猫は肉食動物なので、歯は、ほとんどが肉を切り裂きやすい先の尖った形をしています。
小さいけれどしっかり尖っていて、かわいい猫の歯ですが、人の歯と同じように生え変わったり、歯の病気になってしまったりすることがあります。
今回は、猫の歯についてご紹介します。
切歯
正面に上下各6本並ぶ前歯です。
小ぶりで間隔をあけることなく並び、上の歯が下の歯に少し被るように咬合します。
獲物を捕らえたり、肉を引っ張ってちぎったり、毛づくろいをするときに、櫛の様な役割をすることもあります。
犬歯
切歯の両側に上下合わせて4本ある、大きく尖った歯です。
最も目立つ犬歯は、獲物の首筋に「くさび」の様にしっかり刺し込んで仕留めます。
猫にとっての大きな武器で、戦うときは、犬歯をむき出しにして相手を威嚇します。
また、犬歯は肉を引き裂く際に使われることもあります。
臼歯
犬歯より奥に並ぶ臼歯は、前臼歯が上に6本、下に4本、後臼歯が上下各2本あります。
人の臼歯は、文字通り臼状で、食べ物をすりつぶす役割をしますが、猫には食べ物を咀嚼する習慣がないため、臼歯を鋏の様に使って肉を噛み切り、飲み込みます。
人の様にすりつぶす機能を持つ歯は存在しません。
猫の乳歯は、切歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/2の全部で26本です。
永久歯の本数は、切歯3/3(上顎片側/下顎片側)、犬歯1/1、前臼歯3/2、後臼歯1/1の全部で30本です。
ちなみに、人は切歯2/2、犬歯1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3の全部で32本です。
切歯、犬歯が生後3週から4週にかけて、遅れて前臼歯が生後5週から6週にかけて生えそろいます。
その後、猫も人と同じように乳歯から永久歯に生え変わります。
乳歯が永久歯に生え変わるのは、生後11週齢頃(約3ヶ月)から始まり、25週齢頃(約6ヶ月)ごろ完了します。
生え変わりも切歯、犬歯、前臼歯、後臼歯の順で始まります。
それぞれの歯の種類の中では、下顎の方が上顎よりも早く生え変わり始めます。
また、人は、乳歯が抜け落ちてから永久歯が生えますが、猫や犬では、永久歯が生え始めるのと同時に、乳歯の歯根が吸収されて不安定になり、永久歯に乳歯が押し出されるようにして生え変わります。
そのため、生えてきた永久歯とまだ抜け落ちない乳歯とが共存していることが多いです。
猫は歯の生え変わり時期になると、歯茎がムズムズしてくるらしく、おもちゃや人の手を噛むことが多くなります。
乳歯や、生えたばかりの永久歯はまだ歯の表面の象牙質の壁も薄く、折れたり、欠けたり、抜けたりすることがあります。
歯が折れたりしないよう、固いものや歯がひっかかってしまうようなモノで遊ばないよう気を付けてみてあげましょう。
もし、歯が折れてしまったときは、動物病院を受診するようにしましょう。
乳歯が折れると、残った乳歯が、永久歯が正常に生えてくるのを妨げてしまうことがあるため、残った乳歯を速やかに抜く処置を行わなければなりません。
永久歯が折れてしまったときは、折れた歯の種類やその状態によりますが、いずれも、すみやかに病院で診てもらうこといましょう。
抜けた乳歯は猫が飲み込んでしまう場合が多いので、もしかすると抜け落ちた乳歯をうんちのなかに見つけることがあるかもしれません。
なので、いわゆる「虫歯」にはなりません。
その他にも理由は諸説あり、猫の歯の形状から汚れや細菌が残りにくいためとも考えられています。
しかし虫歯にはならないからといって、安心はできません。
猫も人と同じように歯の病気になります。
最も多くみられるのは歯周病で、歯に付着した細菌やその細菌が出す毒素によって歯肉や歯周組織に炎症が起こる病気です。
歯肉の赤みや腫れなどの歯肉炎に始まり、徐々に症状が進行して歯周炎になると歯茎からの出血や、歯がグラグラする、抜けるなどの症状に進行していきます。
歯に細菌の温床となる歯垢(プラーク)や歯石が多く付着していたり、歯石などの付着がない場合でも糖尿病などの慢性疾患や猫白血病ウイルス(FeLV)感染症や猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症などによって身体の免疫力が低下している状態だと、歯周病になりやすくなります。
猫のよだれがひどいときや口臭が気になる、食欲がなくあまり食べない、顔の周囲を触られるのを嫌がる…そんな症状が見られたら、それは歯周病のサインかもしれません。
これらは、歯周病の進行によって、歯の根元が緩くなってしまい、歯が抜けたり、だんだん歯が下がってくることでみられる症状です。
歯や口の異常は、年齢以外に体質や全身性の病気による影響なども多く受けるため、高齢になってみられる症状といっても、何歳から多くなるということはありません。
猫の小さな口を確認するのは難しいですが、シニア期とされる7、8歳以降、とくにハイシニアとなる10歳以降はこまめに確認をするようにしましょう。
高齢で歯が自然に抜けてしまったり、歯周病の治療などで歯をたくさん抜いてしまったりすると、ごはんを食べにくいのではないかと心配になりますが、ほとんどの場合、問題はありません。
猫の歯は野生での食生活に適した形状なので、現在のペットとしての食生活では、大きな支障はないのです。
臼歯が抜けて少なくなると、粒の大きいドライフードは食べにくくなり嫌う子が多いようですが、小さい粒のドライフードや半生タイプのものはそのまま飲み込んだり口の中で少しつぶすようにして食べることができます。
気をつけたいのは、猫の場合、歯の有無ではなく、口腔内に痛みがあり食事をとれないことがあります。
その場合には、より水分が多く滑らかな食事にするなど工夫をしてあげましょう。
まとめ
歯周病は、治療をしないでいるとどんどん進行していいきます。
さらに、口の中だけに留まらず、炎症を起こした部分から侵入した細菌が血液中に入り、全身に運ばれて心臓や腎臓、肝臓などで病気を引き起こす原因となる可能性があることも報告されています。
猫の口は小さく、しっかり見ることは難しいのですが、まずは口の中をよく見て、歯石や歯肉炎がないか、口内炎ができていないかを確認してあげてください。
口腔内のトラブルは早めに気づいて、動物病院で適切な治療を受けることが大切です。
口の中に異常が見られないのに口臭がきついという場合は、歯ではなく身体の病気かもしれません。
こちらも早めに病院へいくようにしましょう。