デンマークの社会は「成熟社会」とも呼ばれており、医療費、出産費、教育費等がすべて無料で日本では考えられないほど充実した社会福祉サービスが提供されています。
高齢者に対する社会保障制度もとても手厚く福祉や介護にもたくさんの保障が設けられています。
今回は介護の観点から高齢化対策モデル国のデンマークを掘り下げたいと思います。
総面積は4万3,098キロ平方メートルでユトランド半島と407の島々からなり、そのうち70の島に人が居住しています。
国土は大半が平地です。
気候は温帯に属し、温暖で雨の多い冬と、涼しい夏が特徴です。
人口560万人のデンマークは、世界で最も小さな国の1つで、人口の約4分の1が首都コペンハーゲンに住み、87%が都市部で生活を営んでいます。
公用語のデンマーク語は、ノルウェーやスウェーデンといった北欧諸国の言葉とよく似ています。
デンマーク人は今あるものに感謝する能力に長けていて、今の状況に満足している人が多いのです。
社会が非常に平等なので、誰にでもチャンスがあるということが大きいのかもしれません。
北欧諸国全体に言えることですが、誰もが高等教育にアクセスできるため、自分がなりたいものになれるというチャンスがあります。
デンマークは、消費税が25%、所得税が50%を超えていて税金の非常に高い国のひとつです。
しかしその代わりに、医療費や保健・介護サービスがほとんど無料で受けられるといった手厚い社会福祉サービスが提供されています。
日本との最大の違いは、社会福祉にかかわる財源は全て税金で賄っていることです。
それゆえに、一見驚くような税率でも国民の満足度は高い状況にあるのです。
実際、2016年に国連が行った幸福度調査でも、北欧5カ国はすべてトップ10入りを果たしています(日本は53位)。
とりわけ、1位となったデンマークでは「人生がつらい」と感じている人はわずか1%と幸福度の高さが際立っています。
そういった幸福度の高いデンマークの社会福祉制度を簡単にご紹介すると
●医療費が無料
デンマークでは、日本でいう「かかりつけ医」にあたる「家庭医」と「病院」という2段階の診療システムが設けられています。
体調が悪いときやけがをしたときはまず家庭医に診てもらい、家庭医の診断結果に基づいて総合病院のような大きい病院に送るかを判断します。
医療費のすべてが無料というわけではなく、無料になるのは「病院」だけで「家庭医」は補償対象外になっています。
命に関わる重篤なケガや病気に対して100%手厚く保障がある上に、スムーズに診療を受けられるような仕組みになっている点もメリットです。
●出産費用、教育費用が無料、育児制度も充実
デンマークでは、出産費と幼稚園〜大学までの費用がすべて無料です。
日本との最大の違いは、お金をもらって大学にいくことが当たり前ということですね。
●充実した高齢者福祉
デンマークの年金制度は「国民年金」「労働市場付加年金」「早期退職年金」の3種類ありますが、中でも特殊なのが「国民年金」です。
年金受給者の収入や家族構成など様々な状況に応じて、毎年調整されます。
1年ごとに調整することで公平性を保つことができるそうです。
確かにデンマークは税金が高いのですが、国民の納得するたくさんの保障が受けられるようになっています。
デンマークが高齢者モデル国といわれるのは、ただ単に保障がすごいというだけではありません。
デンマークの高齢者福祉に関してもう少し掘り下げてご紹介しましょう。
最近デンマークでは、「老人ホームをなくし在宅ケアを推奨する」という方向に舵を切りました。
デンマークは1960年代にすでに高齢者率が10%を超えていました。
当時は、日本でいう特別養護老人ホームのような「プライエム」と呼ばれる施設が多数建設されていました。
今の日本のモデルと少し似ています。
しかし、デンマークでは1979年に設立された「高齢者委員会」で、将来の高齢者福祉をどう構築していくのか基盤を決めるために「高齢者三原則」の策定しました。
これによりデンマークの高齢者福祉は大きく舵をきりました。
高齢者三原則とは
1.生活の継続性に関する原則
これまで暮らしてきた生活と断絶せず、継続性をもって暮らすことを指し、住み慣れた環境で可能な限り暮らし続けることを支援し「在宅介護」の充実につながる原則です。
2.自己決定の原則
高齢者自身の自己決定を尊重し、周りはその意思をサポートし支えるということを指し「高齢者も、一人の人間であることには変わりがない」という尊厳の尊重に関わる原則です。
3.残存能力の活性化に関する原則
これは加齢によりできなくなったことではなく、今ある本人のできる能力に着目して、自立を支援するという原則です。
「高齢者三原則」に基づき「老人ホーム」から「在宅ケア」に大きく方向転換されました。
これは財政的な問題からきているのではなく、福祉が「過剰なケア」を提供せずにお年寄りの自立を支援するものであるという哲学に基づいています。
というのも、「高齢になっても、何も出来ない人になってしまうわけではない。」「介護サービスを利用するようになっても、全てを丸投げにして受け身の暮らしをしなければならないわけでもない。」からです。
本人の意思に基づき、どこまで支援すべきかを考える原則です。
支援に介入しすぎてできる能力を悪化することのないように気を配ることが必要だと考えられているからです。
このように、保障というベースはあるものの、高齢者がいつまでも自立した生活を送れるように国をあげて舵をきったのです。
超高齢者社会が目のまえに迫る日本においてもこういった部分は見習わなければならないし、徐々にではありますがデンマークモデルに近づいているように思います。
私たち日本人もデンマークのような「成熟社会」と呼ばれるような社会システムを構築できるよう一人一人が何が出来るかを考えていかなければならない時に来ているようです。
まとめ
今回は、高齢化対策モデル国「デンマーク」の福祉や介護について、ご紹介しました。
デンマークが高齢者対策モデル国と言われている理由がおわかりいただけたでしょうか。
デンマークも一朝一夕に介護福祉のモデル国家となったわけではありません。
増加する高齢者に対し、過度なケアを提供するのではなく、どう自立をサポートしていくかという方向へ国を挙げて考え方を方向転換しただけなのです。
身体が不自由になっても、認知症になっても、ひとりの人間としての尊厳は失われません。
これをきっかけにご自身の身近な介護を考える際に「自立支援」について目を向けていただければ幸いです。
ただ今の日本においては、自立を支えるのが家族だけに限定すると経済的、肉体的、精神的に疲れ切ってしまう恐れがあります。
介護者の負担を抑えて高齢者が自立した生活を営めるように周囲や自治体のサポートを積極的に受けてください。
もしかしたら…と思ったら、すぐに自治体や周囲に相談することをお勧めします。
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