家族との時間が増え、全員が顔を合わせて食事ができるようになってよかった、というポジティブな意見がある一方、密かにイライラを募らせてしまってい人もも少なくないのでは。
そのイライラの原因のひとつに「名もなき家事」の存在があります。
日常の見えない家事をこなす妻を横目に「俺も家事をやってる」にイラッとくることもしばしば。
夫が知らない名もなき家事とは何でしょう。
カテゴリー分けされた家事ではないので「見えない家事」とも言われます。
例えば考えられるものとして
消耗品の補充
冷蔵庫内の整理
収納内の衣替え
洗濯前の付け置き洗い
子どもの持ち物の準備
ゴミの分別、などなど…
例に挙げたのは、見えない家事のほんの一部ですが、このようなどのカテゴリーにも属さない家事作業をひとつひとつ挙げていくと、きりがありません。
かといってその作業はやらなくてもよいわけではなく、生活の中で必要なのにもかかわらず「家事」とはみなされず、家族には気づいてもらえないことが多いのです。
2020年5月にビースタイルグループが既婚女性866人へ向けて実施した「コロナ禍と夫の家事育児」のアンケートによると「コロナ禍で在宅時間が増えている中、夫は家事・育児に十分取り組んでいるか」という質問に対し「十分行っていて満足」と回答したのは18.2%、「少しは行っていて不満はない」が31.6%となっています。
一方、「少しは行っていたが不満」が29.6%、「全く行っておらず不満」が20.6%と、夫が十分に家事・育児に参加していないと感じている妻も半数以上いることがわかります。
また、2020年6月に大和ハウス工業が20〜40代の既婚男女1,200人を対象に実施したアンケートによると、女性の72%がコロナ禍で名もなき家事が増えたと回答しています。
その内容として「家族への手洗い・うがいの呼びかけ」「感染予防のためのマスクや消毒液・ティッシュペーパーなどの残量確認や購入」などコロナ拡大ならではの理由が挙げられています。
これらの結果プラス、コロナによって夫がリモートワークになり自宅にいる時間が増えたにもかかわらず、妻の家事の負担感は以前と変わらないどころか、増えてしまった感覚を抱える妻が多い傾向が見受けられるのです。
1.夫の家事を妻がフォローしている
いまの時代は、夫も家事や子育ての協力をするという認識が定着しつつあり、夫婦で家事を分担している家庭も少なくないと思われます。
しかし夫が認識している「自分は家のことをやっている」と、妻の認識とはズレがあり納得いかないことがあるのです。
例えば、夫が担当している家事を「風呂掃除」「皿洗い」「子どもを保育園に送る」だとします。
しかしこの家事を行うための「見えない家事」にあたる、洗剤やスポンジ・三角コーナーなどの購入や補充・交換、子どもの登園時の準備や着替え・朝食を食べさせることなどは全部妻がやっていませんか。
夫は家事・子育ては妻と分担していると思っているのでしょうが、妻としては口には出さないものの内心、本当はもっと細かな作業があるのよ!と感じているかもしれません。
実際にその裏付けとして2019年9月に公表された厚生労働省の「全国家庭動向調査」では、「普段『家事』として語られることの少ない『食品や日用品の在庫の把握』や『食事の献立を考える』などの日常的に必要な作業について、主に妻が担っている」との回答に約9割の主婦がYESと答えています。
2.感謝されることが少ない
妻がいくら見えない家事をやっても、そもそも夫や家族にははその家事の存在自体が見えていないので、いくらやっても「ありがとう」とお礼を言われたりすることは少ないといえます。
ただし、見えない家事に気づいていない段階では夫も家族も感謝のしようがないため「感謝の言葉がないなんてひどい」などと徒労感を感じてしまうのは早計かもしれません。
3.役割が固定化している
妻は「気づいた自分がやったほうが早い」と考え、見えない家事の担当は自分というように、自然と役割が固定化してしまっている家庭もあるでしょう。
女性のほうがバランス感覚に優れ、マルチタスクが得意な傾向にあるとはいわれます。
細やかな配慮ができる能力も高いことから、見えない家事に気づいてこなすのも、必然的に妻のほうに偏りがちです。
ただし、妻のほうが働く時間が長く、夫が家事・育児をする割合が高い場合などは、夫が主に見えない家事をしている家庭があることも考えられます。
どちらか一方に見えない家事の負担が偏る原因としては「男女の性質の違い」のほかに「その家庭での役割」という要素も大きく関係しています。
4.妻自身も自覚していない
名もなき家事を担当していると、それが「家事」であることも意識しないことが考えられます。
自分がやることが当たり前になり、大量の見えない家事が生活タスクに組み込まれているので、肉体的・精神的な疲れを感じているにもかかわらず、その原因は名もなき家事にあることには気づかないことが少なくないかもしれません。
コロナによって在宅時間が増えたことで、以前よりもより夫と家事を分担できるようになり、ようやく自分の家事負担の多さを自覚できた妻もいることが考えられます。
5.「見える家事」に文句をいわれる
夫が妻のやった家事に文句をいうことがある場合、たとえば「料理が手抜き」「洗濯のたたみかたが雑」など、たいていは「見える家事」に対してだと思います。
実質的には通常の家事に加えて「見えない家事」も抱えている妻の負担が大きいのに、夫からは「見える家事」だけを見て判断されるのはストレスが倍増して、虚しくなってしまいます。
放送作家の野々村友紀子さんは、自分がやっている見えない家事の多さを知ってもらうために148項目もの「家事リスト」を書き出し夫に共有したことを『夫が知らない家事リスト』(双葉社)で紹介しています。
著書では、見えない家事のエピソードがユニークに紹介されています。
夫が知らない家事リスト
夫に見えない家事の存在を理解してもらう解決策として、いつもやっている家事を夫婦で1週間ほど交換してみるのもよいでしょう。
相手のタスクを自分でこなすことによって、これまで見えていなかったやらなければならない家事に気づいてもらえるかもしれません。
そうすれば「全体を見て家事をする」というイメージを共有できるようになり、すり合わせができるはずです。
まとめ
見えない家事の存在をすぐに夫にわかってもらうことはむずかしくても、家庭ごとに、妻の見えない家事の負担を減らしていくための解決策を見つけていくことはできそうですね。
見えない家事の存在を家庭内で共有することは、生活を円滑に回していくためには実は必要不可欠なのかもしれません。
妻ばかりが見えない家事を担当していると、いつまで経っても妻の負担感は軽減されないままです。
「ちょっとしたことだし」「ついでだから」とやってしまわず、夫と話し合う機会を設けるなどして、改善していくための行動を取っていくことが「自分ばかり見えない家事をやっているモヤモヤ感」を軽減する早道かもしれません。