心理カウンセラーの大嶋信頼さんは「人間関係を最低限にして、最適化を図るためには、まず最初にウエットな人との関係を見直してドライな人間関係を目指すといい。ドライな人とは、『情に流されずに物ごとを判断できる』人を指す」と言います。
今回は、大嶋信頼著書『最低限の人間関係で生きていく』から、人間関係を最適化するための三つの具体的手順をご紹介します。

人から受けるストレスを減らして、脳とメンタルを活性化するためには、自分の意思でストレス源となる人と距離を置く必要があります。
その具体的な手順を、三つのステップに分けてご紹介します。
日本人は、「ウエットな関係を好む傾向がある」といわれますが、人間関係を最低限にして、最適化を図るためには、まず最初にウエットな人との関係を見直すことが最初のステップとなります。
この場合のウエットな人とは、相手に過剰に感情移入したり、物ごとの判断が情に流されやすいタイプの人を指します。
ウエットな人というのは、相手との共感や協調を重視して、人との感情的なつながりを求めがちです。
相手が職場や同じチームの人であれば、就業後や休日などのプライベートな時間であっても、遠慮なく踏み込んでくることもあります。
相手に対して、「干渉が強すぎて居心地が悪い」とか、「距離感が近すぎて、息苦しい」と感じているならば、相手がウエットな人である証拠ですから、優先的に距離を置く必要があります。
大事なポイントは、『最低限の人間関係で生きていく』ことです。
ウエットな人と関わるのをやめて、「ドライな人間関係」を目指しましょう。
別の視点で見るならば、自分自身がドライな人になる……と言い換えてもいいかもしれません。
ドライな人というと、「自分勝手で独善的」とか、「他人に冷たく不親切」など、ネガティブで思いやりがない人物像をイメージするかもしれませんが、それはまったく異なるアングルです。
ドライな人の長所とは、「情に流されずに物ごとを判断できる」という強みを持つ人ことです。
ドライな人には、次のような「長所」があります。
1.自分の価値観で行動できる
2.ムリなことはハッキリと断る
3.人のプライバシーを尊重する
4.人の時間を奪わない
5.誰に対しても態度が変わらない
人間関係を最低限にするためには、ウエットな人との関係を見直すだけでなく、自分自身がドライな人になることが大切です。
「この人はウエットな人だな」と感じるならば、相手が利害関係のある人だとしても、明確に距離を置く必要があります。
これが、人間関係を最低限にするための最初のステップとなります。

緊張している人のそばにいたら、自分も緊張してしまった……という経験は誰にでもあると思います。
自分が緊張する必要はないのに、なぜ同じように緊張してしまうのか?
その理由は、人間の脳が持っている「自動的に相手の真似をする」という機能が働いていることにあります。
ドラマや映画などで悲しいシーンを観ていると、まるで自分のことのように悲しみが込み上げてくることがあります。
幸せそうな人を見ると、自分までハッピーな気分になることもあります。
人が泣いたり、笑ったりしているのを見ているとき、脳内では「ミラーニューロン」という神経細胞が活性化しています。
ミラーニューロンが活性化すると、脳内の感情を司る領域の活動が活発になります。
こうした脳の働きによって、私たちは人の行動を見ているだけで、あたかも自分が行動しているような感情になるのです。
ミラーニューロンは、別名「物まね細胞」と呼ばれています。
人の感情が、自分の感情に移る……というのは、日常的によく起こることですが、注意が必要なのは、ハッピーな感情や嬉しい感情だけでなく、不安や焦りなどのネガティブな感情も自分のものになってしまう点にあります。
自分には必要のないネガティブな感情は、すべて相手のものであって、本来は自分のものではありません。
自分が感じる不快な感覚というのは、ことごとく人から伝わってくるものです。
それを自分のものと考えてしまうと、不安や焦りだけでなく、怒り、恐怖、悲しみ、孤独、イライラなどの余計な感情を抱えることになり、ストレスが蓄積して、心身のバランスを崩すことになります。
不快な感情の発信源となる相手と距離を置くようにしましょう。
一緒にいると不快になる人の言動には、次のような顕著な特徴があります。
1.自分の話ばかりで自慢話が多い
2.話の途中で遮ってくる
3.面倒なことは人任せ
4.優柔不断で人に判断を押し付ける
5.相談してきても言った通りにしない
大事なポイントは、自分が不快な感情になったら、「このネガティブ感情は誰のものなのか?」という視点を持って、その発信源となる相手と距離を置くことです。
「あの人と一緒にいると、何となくイライラする」と感じたり、「話をしていると、不愉快な気分になる」と思うならば、相手のネガティブな感情を、自分がキャッチしているということです。
不快な感覚がある人には、可能な限り関わらないことが懸命な判断といえます。

人間関係を最低限にするための第3ステップは、相手のために、相手の気持ちに忖度して行動しないということです。
周囲の人の思いや気持ちを先回りして、それに合わせるような行動を繰り返していると、ストレスが溜まって、自分を見失うだけでなく、自分が本当にやりたかったことが制限されるからです。
最近では、職場の飲み会に参加するか、パスするかで悩んでいる人も多いようですが、そんなことで頭を悩ませるのは、時間と脳のムダ使いです。
自分の気持ちに、正直に向き合うだけでいいのです。
飲み会の場所が評判になっている居酒屋で、自分が旨い酒を飲んで、美味しいものを食べたければ、参加すればいいと思います。
同期の仲間が集まるから、楽しいだろうな……と考えるならば、悩む必要などないのです。
自分が参加しないと、「上司が渋い顔をするかな?」とか、「人数が少なくなってしまうのでは?」と考えてしまうと、それがストレスとなります。
ムリして飲み会に参加しても、何も楽しくなければ、大事なプライベートの時間を犠牲にした意味がなくなってしまうのです。
職場の飲み会に限らず、どんなことでも、人の気持ちのために動くのではなく、自分の気持ちに正直に行動することが大切です。
そうした行動を意識することが、人間関係の最適化につながります。

まとめ
自分がどう居心地よく時間を過ごすことができるかは仕事場でも家庭でも趣味のサークルの場でも同じです。
ご紹介した方法で、ぜひ人間関係の最適化をはかってみてください。