まだ幼稚園や保育園に入園する前、現代の家庭環境ではよほどの大家族でない限り家庭内で集団生活を送る状態にはならないので、発達障害の症状は家庭の中にいるとあまり目立ちません。
親が敏感に気がつくこともありますが、幼稚園や保育園に入園後、先生が気づいたという場合が多いのです。
それは、集団の中にはいっていろいろな行動をすることにより、発達障害の子どもが困ってしまう機会が多くなるからです。
今回は子どもの発達障害についてご紹介したいと思います。
もし子どもが苦しんでいれば真っ先に気がつく存在です。
親が理解して味方になってくれないと、子どもはもっと苦しみます。
もし本当に障害があるとしても、早く気がついて対応してあげることで、無用に心を傷つけることを防ぐことができます。
もしかすると発達障害かもしれない、と不安に思っているだけで、「まだ問題を起したわけじゃない」「先生から指摘されていない」と、気がついていないふりをすることはやめましょう。
また、自分の子どもに発達障害があるかもしれないと感じた時に、子どもの欠点や苦手なことを、親のやり方で克服させようとすることもよくありません。
苦手なことを克服するために繰り返しやらせることで、慣れさせて解決しようとする親の行動をよく耳にします。
例えば、聴覚過敏の子どもを無理やり雑踏や人混みのなかに連れていき、わざと大きな音の環境に耐えさせることやADHDの子どもにじっと座っていることを強要するなどがそうです。
障害がある子どもにとって、苦手なことというのは、わがままや身勝手というのではなく耐えがたい苦痛なのかもしれません。
それを一番信頼している親から無理強いされることは、大きな心の傷(トラウマ)となる可能性もあるのです。
【子どもが急かしてくるとき】
・NG「しばらく待っててって言ってるでしょ! 」
・OK「5分後にもう一度声をかけてくれる?」
【「もう学校には行かない! 」と言ったとき】
・NG「みんな行ってるでしょ!そんなことを言わないで!」
・OK 「どうしてそんなに嫌なのか教えて」
【親の考えと違う主張してきたとき】
・NG「それは間違ってる」
・OK「あなたはそういう意見なんだね」
【深夜までテレビを観ているとき】
・NG「いつまでテレビ観てるの! 早く寝なさい」
・OK「先に寝るねー。おやすみ! 」
【進路に悩んでいるとき】
・NG「あの学校に合格さえすれば大丈夫」
・OK「おつかれさま。なんだか悩んでいるみたいだね」
親として、子どもが生きていくことを好きになるように、家でラクにすごせることを第一に考えていくことが、障害のある・なしにかかわらず、子どもを幸せな気持ちにさせるのではないでしょうか。
下のチェックリストに、一般的に発達障害の傾向のある子どもに見られる特徴を挙げています。
チェックリストで確認してみよう!
極度の人見知り
同年齢くらいの子と遊べない
衝動的で急な行動が多い
癇癪を起こすことが多い
簡単な質問に答えられない
会話が成り立たない
言葉が遅れている
お気に入りがあるとそればかりになる
新しい場所や人に接するのを非常に嫌がる・不安がる
気に入らないことがあると手が出る
ごっこ遊びをしない
必ずしもチェックリストにたくさん当てはまったからといって、発達障害であるとは言い切れません。
成長がゆっくりな子かもしれませんし、一人遊びが好きなだけかもしれません。
すぐにうちの子は発達障害なんだ、とはならないようにしてください。
少数派の個性的な性質を持っていると考えることが大切です。
ただし集団生活が苦手というのは事実なので、気になるなら幼稚園や保育園の先生、小学校なら担任の先生やスクールカウンセラーやかかりつけの小児科の医師など、子どもに関わる仕事をしている専門家に心配な内容をどこに相談したらよいか尋ねてみてください。
多くの子どもを見てきている専門家ですから、たくさんの有益な情報を持っているはずです。
専門機関に相談すべき問題なのかどうかを含めて、親として不安に感じている点を正直に話しましょう。
すぐには適切な情報が得られなくても、心配を相談するだけでも気持ちが楽になることがあります。
1.ASD(自閉症スペクトラム症)
ASDは、こだわりが強かったり、感覚過敏、他者との関わりを持つ社会性に問題がある発達障害です。
100人に1〜2人の割合で存在すると言われています。
1歳を過ぎたころから、「目が合わない」「指さしをしない」「他の子に関心がない」などの特徴がみられるようになります。 集団行動が苦手で一人遊びに夢中になります。
会話のキャッチボールが難しいと感じることも。
好きなことには何時間でも熱中しますが、はじめてのことや決まり事が変更されたときの対処が苦手な傾向があります。
以前は、言葉や知的能力に問題がない場合は、他人への関心に乏しい高機能自閉症や、他人に関心はあるが人間関係の取り方が個性的であればアスペルガー症候群などに分類されていました。
このような子どもたちは、知的機能が高く、努力して自分なりになんとか集団生活に順応しようとするため、幼児の時には障害に気づきにくい特徴があります。
小学校に入学してから、グループで行動できない、曖昧な言葉のニュアンスが理解できずにとんちんかんな会話をするなどの問題が起こり、はじめて障害が疑われることもあります。
2.ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHDを持つ子は7歳までに、じっとしていられない多動性や結果を考えない衝動的な行動、不注意によるミスなどの症状が現れるようになります。
多動・衝動性優位型と不注意優位型、混合型の3つに分類されます。
多動は一般的に成長とともに軽減されていく傾向にありますが、衝動性や不注意は半数が青年期まで、さらにその半数が大人になっても続くという報告があるようです。
子どもの成長にはバラつきがあります。
活発な男の子に幼児の頃から親が厳しく接すると、自己肯定感が低下し、長所であるはずの活発さや好奇心の旺盛さ、集中力などが育ちそこなってしまいます。
他の子ができていることが、どうしていつまでも自分の子はできないのか、と親が焦る気持ちになるのは当たり前です。
しかし、うちの子は他の子とは違って、先に行動力や好奇心が育っているのだ、自分をコントロールする能力はあとから遅れて育ってくるのだということを意識して、子どもに向き合うことが大切です。
必死にできないことをできるようにしようとしつけて子どもにプレッシャーをかけるより、そのうちできるようになると気長に見守るほうが、子どもはのびのびと力をつけていくと思います。
成長と共に自分をコントロールする能力は追いついてくるので、それまでは親は、優しく子どもの自尊心を守ってあげることが大切です。
3.LD(学習障害)
8歳から10歳ごろに症状が発覚されやすいのは、小学校で読み書きや計算能力を求められることが多くなるからです。
知的発達には一見、問題がなさそうに見えますが、読む・書く・計算する・話すなど特定の行為に対して苦手なことがあり、成績や日常生活に支障をきたします。
顕著に症状が現れる子は分かりやすいのですが、賢く軽度な症状の子は、努力で自分の障害に対応してしまうので、発見が遅れがちになります。
文字が読めなくても、他の子が読んでいるときに丸暗記して読めるふりをしたり、必死に努力してなんとかついていこうとします。
子どもは他の子の何十倍も努力しているにもかかわらず、教師や親が低い評価をしたり、叱ったりすることで、さらに自分がダメな子なのだと傷ついてしまいます。
子ども本人にしてみれば、他の子には文字がどう見えているかがわからないので、「どうして自分はみんなと同じようにしているのに、本を読むのがこんなに難しいのだろう」とか「なんで自分はこんなに字が汚いんだろう」と、子どもなりに悩んでいるのです。
親や先生が子どものLDを理解することで、それまで「なんでもっときれいに字が書けないの」とか「何回も読んで、もっと上手に読めるようになりなさい」と叱っていた親が、「あなたが怠けていたわけではなかったのね。まちがって怒ってごめんね」と謝ると、ほとんどのケースで子どもは苦手な特性に合わせて読み書きや計算などの指導を受けることも嫌がらずに通えるようになるようです。
やはり子どもにとっていちばん頼りになる存在の親が味方になってくれているという思いは、子どもたちが困難に立ち向かう大きな勇気になると思います。
現在では、LDの原因や療育の研究も進み、LDについての理解も広がってきました。
たとえば、怠けてなんかない ゼロシーズン—読む・書く・記憶するのが苦手になるのを少しでも防ぐために/品川裕香・著は、その他の「怠けてなんかない!」シリーズとともに一読をおすすめします。
4.チック症
4〜11歳の男児に発症することが多く、女児に比べて男児に3倍多くみられます。
根本的な原因はまだ解明されていません。
まばたきする、顔をしかめる、急に頭をふるなど、本人が意図しているわけではないのに目的のない同じような運動や発声を繰り返す疾患で、一般的にはクセと認識されることも少なくありません。
意識的に努力することで短時間だけ抑えることができますが、自身で症状のコントロールは難しく、仕事や日常生活に支障をきたします。
注意欠陥・多動性障害や強迫性障害と合わせて発症することが知られており、原因はまだ詳しくはわかっていません。
チックの重症度は様々ですが、子どもの5人に1人の割合で、ある期間に何らかのチックがみられます。
ストレスや疲労などで症状が出ることもあるため、軽減することで症状を緩和することが期待できます。
チック症状の多くは軽いもので、ほとんどの場合親も医師も病気とはみなしませんが、1年以上にわたって運動チックと音声チックの両方がみられる重度の場合には、ときにはトゥレット症候群と診断されることがあります。
これがみられるのは子ども100人のうち1人未満です。
まとめ
どんな発達障害にも共通することですが、親が、他の子どもと比べて落ち込んだり、悲観したりする姿を見せて、障害を表面的に見えなくするために一生懸命になり、矯正させようとすることは、子どもの障害そのものよりもっと不幸な状況を親子で作り出しているといえるでしょう。
ひとり遊びが好きな子に他の子と同じようにみんなで遊ぶようにしようと干渉しても、子どもはかえって他人と一緒のほうが落ち着かなかったり、苦しかったりします。
親としては心配してやっているのですが、子どもは親が思っているほど不幸ではなく、ひとりで落ち着いて過ごすほうが遊ぶ時間を楽しめるので、実際には、その子の心の成長にとってよい場合も多いのです。
苦手なことの克服は、親が我流で行うのではなく早めに療育の専門家のアドバイスを聞いて一緒に支えてもらうことです。
それよりずっと大切なことは、子どもが生きている世界を好きになることです。
親として、子どもを喜ばせたり、リラックスして過ごせるように力を注ぐほうが、長い目で見ると、子どもの成長にとってよい効果があると思います。
発達に障害のある子はとくに感受性が鋭いことが多いです。
障害を子どもの個性と捉えて、もし発達障害と判断された場合でも、専門家と一緒に療育することで、成長とともにスムーズに社会生活に馴染める可能性も広がります。
もし、発達障害とは何なのか、症状や特徴、親の接し方などについて専門的な知識を得たい方は、『子どものための精神医学』/滝川一廣・著や『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』/本田秀夫・著 などの解説書をおすすめします。
また、 こどもの落ち着きをサポートするラムネ味のサプリメントなども発売されていますので、取り入れてみるのもよいかもしれません。