このような子どもたちははっきりとした診断がつかないことなどから、困りごとがあることを周囲に気づかれにくく、本人自身も理由がわからず、精神疾患などの二次障害につながることもあり得ます。
境界知能について、2回に分けて、その特徴や対策について活用できる支援などをご紹介します。
★ 境界知能とは?
★ IQ(知能指数)とは?
★ 境界知能の特徴とは?
1.学習の困難
2.対人関係やコミュニケーションの困難
3.身の回りや社会生活の困難
★ まとめ
一般的にIQが71以上85未満で知的障害(知的発達症)の診断が出ていない方に対して、「境界知能」という言葉が使用されます。
「境界知能」という呼称は、診断名ではなく、あくまで通称として用いられます。
また、IQによる診断もひとつの目安に過ぎません。
実際には周りの環境などさまざまな影響により困りごとが生じている状態に対して使われています。
境界知能にある子どもは、比較的困っていることに気づかれることが少なく、支援につながらないことも多いといわれています。
そのため、本人は理由がわからないまま「何かうまくいかない」ということが積み重なるため、非行や精神疾患につながる可能性も指摘されています。
これは二次障害と呼ばれています。
IQとは、知能指数の略称で、知能検査と呼ばれる検査などで示される同年齢集団の中での知能の相対位置を示す指標です。
知的障害(知的発達症)の指標のひとつとして用いられることがあります。
知的障害(知的発達症)の診断はIQのみでおこなわれるわけではなく、実際には日常生活能力と呼ばれる身の回りのことやコミュニケーションなどの能力も踏まえて判断されます。
境界知能もIQが71以上85未満とされることがありますが、文献によってはIQ70~となっている場合もあり、明確な基準があるわけではありません。
IQは知的障害(知的発達症)の診断とは別に、得意や苦手を把握し対策を取ることにもつながります。
ここでは境界知能にある人の特徴をご紹介します。
境界知能といっても、その人によって性格や得意、苦手、生活する環境も異なるため、境界知能にある方すべてに同じ特徴があるわけではありませんが、傾向を把握し対応方法を考えるうえでの参考としてください。
境界知能にある子どもの特徴としては、大きく以下の3つの困難が挙げられます。
1.学習の困難
境界知能にある子どもは、国語や算数などの教科学習で理解が難しいなどの困難が生じやすく、結果として本人も困ることが多いという特徴があります。
漢字の読みが苦手で教科書に書いてあることの意味が理解しづらかったり、数字の桁数が多くなると計算が難しくなり、テストで点数が取れずに悩んでしまうこともあります。
また、学習方法が合わずに授業で集中ができない、授業のスピードについていけない、じっと座っていることができない子どももいます。
境界知能にある子どもの学習への対策として考えられることとしては、
教えた後に理解できているか確認する
時間をかけて教える
漢字にはフリガナを振る
絵や図を使って教える
身体を使うなど実際に体験できる教え方をする
学校では集中しやすい席に変えてもらう
などがあります。
境界知能にある子どもは学習の理解に時間がかかる場合があり、一度に複数のことを教えられても混乱してしまいます。
そこで、教えるときは一度に教えるのではなく、一つずつじっくりと丁寧に伝え、理解しているか確認しながら進めていくといいでしょう。
また、前に教えたことを忘れることも多いため、時間をかけて何度も教えることも大切です。
漢字など文字が苦手で教科書や問題文の理解が難しいときは、漢字にフリガナを振ることや、絵や図などを使って視覚的にわかりやすくする対応方法もあります。
視覚的な情報の理解が難しいときは、身体を使った勉強方法が合う子どももいますので、周囲がその子が理解しやすい方法を探していくといいでしょう。
ほかにも、テスト用紙にフリガナを振ってもらう、文字を拡大してもらう、一番前の席にしてもらうなど、学校と学びやすくなる配慮や支援を担任の先生などと相談することも対策の一つです。
2.対人関係やコミュニケーションの困難
境界知能にある子どもの特徴として、対人関係やコミュニケーションにおいて会話についていけないなどの大変さが生じるということもあります。
境界知能にある子どもは、集団生活でのルールの理解をすることが難しかったり、相手の言葉の意味をつかむことができない、自分が伝えたいことをうまく表現できないことなどにより、対人関係に影響が出ることも考えられます。
境界知能にある子どもで対人関係やコミュニケーションに難しさを感じている場合の対策としては、
ゆっくりひとつずつ伝える
絵などわかりやすく伝える
理解したか確認する
何度も伝える
実演して見せる
SST(ソーシャルスキルトレーニング)などで練習する
などがあります。
境界知能にある子どもの中には、集団生活の中でのルールの理解が難しく、結果として対人関係に困ることがあります。
そういったときは学習と同様に、一つずつ子どもが理解しやすい形で教えることや、理解度を確認すること、繰り返し伝えることが大事です。
ただ、境界知能にある子どもによっては言葉や絵よりも、大人が実演することで理解が深まることもあるので、子どもが理解しやすい方法を探っていくといいでしょう。
ほかにもSST(ソーシャルスキルトレーニング)などの対人関係のプログラムを受けることも方法としてあります。
3.身の回りや社会生活の困難
境界知能にある子どもの特徴の中で、身の回りのことや社会生活での困難も見られます。
身だしなみを整えることや整理整頓などが難しく不便を感じたり、お釣りの計算や電車の乗り換えなどが難しいといった困りごとを抱えることも考えられます。
境界知能にある子どもはこういった特徴により、生活の中でうまくいかないことが重なり、二次障害につながることもあるといわれています。
境界知能にある子どもで、日常生活や社会生活で困難がある場合の対策の例としては、
伝える際は絵などを使い視覚的にわかりやすくする
時間をかけて繰り返し教える
身体を使って練習する
物を片付ける位置や手順を明確にする
金銭管理はツールを使う
といった対策があります。
境界知能にある子どもが身の回りのことを自分でするのが苦手な場合、手順が複雑で理解ができていない場合があります。
そのため、ほかの対策と同様、一つずつ伝えることや、絵などわかりやすい形で教える方法を取り入れてみることも良策です。
また、一度に覚えることが苦手な子どもには、時間をかけて繰り返し少しずつ教えていくことも大切です。
その際は言葉で教えるだけでなく、身体を使って実際にやってみることで理解が進む子どももいます。
本人の努力だけではなく、境界知能にある子どもが理解しやすいように、教科書やおもちゃなどを片付けるための箱などを用意し「どこに」「何を」片付けるのかを文字や色で明確にすることでわかりやすくする方法もあります。
計算が苦手な子どもは暗算ではなくスマホの計算機機能を使う練習をする、電車の乗り換えもアプリを使って事前に調べる練習をするなど、ツールの使用方法を学んでいくことで困難を解消する訓練になります。
まとめ
境界知能にある子どもでは、学校での勉強に遅れが出ることや、対人関係がうまくいかないことが多いという特徴があり、そのことから非行や精神疾患などの二次障害につながることもあります。
後編では、大人の境界知能についても解説していきます。