フランクル心理学における心理療法に、「逆説志向」(paradoxical intention)と「反省除去」(dereflexion)があります。
これらは、フランクル心理学の2大技法と呼べるものです。
フランクルが提唱した「逆説志向」とその根幹にある考え方でリンクする手法が「反省除去」です。
「反省除去」とは、自分のことばかりに目を向けないようにという事です。
これを「脱反省」ともいいます

例えば、不眠症で悩んでいるとします。
毎晩、眠ろうとしても眠れない、何とか眠らなくてはと悶々としている時、その人は全意識が自分に向いています。
自分を過度に観察する「自己過剰観察」の状態なので、不眠は益々ひどくなっていくのです。
「逆説志向」はユーモアを交えて自分の状況を客観的に笑い飛ばすことで、過剰志向をゆるめる効果が期待できる療法です。
自分のことに目を向けないことで効果を発揮するのです。

今回は「反省除去」について話したいと思います。



「反省除去」とは

「反省除去」とは、自分を過剰に意識することによって生じる不都合な症状を、その過剰な意識を除去することによって、とり去ろうとする心理療法です。
「反省除去」は「脱反省」とも訳されます。
反省するというのはは、自分のことや自分のした行いを振り返り、繰り返しよく考えることです。
反省をする時、意識は自分に向いています。
この自分に向ける意識をやめることが「反省除去」のポイントになります。

フランクルは「反省除去」の事例としてスランプに陥ったバイオリニストのことを取り上げています。

そのバイオリニストは、もっとうまくバイオリンを演奏するためにとにかくできるかぎり意識的に演奏をしようと努力をしました。
バイオリンを身体のどの位置にどう置くかから始まり、弾き方、演奏姿勢など、とても細かいことまで意識して上手く弾く自分を作り上げようとしました。
演奏の度に、どこが悪くて、どこがよかったを常に反省し、意識を常に自分とその態度に向け続けていました。
その結果、ひどいスランプに陥りバイオリンを弾くことが出来なくなってしまいました。
フランクルは、このバイオリニストに対して「反省除去」を説明し、あまりにも意識的に何かをしようとしている点をやめるよう助言しました。
過度の自己観察を手離しうまく弾くという意識を捨て去り、もっと無意識を信頼するように求めたのです。
「反省除去」という助言を受けたバイオリニストは、療法が功を奏し、本来の創造性を発揮できるようになり、スランプから抜け出すことができたのです。

音楽家は素晴らしい演奏をしようとして、つまり、過剰に芸術性を志向したがためにむしろ、創造性を見失ってしまったのです。

フランクルはこう書いています。

「過度の自己観察、──まるでひとりでに行なわれるかのように無意識の深みの底でなされねばならぬはずの仕事を意識して「行なおう」とする意志、──それが創造的な芸術家にとって一種のハンディキャップになることは稀ではない。そこでは不必要な反省はすべて有害なものでしかありえないのである」
『神経症1』(V・E・フランクル[著])





「反省除去」から「自己超越」へ

「反省除去」を必要とする場面の根幹には「自己執着」があります。
「自己執着」という否定的な状況を「自己離脱」の力を使って肯定的な状況に転換させていくのが「反省除去」です。
この手法はフランクルが強調する「自己超越」へとつながっていきます。
「自己超越」とは、文字通り「自己」を「越えて」いくことです。
自分の中に志向するのではなく、自分を越えた存在に志向し、我をを忘れて没頭することです。
先のバイオリニストの例のように、芸術家は芸術作品に向けて意識を集中し、自分自身を事物へゆだねることで、人は不安から解放され創造的な価値を作り上げるのです。
自分を省みる適度な反省は必要ではありますが、自分のことばかり考える「過度の自己観察」は、自分が自分に囚われることになります。
過度に自分を観察している限り、集中することはできないのです。

理想は、仕事や勉強に集中できることです。
では集中している時、「自分の意識」はどこにあるでしょうか。
ものすごく集中できている時には、自分を意識する気持ちは消えていませんか。
好きな趣味に没頭して、ふと時計をみたら、時間があっという間に過ぎていた、とか、気づいたら窓の外が暗くなり夜になっていた。
そんな経験をしたことのある人もいると思います。
超集中ともいえる状態の時には、自分が何かをしているという意識すら消えることがあります。
日本では「我を忘れて…」と表現することがあります。
自分に意識を向けず、自分のことを考えずに没頭している時が「理想の意識」(自己超越)です。




「ロゴセラピー」の時間の流れ方

日常で考える時間のとらえ方は、過去⇒現在⇒未来へ流れるのが普通です。
しかしフランクルは「ロゴセラピー」で逆の時間の流れ方に視点を当てています。
逆の時間の流れ方だと、未来⇒現在⇒過去になります。
未来から今何をするべきかを考えて行動することで、過度の自己観察に陥らないようになります。
自分の身体や心を超えた「精神次元(精神的無意識)の力」を信頼し、それに自分をゆだねることで、その人が本来に持っている創造性を実現させ、創造された結果はあなたの業績となって過去に蓄積されてゆくのです。

フランクルは「精神次元(精神的無意識)の力」とは

「芸術的インスピレーション」
「愛」
「良心」


であるとしています。

自分の未来(人生)から問われている課題に今、どう応え、過去に蓄積していくか、瞬間瞬間の問いかけに敏感に応答していくことが大切なのです。

注意:上記「反省除去」内容の自己判断ついては、すでに精神科やメンタルクリニックに通院されている方は、必ず主治医のご判断に従ってください。





まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。

フランクル心理学の2大技法「逆説志向」と「反省除去」をご紹介しました。

どんなときも人生には意味がある、あなたを待っている誰かがいる、あなたを待っている何かがある、そしてその何かや誰かはあなたに発見され、実現されるのを待っている。 どんな人にもその人にしか実現できない人生からのミッションがある。

とフランクルは言います。

今、ここで、この瞬間に自分に問われているミッションは何かを受け止め、敏感に反応して、信じる態度をとり続けることで、意味のある人生になっていくのだと思います。

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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