見た目の若さには、予想以上に日々の食事が関係しているようです。
年を取るほどにしっかりお肉を食べることが大切だと聞きますが、果たしてどうなのでしょうか。
今回は、笹井恵里子著書『老けない最強食』 より、人生を折り返した中高年が食べるべきお肉をご紹介します。

抗加齢医学の国際的権威であるクロード・ショーシャ博士から指導を受け、高齢者医療に約30年関わってきた和田秀樹医師(ルネクリニック東京院院長)は「健康な日本人は、まだまだ肉によってタンパク質を摂らないといけない」と指摘します。
アメリカ人の一日あたりの肉の摂取量は約300g。
死因トップが心疾患で、だから『肉が動脈硬化の原因』のように言われますが日本は心筋梗塞で亡くなる方の10倍、がんで死んでいます。
アメリカ人と日本人は同じ土俵ではないのです。
肉は免疫機能の役割を高め、血管の材料になります。
かつては上の血圧(収縮期血圧)が160mmHgくらいで脳卒中が起きましたが、今は栄養状態がよければ200mmHgに達してもそう簡単には血管が破れません。
それは動物性のタンパク質の摂取増によって脳血管が丈夫になったからです。
肉の不足は、例えるとゴムの入っていないタイヤみたいな、破れやすい血管になってしまいます。
IARCでは全世界地域での赤肉の一日摂取量を「約50~100g、200g以上の地域も含む」としていますが、日本人の一日あたりの摂取量は赤肉50gと世界的にも低いのです。
国立がん研究センターは、日本人の平均的な摂取量であれば、リスクは無いか、あっても小さいとコメントしています。
それどころか肉は、日本人の長寿に貢献してきたといえるでしょう。
今から100年前の日本では大豆などの植物性タンパク質を摂取するばかりで、平均寿命は30代後半でした。
欧米諸国に比べて10歳以上の差を付けられていたのです。
それが肉などの動物性タンパク質の摂取量増加とともに、日本人の平均寿命は1980年代に入ると世界トップクラスに達していきます。
日本ポリフェノール学会理事長の板倉弘重医師(東京アスボクリニック名誉理事長)は「肉は良質なタンパク質の重要な供給源で、そしてタンパク質は体の組織をつくるもととなる栄養素です」と説明しています。
肉に含まれる豊富なタンパク質は、細胞膜や細胞骨格をつくり、体の筋肉や皮膚などを構成します。
ほかにもビタミンB12、亜鉛、ビタミンB1、ナイアシン、ビタミンB6などが肉に多く含まれますが、これらの栄養成分が足りなくなると筋肉や免疫機能の低下、アミノ酸不足が引き起こす神経性症状などが起こり、老化に拍車がかかります。
筋肉が維持できないということは、若さを保つどころか、要介護状態に陥ってしまう危険性すらあるのです。
肉に含まれるタンパク質は消化管でアミノ酸などに分解されて肝臓に送られ、全身に運ばれます。
各組織に送られたアミノ酸は、筋肉や血液、皮膚、髪の毛など、それぞれの組織の構成成分になります。
タンパク質が不足すると新陳代謝がスムーズに行われなくなり、その上60歳を過ぎると、血液中のアルブミン、コレステロール、ヘモグロビンという栄養状態を表す数値がどんどん下がっていきます。
血液中のこれらの栄養成分が落ちていくと、同時に体重が減ってしまいます。
中年でメタボと言われて脂肪が増えている間はまだいいですが、人生の後半、自然に体の脂肪が減ってきたら、それは老化の始まりです。
そこで効率的に血液中の栄養状態を表す数値を上げるスタミナ食が、肉というわけです。

しかし、肉なら何でもいいわけではありません。
肉はおよそ5~7割が水分で、残りが「タンパク質」や「脂質」から構成されています。
その割合によって肉の柔らかさや栄養素量が変わってきますが、老けないためには同じ100gあたりの肉を比較した時に「タンパク質の割合が高い肉」を選びたいもの。
脂質が多い肉を食べたほうが、肌がツヤツヤしそうなイメージを持つ人もいるかもしれないが、脂が皮膚を作るわけではなく、新しい皮膚の再生に必要なのは、あくまでタンパク質です。 脂質の高い肉は、一言で言うなら「老ける」「太る」ほうに傾くので注意が必要なのです。
日本臨床栄養協会理事の大和田潔医師(あきはばら駅クリニック院長)も、「農作業や工事の作業員など日常的にものすごく体を動かす人なら、脂質が高い肉もエネルギー源になりますが、普通の体格の人が脂質が多い肉を摂ると、カロリー過多になって蓄積されます」と解説します。
下の「老けない肉ベスト10」を見てみましょう。

ランキング1位の「鶏肉」は、高タンパクで低脂質、ビタミンがたっぷりという若返り食べものの代表格です。
鶏肉に含まれるカルノシンという物質が酸化と糖化を強力に抑えることがわかっています。
牧田善二医師(AGE牧田クリニック院長)も、
「渡り鳥が長い距離をノンストップで飛べるのは、運動によって大量に発生する活性酸素を消去してくれるカルノシンを持っているためと考えられ、パワーが持続するということは、すなわち老けないこととイコールなのです。 人の体にも骨格筋や脳、神経組織に多く含まれていますが、年齢とともに減少してしまうので外から補給することをお勧めします。」と鶏肉は老化物質であるAGEの蓄積を阻止してくれると太鼓判を押してくれています。
また、カルノシンには抗糖化作用があることも最近わかってきています。
鶏肉に含まれるビタミンB6も、体内でタンパク質と糖質が合成するのをブロックしたり、AGEが発生するプロセスを初期の段階で抑えてくれるそう。
体を動かした後も鶏肉を摂取するのが良いということです。
例えば、ウォーキングなどの運動をしてから1時間以内に、市販の『サラダチキン』(蒸し鶏を密封パックしたもの)を摂ると、筋肉合成につながります。
鶏肉の中でも4位の「皮つき」はどうでしょうか。
管理栄養士で調理師の堀知佐子氏(老舗料亭「菊乃井」常務取締役)によると、「皮なしのほうが圧倒的にカロリーが低いですが、皮には若返りに必須のコラーゲンがたっぷり含まれている」とのこと。
コラーゲンは動物の皮膚に多く含まれていますが、豚や牛の場合は毛を落とせないため食べることができません。
コラーゲンが不足すると肌にたるみができたり、かさつく原因になるため、老けないためには鶏肉の皮を邪険にしないほうがいいようです。
冷たいフライパンの上に皮目を下にして鶏肉をのせ、強火でなく弱火でじっくりパリパリになるまで焼くと鶏肉の余計な脂が取れ、コラーゲンは肉の中に残り、摂取しやすくなります。
筋肉を強化する『ロイシン』、神経伝達物質セロトニンの原料である『トリプトファン』など、体内で作られないさまざまな必須アミノ酸が肉のタンパク質には含まれます。
とりわけヒレ肉はロイシンやトリプトファンが豊富で、筋肉量の低下を予防し、心を前向きにするセロトニンを生みだして老化予防に影響を与えるとされています。
脂身が多い肉ほどロイシンやトリプトファンの比率が少なくなってしまうため、前出の板倉弘重医師は、ランキング2位、5位、10位につける「ヒレ肉」を勧めています。

まとめ
積極的にどの肉のどの部位を摂取すればよいのか、先の長い人生を活力あるものにするために日々の食事に効率よく取り入れていきましょう。