成年後見制度は、認知症などの理由で自己判断能力の不十分な方々を、サポートしていくための制度です。
母の介護と並行に、私自身も成年後見人育成講座を受講して成年後見人を受任しました。
母は亡くなりましたが、現在も成年後見人は続けています。
今後も認知症を発症する高齢者が増えていくことを考えると、誰にとっても他人事ではありません。
しかし実際に成年後見人制度がどんな制度なのかを知っている方は、あまり多くないのではないでしょうか。
これから3回に分けて、成年後見制度の種類、役割、今後の課題などについて解説していきたいと思います。




成年後見制度とは


超高齢化社会になりつつある今の日本では、多くの方が健康的なシニアライフを送る一方で、認知症を発症する高齢者の数も確実に増えてきています。
認知症を発症すると、次第に自分自身では身のまわりの世話や介護サービスなどの行政手続き、財産の管理などができなくなり、誰かに頼らなければならなくなります。
また、認知症でなくとも、突然の交通事故などで、脳に損傷を受けてしまい自己判断能力がなくなり、自活不能となってしまうことも十分に起こり得ることです。
たとえ家族が近くにいたとしても昨今の「老老介護」しかり、すべての方が身近な人からの十分なサポートを受けられるという保証はありません。
特に財産の管理などは、複数人で行うことはかえって困難になり、単独で、この人が責任を持って財産を管理するという役割をきちんと決めたほうがスムーズに行くことがあります。

こういった諸々の問題を解決するために、2000年に介護保険制度とともにスタートしたのが成年後見制度です。
認知症などの脳障害および精神障害・知的障害などの理由により、自己判断能力が十分でない方々をサポートしていくための制度であり、具体的に言うと、買い物をするときに、通常より高い金額を支払ったり、訪問販売などで必要のない物を購入するなど、不利な状況に陥ることを回避することが目的となっています。

この成年後見制度には、3つの理念があります。

ひとつ目は、「ノーマライゼーション」
高齢者や障害者を特別扱いしないで、今までと同じような生活を送ってもらうというものです。

ふたつ目が、「自己決定の尊重」
今残っている能力を活用しながら、本人の意思決定を尊重していくものです。

最後が、「身上配慮義務」
本人の社会から置かれた状況を把握し、配慮していくものです。

成年後見人の主な仕事は財産管理ですが、それに留まらず、本人の生活全体を支えることも役割とされています。

先ほど申し上げた通り、成年後見制度は、法務省を管轄に2000年に設けられた制度です。
利用者は年々増加傾向にありますし、今後も成年後見制度を活用する人は増えていくことでしょう。
成年後見人を受任すると、健康なときに選んでおいた成年後見人が、自活が困難となった被後見人に代わって、財産管理や介護・福祉サービスの手配・手続き、税金などの納付手続きなどを行います。




「法定後見制度」と「任意後見制度」

認知症などの脳障害および精神障害・知的障害などの理由で、自己判断能力が十分できなくなった時に、本人に代わって、身内の方々、もしくは民生委員や市区町村の役員などが、家庭裁判所に後見人の選任申し出を行い、家庭裁判所によって成年後見人が選出されます。
家庭裁判所では、多くの場合、親族がいる場合は親族を後見人に選出します。
成年後見人で親族が占める割合は、約70%と言われています。
一方で、身寄りがない方や親族であると問題が生じる恐れが強い場合は、弁護士や司法書士などの法律の専門家や、社会福祉士などが選出されます。

家庭裁判所によって、財産管理能力や保護・介助力がきちんとあり、しっかり後見できる方が成年後見人として選出されていれば問題はありませんが、親族の場合は、実はなんらかの思惑があって成年後見人に名乗り出る場合もあります。
家庭裁判所に後見人の選任申し出を行った段階で、本人は自己判断能力が不十分となっているので、自身の意思で後見人の選出ができないというデメリットもあり、きちんと本人をサポートできるのか不安の残るケースもあります。

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
その中の法定後見制度はさらに3つの種類に分けることができます。

【後見人】 被後見人の状態…判断能力がまったくない
【保佐人】 被後見人の状態…判断能力が著しく不十分(ときどきはしっかりしている)
【補助人】 被後見人の状態…判断能力が不十分(軽度・最近物忘れが出てきた状態)

私は法廷後見制度による一般市民の第三者が受任する成年後見人ですが、一般に「成年後見人」という場合は、法廷後見制度の後見人を指すことが多いです。
申し立てができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官・市区町村長などで、権限として財産行為についての全般的な代理権と取消権が与えられます。

任意後見制度とは、自己判断能力がある段階で、自分自身で成年後見人を選ぶ制度です。
いくつかの制限がありますが、ご家族、親族はもちろん、弁護士や司法書士など、自分が信頼できる人を後見人に選ぶことが可能です。



身内を後見人とした場合は、報酬を支払わないのが通例ですが、弁護士や司法書士などに依頼した場合は、「契約」となりますので報酬が発生します。
また弁護士や司法書士は一人に対して何人もの被後見人と契約できますが、私のような市民後見人は基本的に無報酬で活動しており、成年後見人ひとりに対し被後見人もひとりに決められています。



まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。

健康な状態で自分が成年後見人の申請をすることを想像できる方は、あまり多くないと思います。
しかし自らの認知機能が十分でなくなってからだと申請を考えること自体難しくなるのです。
将来的に自分の生活全体をサポートしてもらう人材を、健康時から考えておくことはとても大切です。
備えあれば患いなし。
次回は、法定後見人と任意後見人のメリットと、デメリットについてご紹介したいと思います。

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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