そんなななかで、「老後のひとり暮らしには、若い頃や家族と暮らすときとは違った「壁」がある」と話すのは、生前整理や遺品整理で多くの高齢者のひとり暮らしをサポートしてきた、株式会社GoodService代表の山村秀炯さん。
そこで今回は、山村さんの著書『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』から、5つの壁についてご紹介します。
★ 老後ひとり暮らしの5つの壁
1.お金の壁
2.健康の壁
3.心の壁
4.介護の壁
5.死後の壁
★ まとめ
「おひとりさま」は気楽で自由です。
だからこそ本人の性格や生活スタイルが如実に現れます。
同じ「おひとりさま」でも、老後のひとり暮らしの壁を越えられる人と、その壁を見て見ぬ振りをする人との違いがあります。
おひとりさまの方で「そういえば自分は何も準備していない」「気にはなっていたけど何もしていない」と、あらためて感じたならば、気づいた今こそ、この先の自分がどうあるべきかを決めるときなのかもしれません。
とはいっても、自己管理や人付き合いが苦手なタイプの人は、「面倒だ」とか「いまから自分を変えるなんて無理だ」と感じられるでしょう。
そういう方は、「おひとりさま」だからこそ、リスクははっきりしていますし、的は絞れるのです。
1.お金の壁
歳をとると判断能力が衰え、お金の管理が困難になっていきます。
認知症になってしまうと、自由に預貯金をおろすことすらできなくなる可能性があります。
また、収入がひとり分であることから、老後資金などを十分に準備することが難しくなり、経済的なことばかりでなく生活の維持そのものにリスクが生じる危険性があります。
ひとりだとお金がかからないといいますが、家賃にしても光熱費にしても食費にしても、夫婦2人で稼いで支出をシェアしたほうがはるかに効率的なのです。
子どもがいるとまた話は別になるのですが、ひとりの気楽さから支出が増えてしまって、意外と貯金が少ない「おひとりさま」も多いのです。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」によれば、60歳代のおひとりさま世帯の貯蓄額の中央値は300万円でした。
「老後2000万円問題」のときと同じ計算をすると、2022年の試算では老後800万円が必要ですから、まったく足りません。
もっとも3000万円以上の世帯も16.9%、金融資産保有なしの世帯も28.5%あって、平均値だと1388万円になります。
2.健康の壁
体調を崩したときに「おひとりさま」はセルフケアが難しく、さらに健康を害するリスクがあります。
高齢者の場合、体調不良時にも無理をしてしまい適切な治療を受けることができず、結果的に重大な病状に陥ってしまうのです。
特に問題となるのが、大きな病気や怪我で入院する場合です。
通常、病院に入院するときには、支払いの連帯保証人、万が一の事態に備えての身元保証人、そして自分が意識不明になったときに職場や大家さんなどへの連絡や着替えの洗濯などちょっとした用事を代行してくれる世話人が必要になります。
家族がいれば、その役割を担ってくれますが、「おひとりさま」の場合、これらを誰に頼むかが考えている以上に難問となります。
3.心の壁
「おひとりさま」は、孤独感と社会的孤立のリスクが挙げられます。
家族やパートナー不在の生活を続けていると、どうしても人との交流が日常的に不足しがちです。
その結果、強い孤独感に苛まれたり孤立に陥ったりすることがあります。
また、生活の悩みやストレスをひとりで抱え込むことで、精神的負担が蓄積していくと、うつ病などを発症する危険性が高まります。
4.介護の壁
老後に徐々に身体や精神が弱ってきたときに、誰に面倒を見てもらうかも大きな問題です。
解決策としては、老人ホームなどの高齢者施設に入居する、ことになるのですが、入居に当たってはまとまった金額が必要になるので、その金額をあらかじめ用意しておくことができるかどうかです。
また、生命保険文化センターが行った調査では、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。
介護を行った場所別に月々の介護費用を見ると、在宅では平均4.8万円、施設では平均12.2万円です。
介護期間は平均61.1か月ですから、単純計算しても300万以上の費用がかかるとわかります。
5.死後の壁
老後に自分の世話をしてくれる人や、自らの財産を相続させたい相手がいないとなると、孤独死のリスクが予想されます。
人間はどこでどのように死を迎えるかわかりません。
自分が亡くなったときの遺品、財産が誰の手に渡ってどのように処分されるのかも、まったくわからなくなります。
自分が死んだ後のことなんて知ったことではないと考える方もいるでしょうが、だからといってどんな死に方をしてもいいという言ことにはなりません。
孤独死の上、遺体が誰にも見つけられずに放置され腐っていくと考えたら、あまりいい気分はしないのではにでしょうか。
人間は誰でもいつか死ぬのですし、死んだ後には遺体と遺品が残るものですから、あらかじめ死後の後始末の算段をつけておいて、いつ死んでもいいように準備をするのが、社会に対する礼儀として「おひとりさま」がやっておくことなのかもしれません。
まとめ
そして心の問題、介護、死後の準備は、社会的孤立と深く関係しています。
無理に人付き合いをする必要はありませんが、重要なポイントだけでも人に頼ったり、国や自治体の制度を利用することで孤立を免れることができます。
おひとりさまの生活は、自由で気ままな半面、心と体の両面でリスクがあることを認識して、対策を立てておくことが必要です。