは困難という名の挑戦をしかけられていて、どうやってこの状況を切り抜けられるか試されている、ともとらえられます。
親として、自分たちが大切にするものは何かを考え直し、子どもとのつながりを深める貴重な機会を与えられているのです。
この本では、そのためのヒント、そして、不安定な時代をおうちですこやかに生きていく方法をお伝えします。
何が起ころうとも確かなことが1つあります。
それは、あなたのお子さんは、いつでもあなたを必要としているということです。
まとめ
1. 家族の絆を第一に考える
2. 安定した生活のリズムを作る
3. 静かでシンプルな家庭環境を作る
4. 家族一緒に楽しく学べる方法を探す
5. 親が自分自身のケアをする
この育児法は、多くはモンテッソーリ教育をはじめとした世界中で実績をあげているメソッド基づくものですが、加えて著者自身の子ども時代の経験、そして今、愛娘とともに日々過ごしている自宅学習の経験から得た「おうちにいることの制約」のなかで、無理なくストレスフリーに実践できる方法です。
この記事が少しでもあなたの子育てのヒントになれば幸いです。