WHO(世界保健機関)によると、認知症に罹患している人口は世界で5500万人、毎年1000万人近くの人が新たに認知症を発症するという報告もあります。
認知症を防ぐためには、生活習慣の見直しのほか、栄養バランスを考えた食事が重要となります。
今回は、認知症へのリスクを高めてしまう、やってはいけない食生活の事例とともに、認知症を防ぐ食べ方をご紹介します。
認知症予防が期待できる理想的な栄養バランスがあります。
完全な認知症になる前に、簡単な計算を間違えたり、知人の名前がパッと出てこなかったりすることが起こります。
それは脳に栄養が足りていないサインかもしれません。
脳が栄養不足になると、注意力や集中力が落ちてしまうのです。
原因が単純に加齢の場合もありますが、年だから仕方ない、で片づけてはいけません。
「脳に栄養が届いていない可能性があるかも」と自覚し、現状の食事内容を見直してみましょう。
脳の機能を高め、認知症予防が期待できる理想的な栄養バランスは、たんぱく質4:脂質4:糖質(炭水化物)2だといいます。
もしくは、たんぱく質5:脂質4:糖質1でもいいでしょう。
それくらい糖質は減らした方がいいのです。
糖質を減らした分は、たんぱく質と脂質で補うのがポイントです。
なぜ、糖質を減らした方がよいのでしょうか。
人間が1日に消費する糖質は約180gです。
しかし、日本人は1日平均約300gの糖質を摂取しているので、余った糖質は中性脂肪に変わり体脂肪として蓄えられます。
つまり、何も対策をしないと、1日120gの糖質が中性脂肪に変わり、徐々に肥満を招いていくのです。
また、慢性的に糖質を摂り続けると、血糖値の上昇を抑えるインスリンの作用が鈍くなるインスリン抵抗性という状態になります。
すると細胞に栄養が届きにくくなり、脳の老化を進めてしまうのです。
さらに、インスリン分解酵素にはアルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβを分解し、蓄積させない働きがあるのですが、インスリンの作用が鈍くなると、それが正常に働かなくなるため、脳にアミロイドβがたまりやすくなってしまいます。
その結果、アルツハイマー型認知症の発症を促進させてしまうのです。
最近では、アルツハイマー型認知症は“3型糖尿病”や“第3の糖尿病”ともいわれています。
糖の摂りすぎには十分注意が必要です。
ご飯やパンといった炭水化物より先に、副菜である食物繊維やたんぱく質から食べるのがおすすめです。
そうすると、糖質が体に吸収されるスピードが遅くなり、血糖値の上昇を緩やかにできます。
2.毎食しっかり白米を食べるのはNG
人間が1日に必要なブトウ糖の量は180gです。
肝臓で1日約150g分の糖質が作られるので、食事からは30gを補えばよいことになります。
糖質30gをご飯に換算すると、子供用茶碗の半分ぐらいです。
自分の食事を思い浮かべて、ものすごく多くの糖質を摂っていることに気づいた人も多いのではないでしょうか?
とはいえ、いきなり1日30gは厳しいと思われますので、私は1日の摂取量として60~120gを推奨しています。
60gは子供用茶碗1杯程度。120gなら2杯です。
白米じゃなく、玄米に置き換えてみるのもおすすめです。
食品や調味料を使う時には、そこに含まれる糖質量を確認することも大切なことです。
3.ファストフードをよく利用するのはNG
ファストフードには、認知症リスクを高める脂質である飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、添加糖などの成分が多く含まれています。
塩分量も多いため、認知症予防の目的だけに限らず、できるだけ控えた方がよいでしょう。
4.野菜をあまり食べないのはNG
炭水化物の食べる量を減らすと、食物繊維の摂取量も減るので、その影響で便秘や下痢になりやすくなるケースもあります。
腸内環境を整える意味でも、アスパラガス、ブロッコリーなどの食物繊維が豊富な野菜は積極的に食べるようにしましょう。
5.ラーメンのスープまで全部飲むのはNG
塩分の摂りすぎを甘く見てはいけません。
塩分の摂りすぎは高血圧の原因になり、これが動脈硬化を招いて、その後遺症として認知症を発症することもあるからです。
麺や具にも糖質や脂質がたっぷりと含まれています。
せめてスープを飲むのはあきらめましょう。
6.野菜中心の食生活を心がけるのはNG
年をとると、消化しづらいなどの理由もあって、肉より野菜中心の食事を好むようになりがちですが、たんぱく質と脂質をバランスよく摂る意味でも、肉を意識的に食べた方がよいようです。
1日のたんぱく質の摂取量目安は、体重1kgあたり1~1.5g。
体重60kgの人なら、1日60~90gです。
7.太るから油はなるべく摂らないのはNG
体にいい良質な油は、むしろ朝食時に積極的に摂って脳を活性化しましょう。
脂質を摂りすぎると太ると思っている方が多いようですが、不要な量の油は排出されるので気にしなくて大丈夫です。
体に悪い油は摂らない方がいいですが、オメガ3系(アマニ油、えごま油、しそ油など)やオリーブオイルなどの良質な油を、朝食時に摂ると、脳が活性化されて1日のパフォーマンスが上がりますよ。
これらの油は加熱すると酸化しやすいので、サラダにかけるなど、できるだけ生のまま摂取するようにしましょう。
8.忙しいので朝食は食べずに出かけるのはNG
人は朝食をとることで、体内時計がリセットされ、活動モードに入ります。
脳と身体を起こすためにも、朝食はとりましょう。
特に、やる気を起こすホルモン“セロトニン”の分泌を促す、豆腐、納豆、みそなどの大豆製品、チーズ、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品やバナナなどを食べるのがおすすめです。
夜になるとセロトニンは睡眠を促すメラトニンに変わるので、安眠も期待できます。
9.3時の休憩にはおやつを欠かさないのはNG
菓子類には、糖質や脂質、塩分などが多く含まれており、食べすぎると肥満や高血圧になりやすくなります。
特に、時間をかけてダラダラと食べ続けると、血糖値が高い状態が続くので糖尿病の要因にもなりかねません。
これらの生活習慣病は、結果的に認知症の発症を促してしまいます。
どうしても食べたいときは、ナッツ類やダークチョコレートなど、なるべく糖質が少ないものを選びましょう。
そして食べる分だけを皿に取り分けて、食べすぎないようにしましょう。
10.コレステロール値が心配なのいで卵は1日1個
はNG 卵でコレステロール値が上がることはありません。
むしろ、脂質とたんぱく質が豊富なので、1日3個は食べましょう。
白身にはアビジンというたんぱく質の吸収を阻害する成分が含まれているのですが、熱に弱く、一方、黄身は生の方が栄養価が高いので、半熟卵で食べるのがおすすめです。
11.ストレス解消のため晩酌が日課なのはNG
“酒は百薬の長”とされ、適量の酒は身体に好影響を与えるといわれてきましたが、最新の研究では“飲まないに越したことはない”との見解もでています。
適切な飲酒量を超えると神経細胞が傷つき、脳が萎縮するため認知機能の低下がもたらされる可能性もあります。
適切な飲酒量とは、純アルコールで1日約20g程度。
ビールなら中瓶1本ほどです。
毎日は飲まず、週に1~2日は休肝日を設けることも大切です。
12.食事で補うからサプリメントは不要はNG
昔に比べると、野菜や果物に本来含まれている栄養素の量が減っているといわれています。
たとえば、ビタミンCには、動脈硬化を防いだり、毛細血管を健康に保つ働きがあるため、1日に2g程度は摂取をおすすめしたいのですが、現在一般的に売られているみかんに換算すると約100個分にもなります。
必要な栄養素を食事だけで補うのは困難になってきているのです。
ビタミンやミネラル、亜鉛などをサプリメントで補うのは決して悪いことではありません。
13.寝る前にお腹が空くと、つい夜食を食べてしまうのはNG
胃の中に食べ物が残った状態で眠ると、消化器官が休めないため、睡眠の質が下がるといわれています。
お粥などの消化のいいものでも消化には約3時間かかり、肉に至っては約4時間もかかります。
胃の中をからっぽにしてから眠るためにも、最低でも食事は寝る3時間前までに済ませるようにしましょう。
14.市販のジュースをよく飲んでしまうのはNG
コーラなどの炭酸飲料には、500mlあたり角砂糖10個以上の糖分が含まれています。
ジュース類は液体なので胃で消化されずに通り越し、直接十二指腸に届くため、急激に血糖値が上昇します。
甘い飲み物を飲みたいなら、ジュースよりは食物繊維が豊富なスムージーがおすすめです。
まとめ
栄養バランスの目安として、「たんぱく質4:脂質4:糖質(炭水化物)2」を目標に、食生活を改善していくのが認知症予防にもつながりそうです。
甘いものを口にしたいときもありますが、砂糖をオリゴ糖に変えるなどして、まずはできることからはじめてみましょう。