なかでも日本の女性は、世界経済フォーラムが2021年3月30日に発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート(世界男女格差指数)2021」においての男女平等の達成度が156か国中120位と先進国の中で最下位の結果で、まだまだジェンダー格差は大きく、仕事と家庭を両立しながら、完璧な子育てをしなくてはいけないというプレッシャーがあります。
今回は、全米の女子高校生が知性や才能、リーダーシップを競う大学奨学金コンクール「全米最優秀女子高生」で優勝したスカイ・ボークさんの母であるボーク重子さんが語る「やらない子育て」をもとに、子育てをひも解いていこうと思います。
料理は栄養のバランスを考えた全て手作りのものでなくてはいけない、よその家に負けないようにかわいいキャラ弁を作らなくてはいけない、毎朝きれいに髪を整え、子どもの服にはシミもシワもなく、先生や親の言うことをよく聞く良い子になるようにしつけもちゃんとして、家の中はいつも掃除が行き届き整理整頓された状態にしておく、など、子どものお世話係としての完璧なママでいることは、大きなストレスになります。
でも上記のような「きちんとした子育て」に見える行動は、ある2つのことを奪い、反対にきちんとした子どもを育てることを邪魔してしまうのです。
「きちんとした子育て」によって奪われていくのが母親の自己肯定感です。
自己肯定感とは自分自身の価値を認め、ありのままに受け入れた自分を愛し、大切にする力のことです。
健全な自己肯定感を持つ人は自ら人生を切り開いていく主体性を持ち、問題が発生しても自分の軸で決断をして解決することができます。
また自分の長所も短所も受け入れているので、他者に対しても絶対を求めず、寛容に対応しながら共感力と社会性に優れた態度がとれます。
批判や反対意見も建設的に受け止めることができるので、多様化が進む社会において必須であるコミュニケーション能力も優れています。
子育てにおいて最も大切なことは、子どもの自己肯定感を育てることなのです。
しかし「きちんとした子育て」を意識する母親は、自己肯定感を奪われがちです。
そのような母親を見て育つ子どもも、結局自己肯定感をうまく育めないまま成長してしまう結果に陥ってしまいます。
毎日やってもやっても終わりがないほどの母親としての作業の一つひとつに完璧を求めようとすると、すべてが中途半端になり自分の不甲斐なさに失望します。
キャパシティを越えて頑張りすぎるので、いつもイライラした状態を引きずり自分の感情をコントロールできず家族にイライラをぶつけ、そして、またそんな自分に罪悪感と劣等感を感じてしまう。
私はダメなママだ。こんなママでごめん。どうして私はちゃんとしたママになれないのだろう、とネガティブな気持ちが増していき、きちんとやろうとすればするほど自己肯定感は下がっていくのです。
問題なのはその親の自己肯定感の低さが子どもに伝染してしまうことです。
自分自身を肯定できず、自分の価値を認めず大切にできなければ、子どもに対しても同じように接することになり、「なんでできないの」「ダメじゃない」「がっかりよ」と声かけも自然とネガティブなものになります。
そういった親の態度が続くと、自然に子どもの自己肯定感も下がっていくという、負の連鎖を生んでしまうのです。
「きちんとした子育て」をやらないとき、必然的に子どもが自分で考えてやることが増えていきます。
もし「子育て=子どものお世話」という意識のままでいると、子どもに対して「親としてやってあげられなくて申し訳ない」という罪悪感を感じることになってしまいます。
だから「やらない子育て」でいいのです。
子どもは自分で考えて行動したことによって様々なことができるようになると、「できる」という自己効力感が育まれ、かつ「ママを手伝っている」という自己有用感も生まれます。
なんでも「自分でやってみよう」という主体性も芽生えてくるので、「やらない子育て」は逆にいいこと尽くしなのです。
やりたくなくてもやらなければならない時があるという自制心や責任感、自分でできないならどうすればいいか考える思考力も育まれます。
ママがやらないことで、子どもの生きる力を育めるという素晴らしい二次的効果があるのです。
そのために親と子ども、両方の自己肯定感を高めて、母親が「自立(自律)した幸せな親」のモデルになることが必要です。
その実践として、2つの方法をご紹介します。
1.「当たり前」ではなく、やった自分を褒める
「やらない子育て」とは文字通り「やりません」。
何をやらないか? それは「子どものお世話」です。
「きちんと」で想像する子育ての作業は「お世話」的な作業であることが多いのです。
今こそ「子育て=お世話」という考え方を変える時なのです。
お世話の部分はいわば代わりや手抜きがきく部分です。
料理も手作りにこだわらず市販のものでもいい、家事全般もすべて自分でやらなくても時には家事代行で間に合います。
夫にもっと家事育児に参加してもらうのもいいでしょう。
使えるものは使い、手を抜けるところは手を抜く、「やらない子育て」には子どもの生きる力を高める二次的効果があるのだから、そこに罪悪感を感じなくてもいいのです。
そして、「やらない」自分を褒めること。
子どもが生きる力を育む機会を作ることができる自分を、精一杯やることをやっている自分を褒めましょう。
家事や育児は一般的に「やって当たり前」という意識があるからか、「ありがとう」と感謝されることはあまりありません。
やってもやっても当たり前と思われ、感謝されなければ「こんなに頑張っている自分はなんなのだろう」と自己肯定感が下がっていきます。
まずは自分で自分を褒めましょう。
やって当たり前、できて当たり前、なことはないのです。
妻になり母親になり慣れないことを一生懸命やっているあなたはすごいのです。
だからどんな小さなことでもやったら自分を褒めていいのです。
でもやっぱり母親の仕事は子どものお世話じゃないの? と思われるかもしれません。
ひとりで何もできない乳幼児期には、母親が子どものお世話につきっきりになり集中することは確実に必要です。
しかし、言葉が出始めコミュニケーションがとれるようになる3歳頃になったら「やらない子育て」に徐々にシフトしていきましょう。
2.「自分の時間」をあらかじめ確保する
自分で考え、自分の正解を見つけ、主体性を持って進み、失敗したら立ち上がり、自らの人生を切り開いていく——
どんな親も子どもがそのように育ってほしいと思っているのではないでしょうか。
そのためには母親自身が「自立した人生」を送るロールモデルにならなければなりません。
だから、親であるあなたも自分の時間を作って、自分はどう生きたいのか、何をやりたいのか、に向き合いましょう。
ボークさんは娘さんが小さい頃から「ママにはママの人生があるの。だから夜10時半以降はママの時間」と言っていたそうです。
毎日ママの時間になると、自分の生き方を模索したり、キャリアアップのための勉強をする時間に当ててたのです。
ボークさんいわく
「おやつはいつだって市販だったし、夕飯は15分クッキング、失敗もいっぱいしたし、挫折もありました。時には髪を振り乱しての日々でしたが、娘はそんな完璧とは程遠い母親としての私の生き方を見て育ちました。娘のスカイは自分の意志で「全米最優秀女子高生」という奨学金コンテストに応募し、優勝しました。」
子どもに主体性を持ってもらうには、まず親自身が主体性を持つ。
そのためにはしっかり「自分の時間」を確保しましょう。
まとめ
母親は「子どものお世話係」にならない。
母親が自分らしく幸せに、自らの人生を切り開き、自分軸を持った人生を歩く背中を見せることで、子どもは親の生き様を学び、それが子どもの生き方のモデルとなっていくのですね。
子どもは言われたからやるのではなく親の背中を見て真似するのです。
子育ては終了しましたが、私は子どものお世話をしすぎた親のひとりかもしれません。
もっとやらなくてもよかったかも(笑)とボーク重子さんの本を読んで感じました。
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