高齢者に当たる年代は結構広いのですが、具体的には何歳までなら問題なく住む場所を借りられるのでしょうか。
一概に「何歳までなら大丈夫」と言うことではなく、やはり物件を持っている大家さんが入居者に対してどのような認識をしているかによるところが要因になりそうです。
大家さんのなかには、リタイヤした高齢者に定期収入がないことや健康面のリスクが高いことに不安を感じる方もいらっしゃり、それによって高齢者の受け入れ方も変わってくるのです。 今回は、終の棲家になるかもしれない賃貸物件について掘り下げてみようと思います。
賃貸物件に入居しようとする時は事前に審査があり、家賃の支払い能力や連帯保証人の有無などを確認します。
高齢者が賃貸物件を借りにくいのはどのような背景から来ているのでしょうか。
1.健康面(年齢)の問題
高齢者が入居審査に通りにくくなる理由としては、まず、健康面の問題が挙げられます。
どんなに健康な人でも、加齢にともない病気にかかるリスクは高まります。
厚生労働省の「2020年患者調査の概況」から外来受療率を見てみると、30代の受療率は約3%です。
しかし65歳以上の高齢者になると10%を超え、何らかの病気を抱える人が増えていることが分かります。
賃貸契約を結んだ後、病気による孤独死のリスクが高くなるため、高齢者の入居を敬遠するオーナーさんは少なくないのです。
2.金銭面の問題
高齢者の場合、定期的な収入が年金だけで、不足分は今までの貯蓄を切り崩して生活している方も多いことでしょう。
家賃の支払い能力があるかどうかは、年齢に関係なく入居審査で重要視されるポイントです。
収入が年金だけということはオーナーさんも分かっているため、仮に家賃滞納が発生しても未払い分の回収が困難になるかもしれないと考えます。
未払いのリスクはオーナーさんの収入に直結するので、年金暮らしの高齢者は入居することを断られやすいのです。
3.連帯保証人がみつからない
通常の賃貸物件は、入居にあたって連帯保証人を求められます。
一般的に連帯保証人を頼むケースとしては、親や兄弟、子どもといった親族にあたることが多いですが、高齢者の場合、すでに身内が他界していたり、存命でも高齢なことが多いと思われます。
働き盛りの子どもがいたとしても住所が遠方であれば、万が一入居者に何かあった時、迅速に対応してもらえないかも、と危惧されてしまうおそれがあります。
2023年6月、全国の65歳を超えて賃貸住宅のお部屋探し経験がある方500名対象に、「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2023年)」を株式会社R65(東京都杉並区)が実施しました。
その調査結果によると、65歳以上の4人に1人(26.8%)が年齢を理由に入居を断られた経験があると回答があり、このことからも、終の棲家を決めるタイミングとしては65歳が一区切りといえるのではないでしょうか。
しかし現実問題として、65歳を超えてからお部屋探しをするケースも大いにあると思います。
では、高齢者が入居審査に通過するための対策として何ができるのかを見ていきましょう。
1.連帯保証人を確保
親族が近くに住んでいれば、万が一のときにでも迅速な対応が期待できます。
孤立していないことをアピールすれば、健康面に不安のある高齢者でも入居審査で考慮してもらえる可能性が高くなります。
また最近では、民間企業や社団法人、NPO法人といった運営団体が、身元保証をしてくれるサービスを行っています。
身元保証だけでなく、緊急時の対応や日常生活を支援してくれるケースもあり、料金やサービス内容は団体によって異なりますが、利用を検討してみるのもよいでしょう。
2.金銭面の問題がないことをアピール
現状は年金収入しかない方でも、貯蓄が十分にあれば家賃を支払う能力があるという証明になります。
一般的に、家賃2年分程度の貯蓄があれば入居審査に通りやすくなるようです。
家賃5万円の賃貸物件なら、120万円以上の貯金があるというのが目安になります。
もちろん貯蓄額は多ければ多いほど、入居審査には有利に働きます。
3.シニア向けの物件を選ぶ
高齢者の住宅確保を優先するため、平成19年に制定された「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」によって、役所に専用窓口が設けられ、高齢者の住まい探しの手助けをしています。
賃料の安い公営住宅をはじめ、高齢者向けの賃貸物件など、物件数は多くありませんが、保証人確保の不安や、物件探しを手伝って欲しいと考える方は、一度相談してみるのもよいでしょう。
家賃の支払い能力があり自立した生活をおくっているなら、年齢を理由に入居を断られる可能性は低くなりますし、高齢者向け物件なら、手すりや段差解消のバリアフリー仕様になっているなど、高齢者の暮らしを考えた環境になっているので、将来的な不安も軽減されますね。
断られる場合があるのは否めないとはいえ、高齢者でも賃貸借契約を結べる可能性は十分にあります。
また、以下の条件を満たしている賃貸物件なら、契約後もさらに安心して暮らしていけるのではないでしょうか。
1.無理なく支払い続けられる家賃
高齢者の一人暮らしに限ったことではありませんが、家賃が支払い続けられる金額であることは大切な判断基準です。
一般的に、家賃の目安は収入の3分の1が目安といわれており、審査の際にも支払い能力の有無は厳しくチェックされます。
家賃だけではなく、食費や光熱費、通信費や趣味に充てる費用など、生活全体を考えて予算を組んでください。
2.階段や段差が少ない
物件の内見の際に、高齢者が生活しやすい環境かどうか確認しましょう。
高い段差はないか、エレベーターはついているか、車イスでも通れる幅が確保されているかなどチェックする箇所はたくさんあります。
入居時は健康体であっても、いつ病気になったり、事故に巻き込まれてしまうかもしれません。
入居して年数が経ったときでも生活しやすいかをイメージしながら物件をチェックしましょう。
3.医療機関が近い
高齢になると免疫力が低下し、病気のリスクが高まります。
一度病気にかかると、連鎖して他の病気を発症したり、長期入院が必要になったりする場合もあるので注意が必要です。
万が一ケガや病気をしたときに、どこで治療を受けられるのかを前もって確認しておきましょう。
また、自宅から診療所やクリニックまでの距離も把握しておきましょう。
まとめ
親族に協力を仰いだり、高齢者向け優良賃貸住宅のようなシニア向け物件を選んだりする方法もあるため、お部屋探しの際には参考にしてみてはいかがでしょうか。
賃貸の契約をスムーズに進めるためには、入居を希望している物件を持つ大家さんが高齢者の入居に対してどのような方針を持っているかを事前に確認しておくというのも一つの手段です。